黒巫女召喚士と暴食之悪魔 ⑧
ベルゼブブは回し蹴りを放ち、わたしは鎌を振るう。
そしてベルゼブブの横を通り過ぎてベルゼブブの背後に回り込み体を捻り向きを変えて鎌を横薙に振るい一回転させて再び鎌を振るうがベルゼブブは前に動く事で回避、回転して右手を振るう。
『【ダークロープ】』
ロープと言うなの黒紫の鞭を操作して私に攻撃して来る。
わたしは跳躍して躱し、不規則な動きで迫り来る鞭を鎌で弾くように防いでやり過ごす。
『【ダークアーク】』
黒紫の稲妻が弧を描くようにわたしに向かって放たれた。
横にステップして躱し、足に力を入れて地面を蹴りベルゼブブに向かって接近し鎌を振り上げる。
「風上り!」
弱点目掛けて振るった鎌をベルゼブブは右手で掴む。
『何度も同じ目にあうと思うなよ?』
鎌を離さないままにわたしの胴体目掛けて膝を上げる。
鎌を持つ手に力を入れて片手で鉄棒をするように回転して躱し、片手を鎌に持った状態で空中に居る状態のまま体を捻り回し蹴りを顔面に向かって放つ。
そして鎌を放つ気が無いと判断して、鎌から手を離してベルゼブブを足場に跳躍して地面と平行に移動してベルゼブブから距離を取る。
『くく、取ったぞ!コレで貴様の攻撃力は下がった』
「それはお前では使えねぇよ」
きちんと握っているのでプレイヤーとモンスターの違いが少しある事を確認しつつインベントリを操作して鎌をインベントリに収納、そして再び取り出す。
『アポートか』
「違うけど、勘違いしておけ」
ベルゼブブに向かって鎌を投擲する。
ベルゼブブはそれを両手で捕まえる。そしてインベントリを操作して回収する。
投擲は意味が無いので再び同じようにベルゼブブに接近する。
ベルゼブブの背中には弱点の宝玉が剥き出しに成って居ないので正面からの戦いを基本的に強いられる。
背後から貫通させてダメージを与えるにはベルゼブブの硬い外骨格を貫通させる程の武器が必要だ。
全く持って面倒臭い。
わたしはベルゼブブの背後に回り込み鎌の刃をベルゼブブの前に持ってくる。
鎌ならではの攻撃方法だ。
そして手間に引く事によって刃は弱点を少し斬る事に成功して、ベルゼブブの体で止まる。
『ふん、馬鹿な事を』
ベルゼブブの体を真っ二つに出来たら良かったがそんな柔くないので仕方ない。
ベルゼブブは右手を背後のわたしに向けて、左手で鎌を捕まえる。
『【ダークランス】』
黒紫のランスが形成されてわたしに向かって直線的に飛んで来る。
「お前は背後に目でも付いて居るのか!」
わたしは鎌から手を離して【風足】の霊符を使って高く跳び躱す。
ベルゼブブはわたしの方に体の向きを直して左手に持つ鎌を投擲する。
縦回転する鎌は横から見たら円に成っている事だろう。それくらいには速い。
わたしは空中に居る中でも集中してわたしの所に来るタイミングと持ち手の位置を見る。
私と違いわたしは演算なんて出来ないので感覚で掴むしかない。
そしてタイミングを見て右手を突き出して鎌を捕まえる。
だが、ベルゼブブの放った鎌の勢いに寄ってわたしは後方に飛ばされる。
『【アクセル】』
飛ばされて体の自由が効かない時に瞬時にベルゼブブは接近して来る。
『終わりだね【ダークハンド】』
ベルゼブブは両手を組み魔法を使うと両手から黒紫のオーラが出て来る。
体を捻って回避も、鎌を地面に刺して体の方向を転換させる事も叶わない。
「⋯⋯畜生」
1人で全部解決しようとしていた傲慢なわたし。
だから今でもその信念は崩したくは無い⋯⋯だけど、そんなわたしのくだらない信念なんて狂人の時に手伝って貰い終わっている。
わたし1人の力では限界があるんだ。
それりゃあそうだろう。ここはゲームで1人用の難易度なんてそうそう無い。
だから、頼る。
「ベルゼブブ、お前はチョロいぞ」
『ふん!』
ベルゼブブは両手を振り下ろす、だがそれよりも速くマナがベルゼブブに突撃した。
わたしに攻撃する為に少し中に浮いていたベルゼブブはわたしの反対側に飛んで行く。
わたしはマナの足でキャッチされる。
「助かった」
「ギャラー!ギャラ!」
「すまんが、やはり無理だよ。わたしにはお前達との共闘が難しい。わたしが出て来たのは今回含み4回だ。2回は1人で片付けた、わたしはな。連携ってのが苦手なんだよ。傲慢って罵ってくれて構わない。だけど、今みたいに助けてくれるとありがたい。虫が良いのは分かっている。だけど、頼む」
「ギャラー!」
マナは再び空に飛ぶ。
「フー」
流石に鎌を掴まれる行為は避けた方が良いな。
今みたいに大きな隙が出来ても困る。
一体あいつのステータスはどうなってんだよ。
STRとかAGIとかどんだけあんだよ。
あいつの推奨レベルが気になる。
『あと少しだったのに。なぁ?取引してみないか?』
「あぁん?」
『我は高位の悪魔だ。我が眷属に成る事をおすすめするよ。新たな力、欲しく無いかい?』
「ほざけ!私は今のままで良いんだよ。横から無闇に介入して来ようとするな」
『そうか、それは残念だったよ』
わたしが振るった鎌を躱して少し離れた所でベルゼブブは止まり後ろに隠していた両手を前に出す。
「ッ!」
『クク、その表情。やはり変わってもその性格はそのままのようだな。こいつらを殺されたく無ければ我に従え』
ベルゼブブの両手にはハクとイサが握られていた。
ネマはわたしの横に来る。何とか逃げたようだ。
さっきマナによって飛ばされたベルゼブブの方向はハク達がある所だったようだ。
最悪だ!畜生ガッ!
『ほら、速く従うと言え』
「わぅ」「こぉん」
「くっ」
ベルゼブブは両手に力を入れてハク達の苦しむ鳴き声が聞こえる。
⋯⋯急げわたし!
「応召」
危なかった。冷静な思考が出来なくなっていた。
苦しい思いをさせてしまった。情けない。
『あ、あれ?』
「てめぇ、ふざけんなよォ?」
絶対に許さない。まだ2割も減らせてないけど、絶対に倒す。
取り敢えずネマも戻しておくか。
「にゃん!ニャニャ!ニャーニャー!」
「あ?役に立つから出せって?また同じようになったらどうする?苦しむのはあいつらだぞ!」
「ニャ!」
「弱く見るな?⋯⋯あぁ、分かったよ!召喚イサ、来いハク」
「ワン!」「コン!」
たっく、わたしもこいつらには強く出れないのか?
ま、ハク達に危害が出ないように戦えば良いだけだ。
「出来るだけ同じ場所には留まるなよ?また、ああなったら今度こそ再召喚しないからな」
MPも無駄には出来ないのでお願いしたい所だ。