降臨の悪魔
「へ〜今時スマホアプリ作る人居るんだ〜」
桃ちゃんがスマホをいじってそんな事を呟いた。
確かに今時はフルダイブ型VRが復旧してそのソフトを作る会社が多くなり他の会社もVRに乗り換えた。
なので過疎化したアプリ業界。
「ふむふむあーNewWorldFrontier運営が公式で作った掲示板アプリか〜個人同士のやり取りにグールプやり取り、ゲームとの連動で素早くチャットを行えるようにしたアプリらしい。ざっくり言えばパーティチャット可能化をスマホアプリにもした感じかな?こっちの方が便利かも。色々と機能があるようだし」
桃ちゃんが言うなら私も入れてみた。
そして持って来た自分のハードに接続して連動させる。
そして私達はログインした。
◆
孫娘の部屋にお菓子を持って行ったら皆が皆ヘルメットを被っていた。
この場合は放置が1番良いとテレビニュースで見たので部屋を後にする。
儂、寂し。
◆
さて、レベル上げ頑張りますか。
ハムちゃんとカルちゃんのレベルが少し上がり私の職業レベルもそれぞれ1ずつ上がった。
現在レベル的には120辺りかな?レベルが上がった訳じゃないからSPが貰えないからステータス的には増えないけどね。
《一定の強さに達しました》
《とあるNPCとの好感度が一定値に達している事を確認しました》
《クエスト『悪魔再封印』から『悪魔討伐』に変化します》
《かの魔法使いは死して未練を持ち、神に蘇りを願った》
《その結果、見守る者としての責務を条件にアンデットとして復活を果たしました》
《未練を晴らす事も出来ずにこの世に縛られた魔法使いを解放してあげましょう》
《YES/NO》
これってあの骸骨さん⋯⋯師匠のお父さんの事だよね?
成程、あそこに居る意味はコレなんだね。
なら、私の答えは決まっている。
「YES!」
その瞬間映像と共に言葉が記憶にねじ込まれて行く。
『最果ての森にて待つ』
どうやって行くのか、誰がどのように相手して来るのか、僅かだけど1部手に入れた。
皆と会うのはこの後だ。
ゲーム内で発表されるPVが運営から告知されたのでそのPVまでに終わらせよう。
そのタイミングで合流すると約束もしている。
「召喚マナちゃん!」
マナちゃんのレベル上げも頑張ったけど上がらなかった。
それでも私達の中では1番強いと思う。
複数の色の羽を持った凛々しい孔雀のような大きな鳥が私の前に現れた。
「よろしくね」
撫でて背中に乗せてもらう。
「ギャラー」
翼を広げて土埃を起こして空を飛ぶ。
そして私が指さした所までひたすら飛んで貰う。
私が向かうのは2層マップ最南端の森である。
森に着いたらマナちゃんを応召してモンスターを避けて壊れている遺跡に向かう。
壊れた壁に柱、一定の感覚で形代を貼って行く。
一定の数、上から線で結ぶと術式になる様にして少し待つと勝手に光で結ばれて、私の視界が暗転して場所が変わる。
「───ここ、通常マップ外なのか」
目の前に大樹があり、所々に木がある。
今回の戦闘メンバーはネマちゃん、イサちゃん、マナちゃん、ハクちゃんだ。
戦闘メンバーではあんまり変わらないけど、今回の相手はコレじゃないと寧ろダメだ。
MP回復を待って前に進む。
そして、大樹に触れる。
黒紫の光が盛れて、それが1箇所に集まる。
私は急いで後ろに待機している皆の元へと戻った。
光が集まり形を変えて行く。
そして蚊をそのまま人間のような形にした悪魔が出て来た。
『クク、遂に外に出れた。この封印はなかなかに厄介な上に定期的に再封印されるから困った物だ⋯⋯お?この匂いは、黒巫女のクソガキの末裔か?いや、匂いが近いだけで別物だな』
「お、本当に出たよ。暴食の悪魔、ベルゼブブ」
この大樹に封印されていた悪魔、そして暴食を司る悪魔だ。
このベルゼブブは物理以外の攻撃はなかなかに意味が無い。
なぜなら、
「霊符【風刀】解」
『お?自己紹介もまだなのにいきなりですね』
ベルゼブブは右手を前に出すと、手から口が出て来て私の【風刀】を食べた。
私が持っている情報の中にある唯一の能力、暴食。
魔法等を食べて己の力へと変換する。妖術も勿論食べられる。
だが、武器などは食べる事は出来ないので近接攻撃以外にベルゼブブに対する攻撃方法は存在しない。
私は巫者の大鎌をインベントリから取り出した。
そしてベルゼブブに向けて鎌を構える。
「私が貴方を倒す」
「ニャー!」「ワン!」「ギャラー!」「コン!」
『脆弱な雑魚風情に我を倒すだと?超越者のあいつらではさえ、我を封印するのに手一杯の我を倒す?ふふ、不可能だろ?諦める事を薦めるよ?』
「冗談辞めて?少しだけなら知ってるよ?師匠達も超越者に成ったばかりだし、それに今の貴方では全盛期の力は使えない。不完全の貴方ならこの私、私達でも倒せる!」
『哀れだな』
そして黒巫女召喚士と暴食之悪魔の戦いは始まった。
◆
現在のセカイは古風な洗濯のやり方を行っていた。
洗濯板を使っているのだ。
山に成った汚い洗濯物を見て溜め息を吐きながら洗濯をしている。
だが、まだ1つも完璧に綺麗に出来て居ない。
「まだかのぉ?」
「ぐぬ」
セカイは嫌な顔を1つもしないでひたすら洗濯している。
セカイに対して言ったのはおじさんだった。
だが、セカイは知っている。ただのおじさんでは無いと、そして弟子入りした。
その結果手に入れた称号が【超越者の弟子】だ。
「ほほ、そこまでの根性があるならヒントをやろう。チャクラを使うのじゃ」
「チャクラ⋯⋯チャクラム、だけど⋯⋯」
「確かに、お主は形に成った物しか使えない。だから、儂が1時的に手助けをしてやる。そして、学べ!」
「はい!」
本来無茶振りなのだが。
セカイに触れたおじさんはチャクラをセカイに流し込み体内で適当に動かす。
ゲームシステム上不可能なスキルの自由操作。
しかし、それを可能にするNPCによってセカイは感覚を掴んだ。
自由にチャクラを操作すると言う事を。そして、それが気功に近いと感じた結果、セカイは高速で習得して行った。
チャクラを操作して洗濯物に流し込む。そして綺麗に成って行く。
「実はその服は特別せいでな。チャクラが無いと汚れも落ちん」
「先に言って欲しかったです」
言って貰っても出来ないかもと思うセカイであった。
まだ、修練は続く。