番外 敏捷特化のダンジョン攻略 前編
「ここか」
そう呟いたのは狭い範囲で広範囲攻撃をされたら一撃でやられてしまう紙装甲のアサシン系統の職業密偵者から進化した職業の密猟者の柑ことオレンである。
気配を殺して、奇襲を得意とする職業で俊敏特化姉妹の1人だ。
オレンが来ているのは桃からリークされたダンジョンだった。
なんでも大きな蜘蛛がボスで毒攻撃のような紫色の液体を吐くとの事。
桃はその後リタイアを選択している。攻撃パターンを教えて貰い、ボスまでのルートも教えて貰った。
そして準備を整えたオレンがこのダンジョンに挑もうとしていた。
「行きますか」
装備などで最大MP25のオレンはユニークシリーズの装備を狙ってダンジョンに足を踏み入れた。足に力を入れてすぐに走り出す。
頭に叩き込んだマップを思い出しながら進む事数分で敵MOBのてんとう虫をそのままでかくして尻尾を生やしたモンスターが現れた。
「たしか」
オレンは桃が教えてくれたモンスター情報を探り目の前のモンスターの攻撃方法を思い出す。
てんとう虫は尻尾の先端を高速ダッシュしているオレンに向ける。
そして、オレンは加速しててんとう虫を上にジャンプして避けて前へと進む。
てんとう虫が後ろを見た時にはオレンの姿は無い。
このゲーム『NewWorldFrontier』は感覚は近くてもあくまでフルダイブ型ゲームである。
現実とでは運動能力に違いがあり、現実で俺TUEEEEの人でもこのゲームではそうはならない。
ゲームの方が体の動かし方が上手い人もいる。或いはその両方。
ゲーム内でも武術を普通に使える人が異常で異端なのだ。
オレンはひたすら走り現れるモンスターは跳躍したり壁面走行で避けたり普通に躱して無視したりと戦いを全て避けていた。
極力体力温存をする為だ。
大まかに纏めると、顔が4個あるダンゴムシがコロコロ転がっていてオレンを察知した瞬間に体を直すと顔が4つあったのだ。その全ての顔からレーザーが飛び出る。
あまりダメージは無いように見えるがオレンにはオーバーキルになる。
動くレーザーでも自分を避けているかのようにスラスラ躱して前進していた。
蝶々のような虫がおり羽を羽ばたかせる度に黄色の粉末を出している。
オレンはそれを壁面走行でスルーした。
上にジャンプしようとしても相手は飛んでいるし、下からは完全に論外。なら壁だろ?
壁面走行のスキルは壁面走行する時に補正が掛かるだけであり壁に留まれる訳では無い。最高でも1分しか壁面走行出来ない。
そんな個性豊かなファンタジー(キモイ)モンスター達を避けたしたオレンはボス扉までの道を進んで、銀色の線が見えてすぐに後ろに飛び退いた。
大きな手が曲がり角の壁を掴み、顔を顕にした。
「⋯⋯ッ!」
女性的精神がアラームを鳴らし、目の前の物体から目を逸らそうとする。
だが、そんな事したらダメだと押し留まるオレン。
オレンの前に現れたのは顔はゴキブリ胴体はなんの昆虫か分からないが6本生えた腕、腹の中央には顔があり、足は大量の百足で構築されていた。
(ない?!)
桃から貰った情報の中にはこのモンスターは居ないようだ。
オレンは自分の最高速を持って逃げた。
そしてボスモンスターに挑む前の最後の道、扉を見つけた。そしてオレンは迷わず開ける。
少し進むと扉が自動的に閉じてそして視界に入るボスは大きな蜘蛛⋯⋯⋯⋯では無く下半身は蜘蛛、上半身は女性だった。
「蜘蛛型人間?」
この時のオレンは知る由もないがこれは特殊イベントであり誰かがクリアすると二度と現れない隠しイベントの1つだったのだ。
条件はここまで来る時に1度も武器を握らない事、壁や天井に足を1度は付ける事、全てのモンスターとエンカウントする事であった。
桃が見つける⋯⋯正確には現れ無かったモンスターとであった事で起きた隠しイベントにオレンはであったのだ。
「隠しイベント?だけど、条件が⋯⋯」
例のキモイモンスターの出現条件はダンジョン入室後に5分以内にオレンとモンスターが遭遇した場所に行く事だった。
桃は敵の出方も探る為にモンスターに時間を掛けて居たのでこの条件を満たして居なかったのだ。
そして、ダンジョンは普通に広くて普通は走りながら攻略はしない。パーティを組んだり地図を書きながら進んだり宝箱を見つけたりと、だがオレンはその全てを無視したのだ。ユニークシリーズを手に入れる為に。
「ま、こんな事があっても良いよね。⋯⋯その方が面白い!」
オレンはインベントリから2本の短剣を取り出す。
「固定ダメージのスキルを持った武器出してよね!」
オレンは地を蹴ってアラクネに接近する。
アラクネはゆっくりと顔を上げて、そして人差し指をオレンに向けて、そして白色の玉を放つ。
オレンはそれを大きく横に動く事で躱して背後を確認。壁に白色の何かが衝突して壁を少し抉っていた。
「はい?」
とてもない速度⋯⋯AGI(敏捷性)が高いが故に見えて反応し躱せれたのだ。
よくよく見るとその白色何かは丸まった糸であった。
「⋯⋯」
オレンは気を引き締めた。油断をするつもりも手を抜くつもりも無かったが、普段以上に集中しないと行けないと判断したのだ。
オレンは短剣をアラクネに向かって振るうがアラクネは糸を広げてその短剣を完全に防いだ。
「硬っ!」
後ろに数歩ステップして距離を取り、そしてアラクネから放たれた糸が上から落ちてきたのを見たオレンはすぐに回避した。
「もしや」
短剣を落ちた糸に付けて、引っ張る。
「ネバネバ」
粘着が強い糸のようだ。短剣を1度インベントリにしまってから取り出す。
糸は数秒後には消える。
オレンが見た糸で予測を付ける。硬糸・粘糸だと。
最初の玉は丸めた硬糸を高速で飛ばしたのだと予測を付ける。
再び接近して目の前に現れたと思わせて瞬時に横に動いてアラクネを中点に半円を描くように移動して回転を使い遠心力を載せた攻撃でアラクネを攻撃する。
深く、入ったと思った短剣はアラクネの皮膚を浅く、かすり傷程度の傷を付けた。
アラクネは上昇していく。糸で天井に登っているようだ。
そして、天井に足を付けて重力関係ないと思わせるように天井に立つ、糸を蜘蛛の巣のようにオレンに向かって放つ。
オレンはそれを余裕を持って再び躱す。糸を見ると少し地面に斬った後があると分かった。
硬糸を利用した斬糸だと判断するオレン。
現状の情報を纏める。
ボスアラクネ。糸を多彩に操る事が可能。隠しイベントボスの可能性。条件は不明。本来のボスの攻撃方法が使える可能性がある。
それを踏まえてオレンは攻略方法を構築していく。
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