黒巫女召喚士と深紅の魔神その1
レーヴァテインが震えて動かない。
レーヴァテインを持っている左手を上げようとしても、上がらない。
「おい! おいってば!」
『クハハ。そうか、そうか。それは魔剣だな。しかも純粋な魔剣だ。人工物とは違う。そして、魔剣は魔神に刃向かえない。いくら半分だけの魔神出会ってもなぁ!』
「クソが!」
私はレーヴァテインを捨てた。
今持っている武器はレイシアから預かっている刀だけか。
「もう、行くよ!」
レイシアが一瞬でオウガへと接近して刀を振るうが、オウガは右手でそれを防いだ。
オウガは回し蹴りを放ってレイシアを蹴り飛ばした。
数回ステップしてレイシアは止まる。
「魔法だけじゃないのか。深淵螺旋砲、展開!」
「空海螺旋砲、展開!」
私が放った深淵のレーザーと師匠が放った2色のレーザーを放ち、それが混ざりオウガへと放たれた。
「まだまだ! 同時発動4つ!」
レーザーが互いに太くなりオウガへと衝突する。
『ふん。この程度か。超越者が呆れるな』
もしも超越者が本気で戦うなら私はこの戦いに参加出来ねぇよ。
それにしても、HPが全く減らないな。
カオスマジックなら少しは削れる。
カオスマジックが肝だな。
つまり、オウガは耐久はそこまでないが耐性は無茶苦茶高いと言う事か。
「ふむ。結果を生み出す的な妖術の方が良さそうだな」
「ぬ。魔法を極めた自信があるけど、魔力だと意味なさそうだね。仕方ない。召喚魔法【エレメンタルスペルモンスター】」
レミリアの背後に丸い物体が現れる。
「融合魔法【エレメンタルフュージョナルスペル】」
その丸い物体がレミリアに吸収されて、レミリアの髪色が紫色になる。
「行くよ!」
私は翼をしまい、地を蹴ってオウガへと接近する。
レイシアがどうタイミングで来て、阿吽の呼吸で同時に刀を振るう。
オウガは両手でそれを防ぐ。
削った感覚はない。
「天龍華魔流、横流華龍」
レイシアの刀にオーラが纏い、ジェット機のように横に放射され、手を切ろうとする。
「黒ちゃん!」
「はいはい。風水天魔斬弾」
「【ギンガフラッシュ】」
師匠達の方から妖術と魔法が飛んで来て、私達はオウガを蹴り、躱す。
妖術と魔法が終わり、諸に受けたオウガが湯気を出しながら出て来る。
HPは少し減っている。
『ふむ。だいたい分かった。さぁ、終わらせようか』
指パッチンするのと同時に、空間に複数の魔法が展開される。
発動前の色が見えなかった。
だけど、今の状態は感覚が極限までに高い状態なんだ!
「そんなん。全部MPに変えてやらぁ!」
さぁ喰らえ。
「この世の全てを喰らえ! 召喚混沌魔法【ベルゼブブ】」
私の背後の床に魔法陣が展開され、その中からベルゼブブと言う名前のモンスターがゆっくりと出て来る。
『ヒギャララララ!』
食虫植物のような見た目のベルゼブブは周囲の魔法、魔力を食らう。
だが、それも自分に有害な物だけをだ。
レミリアが放つ魔法、師匠が放つ妖術は食べず、オウガが放つ魔法を食らう。
『ふん。それで我の魔法を制限したつもりか?』
「そんな気ねぇよ。【混沌弾丸】」
『ふん』
複数の混沌の弾丸を放ったが、それを全て躱す。
さらに、レミリアから放たれた魔法も跳躍して躱し、空中に居るオウガに対して師匠は妖術の龍を放った。
『散れ』
魔法を右手から放って龍を消滅させる。
「ハッ!」
レイシアが気迫と共にオウガへと刀を振るう。
オウガは魔法の盾を作り出して防ぐ。
ふむ。レイシアの攻撃も警戒し始めたか。
「付与魔法【混沌刀】」
刀に混沌の力を付与させ、足元を狙って攻撃する。
レイシアを吹き飛ばして私の斬撃を躱す。
「【混沌弾丸】」
「【ギャラクシアショット】」
「空海地弾、展開」
跳躍して逃げた場所に向かって魔法を放ち、レミリアと師匠もそれぞれ放ってくれる。
グリンと空中で回転して躱すオウガ。
「お前、相当痛みを嫌うんだな。それか、傷を嫌ってんのか?」
『全く、何をそんな事を』
「だったら一方的に攻撃を喰らえやハゲ!」
「楼天龍、四季桜」
4本の斬撃がオウガを囲い、オウガを切ろうと動く。
バックステップで脱出し、魔法を放って来る。
ベルゼブブみたいにプライドが高ければ適当に煽れば良いと思ったけど、そう簡単には行かんか。
「「ほいっと」」
互いに真反対の方向に跳び退いて躱す。
レイシアと同タイミングで地を蹴ってオウガへと接近して斬撃を同時に放つ。
ひらりと躱したが、少しだけ私の斬撃が通る。
レイシアが1歩前に出て高速の6連撃を放つ。
地面を滑り後ろに押されるオウガ。しっかりと防御魔法は使っているようだ。
瞬時に背後に回った私はオウガの背中に刀を振るう。
『ッ!』
横に大きくステップして避けるオウガ。
「背中の傷は魔神の恥ってか? 違うか、そっか。半分魔神でもきちんと心臓ってのはあるんだなぁ!」
「「「⋯⋯ッ!」」」
『⋯⋯死ね』
「おいおい、そんなあからさまに機嫌を悪くすんなよ。うちの背後に【ベルゼブブ】がある限り魔法は意味ねぇんだよ! お前の魔法を養分にあたしゃのMPも回復し、【ベルゼブブ】も存続する!」
なんてエコなんだ!
私はオウガへと接近して、正面から魔法を放って目くらまし、背後に回って刀を突き刺す。
防御魔法で防がれた。
「レイシア!」
「オーケー! 翡翠の太刀」
私の背後から飛び出て来たレイシアが刀を静かに振るう。
オウガの横をひらりとすり抜ける。
少しだけ斬撃痕がオウガの背中に残る。
「ふむ。心臓だけじゃなくて、耐久も低いんだな」
低い、と言っても一般プレイヤーから見たら全然硬いだろうけどね。
バックステップで距離を取りながら今までの戦いを思い返す。
そして分かる。
オウガは私達の攻撃を避けながらも、レミリアと師匠に背中を見せていない。
こんな所にヒントあったのかよ。分かるか!
ほんと、たまたま背後狙って分かりやすい行動してくれたあの馬鹿に感謝だな。
「つまり、レミリアと師匠の攻撃は本当に警戒してんだな。だったら、その方向に背中向けさせてやるよ」
ニヤリと笑い目標を決める。
レミリアの魔法とレイシアの斬撃はどっちが強いか分からないが、レミリア達を警戒しているのは確かだ。
だが、もしも2人ともの攻撃を警戒していない場合、オウガが警戒しているのは⋯⋯。
作「復活、〇〇その〇式タイトル」
ユミル様「すぐに終わりそうな予感」




