混沌足る黒巫女召喚士のズッ友
フランが後ろに手を伸ばす。
「【ブレイク】」
パリン、とオウガの背中が割れる。
「『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』」
互いに大きな叫びをあげる。
オウガの体が徐々に灰に成って消えて行く。
ベルゼブブのオウガも同じように灰になって消えて行く。
「お、わった?」
誰かがそう呟いた。
終わった、か。
確かに、そうだと良いな。
「はぁ。はぁ。リマ、ちゃん」
「ああ。分かってる」
周りが喜んでいる中、私、超越者組、我がギルメン達。
そして、サトシにフェン、エルフにリクト、アルは警戒を止めない。
フランの【ブレイク】はオウガのHPの1割を減らす。
HPバーが見えなくても、まだ残り1割が存在する。
「⋯⋯」
「? フラン? おい、フラン!」
フランがガックリと気絶している。
私はフランを下ろして、ゆっくりと床に寝かせる。
大丈夫、まだ生きている。
私の両手がふんわりと光を放つ。
そして、床から大量の深紅色の何かが上って行く。
天井までそれが上り、どんどん形を成して行く。
『アララララララ!』
目があるのか無いのか、あるのは大きな角だけだった。
そして、頭上に両手と同じ色の光が円形を成していた。
やる事は分かった。
「フラン、安心してろ。終わらせて来る! さぁ、最終戦闘だ!」
私は翼を広げてオウガの脳天目掛けて飛び立つ。
『アララララララ!』
上から大量の魔法が降り注ぐ。
横に動いたりと、器用に飛んでそれを避ける。
しかし、飛ぶ度に頭の中に何かが流れ込んで来る。
それは様々な人の記憶を切り貼りして新たに作った記憶だった。
フランが憎い、フランが悪、そんな洗脳的な記憶が流れ込んで来る。
私じゃなかったらすぐにやられていただろうな。
全く、洗脳系の魔法でもここまでリアルな洗脳はナシだろ。
リアリティを求めるのは良いけど、リアル過ぎると嫌われるぞ。
「⋯⋯ッ!」
全面の色が変わる。
躱せない。
「飛龍天眼! 風天の海龍!」
「【コピーアイ】【ペーストアイ】【ギガンティックバーニング】!」
右から青色の風の龍が来て、左からはレーザーが来た。
その2つが私を渦のように包み込む。
すると、私の視界に映る色が変わって行く。
魔法が、顕現しない。
「行くよリマちゃん! 私が先を切り開く、一撃に全てを込めて!」
「分かった!」
渦を足場にしてレイシアが登って来る。
上から飛んで来る魔法はレイシアが切り飛ばし、横からの魔法は師匠達の妖術と魔法で防いでいる。
『アララララララ!』
その中から深紅の大きな手が出て来た。
「【カオススピードムーブ】」
加速してさらに上に上り、何とか躱す。
レイシアも負けじとどんどん登って行く。
今更だが、今のレイシアの髪色は銀髪だった。
感情が落ち着いて、金髪では無くなったらしい。
「俯瞰聖奈乃流、4枚刃!」
レイシアが高速で剣を動かして、大量の斬撃を放って行く。
さっきの『4枚刃』とは一体なんなのか。
しっかし、レイシアのお陰でまっすぐ進めるが、レイシアの奥に見える大量の色。
消えたり顕現したりする。
「さぁ、後は君の番だ」
「サンキュー。頑張って来るは!」
さらに加速してオウガの顔まで上昇した。
さて、これで戦闘終了だ。
『アララララララ、ま、て』
「あん?」
『アララララララ、い、い、の、か。こ、の、ま、ま、わ、れ、を、こ、ろ、せ、ば、ふ、ら、ん、も、た、だ、で、は、す、ま、な、い』
「⋯⋯」
『アララララララ、か、な、し、く、は、な、い、か? わ、れ、を⋯⋯』
「黙れよ」
『アララララララ?』
「関係ねぇよ。フランはこうなると分かった上で、私に託したんだ。黙って、死んどけぇ!」
『アラララララ! アララララララララ!』
魔法を放たれようが関係ない!
そのまま一直線に進むだけだ!
私は魔法を受けながら直線飛行した。
そして、右手をオウガの光っている部分に突き刺した。
オウガの体に亀裂が高速で入って行く。
バリ、バリバリ。
オウガの体がどんどん砕けて行く。
砕けた部分が地面に落下して行くが、途中で消える。
HPゼロ、これで私達の勝ちだ。
『最後に忠告してやる』
「あぁん?」
『今のお前らは世界に嫌われている! 世界の異物共が! 分かるか! お前らの敵はすぐそこに居る! それがこの世界だ! 覚悟しておけ! 貴様、そして貴様の仲間全ての命がこの世界に狙われている事を!』
「何を言っている?」
『あは、ははははは! あはははははは! ああーあはははははははははははは! 始まるぞ! 世界誕生の戦争が! 再び! あははは! ははははは!』
「⋯⋯」
『我は死ぬ! 地獄にも天界にも行けず! 魂が完全に朽ち果てる! 貴様に教えてやる! 貴様は確実に後悔する! この選択を! この結果を! そして知る事になる! 世界の真実を! 全てが変わり、狂って行くこの世界を! さらばだ』
「はは。おもろい事言うな。私も教えてやんよ。──どんな敵がかかって来ようが、それが神だろうが、世界だろうが、大切なモノは絶対にこの手で、この命で守る! 貴様はそれを永遠に見れないだろうが、ただ、一つだけ言ってやる! 私は、どんな選択をしようが、後悔する事は絶対にない!」
オウガが最後にグシャリと笑い、塵となった。
最後はあっさりと亡くなったオウガ。
こいつの洗脳で入って来た記憶はどんどん消えて行く。
私はゆっくりと降りて、フランの傍に近づく。
フランの傍にはレミリアが居り、フランを抱えていた。
特に他の人が近くに寄って来る事はなかった。
ありがたい。
今は、誰にも邪魔されたくない。
悪いなモフリその他諸々よ。この役目は、この私がやる。
「フラン! 起きてフラン!」
レミリアがフランを揺すり叫ぶ!
唸ってから、ゆっくりと目を開けて行くフラン。
その顔は苦しそうでも、それでもとても晴れやかで清々しい顔で、そんな顔で笑顔を見せてくれた。
「お姉ちゃん。色々、勘違い、してて、ごめん、なさい」
「ううん! 私も何も言わずに、勘違いされる事やってごめん! 私のせいで、フランがあんなに目に会ってたのに、助けてあげれなくてごめん! こんな、お姉ちゃんを許して、くれる?」
「うん。リマ、ちゃん」
「なんだ」
私はフランへと近づいて屈む。
フランの顔がしっかりと見えるように。
混沌の感覚を解除して、見た目をきちんと直して。
私も笑顔を見せる。
笑って別れるとフランが決めたのなら、私も笑う。
「ありがとう。楽しかった。短い時間、それでも、私は楽しかった。報われた、幸せだった。もう、取り返しの付かない事をしてしまった、けど。精算出来たら、また、友達に成ってくれる?」
「当たり前だ」
薄く成って行くフランの体を抱き寄せる。
レミリアからフランを奪い取り、抱き寄せる。
「フラン、私は、私達は貴女がどんな事になろうとも、どんな見た目になろうとも、1度たりともこの絆は切らせない。私達はズッ友だ」
「あり、がとう。大好き」
「ああ。私は愛してるよ。フラン」
私の胸の中で、ゆっくりと消えて行くフラン。
安らかな顔で静かな笑顔を見せて、フランは消えた。
きっとフランは地獄に行くだろう。
それ程の事をしてしまったのだ。
「⋯⋯また、会おうな」
作「レベル上げも忘れてのんびりと遊んだ2人。特に喧嘩をする事もなく、ただ2人ののんびりとした時間を楽しんだ。しかし、そんなゆったりとした時間が2人はとても好きだった」
ユミル様「ナレーション?」
作「そうですね。うぅ、フランちゃん」