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忌避されし罪の子は幸せを望む  作者: 桜音


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悪魔と契約した時のシグリス王が、悪魔の力によってマーラ帝国を葬った。


時のシグリス王の死後、一連の出来事を記した手記が発見された。

以後、この手記は王家によって保管されており、王族のみ閲覧することができるが、基本的に日の目を見ることはない。

貴族たちはこのことを知っているようだが、暗黙の了解で口にするのはタブー視されている。


馬鹿馬鹿しい話だ。


あまりに荒唐無稽で到底信じられる話ではない。

マーラ帝国が一夜にして滅亡したのは紛れもない事実であり、炎に包まれるその様を実際に目の当たりにした者は悪魔の所業だと思うのも無理からぬことなのかもしれないが、それにしても百年以上も経った今でもそんな話が信じられているというのは、どうにも違和感があった。


第一、この当時は既にルプティアやゲルンマニアも力をつけてきていた。マーラが滅びたところで、ルプティアとゲルンマニアがさらに力をつけるだけで、シグリスにしてみれば置かれた状況は変わらないのだ。

その点からしても全くもって筋の通らない話である。


シグリスの民は智を愛する。

自分とは違う考えや思想に触れたり、知らないことを知ることに喜びを覚えた。

誰かと意見を交わすのが好きで、毎日あっちこっちで皆んなが何かについて議論をしている。

それは死についてであったり、愛についてであったり、魂についてであったりもした。

身近なことから抽象的なことまで。

答えのない問いを延々と語ることに苦痛を感じることはなかった。


そういった国民性から他の国と比べてもシグリスは格段に識字率が高かった。

小さな子でも読み書きができた。

しかし、庶民には何かに書き残すというのは簡単なことではなかった。

シグリスではパピルスや羊皮紙が流通していたが、それらはとても貴重で高価なものだったからだ。


庶民の中でも周りから一目置かれる賢い者がいた。彼らは賢者と呼ばれ、そうした者は自分の私財を全てパピルスや羊皮紙に費やし、思考をまとめたりもした。


庶民には手記のことは知られていない。

悪魔の仕業だの祟だなどと言う者も中にはいるが、滅びたマーラ帝国の地がルプティア王国とゲルンマニア王国によって争われることもなく綺麗に分けられたことにより、この2国の関与は間違い無いだろうと言われている。

その後、その方法についても様々な議論が繰り広げられた。

そして、プルティア王国が火を用いた戦いが得意であることがわかり、焼夷兵器や火炎放射器などが使われたのではと考えらるまでに至った。


それでも今現在においても王族や貴族の認識はなんら変わってはいないのだ。


それはきっと手記が発見されてからの出来事が影響しているのだろう。



***



マーラ帝国滅亡から約50年後。

シグリス王国の王家に初めて赤い目の者が生まれた。

当事者である時のシグリス王は、悪魔との取引の通り30年ほど前に亡くなっているが、王を知る者がいるのはもちろん、50年前も生きていた者が当然いるわけで、あの惨劇を知る者の心に植え付けられたものは相当なものであったのだろう。

その赤い目は悪魔と同じ色だと嫌悪され、待望の王子であったにも関わらず、生まれてすぐに殺されてしまう。

この年のシグリス王国は荒れに荒れたようだ。

建国以来の大きな自然災害に見舞われたばかりか、赤い目の王子の両親、すなわち国王夫妻が事故で亡くなったのだ。

これらの出来事により赤い目の者に対してさらに恐怖心が植え付けられることになった。


2人目の赤い目の者が生まれたのはそれから更に20年ほど後。

2人目は王女だった。

1人目の教訓からすぐに殺されることはなかったが、生まれて直ぐに地下牢に捨て置かれ、下女たちによって辛うじて命を繋いでると言う状態だった。

しかし、その下女たちでさえ王女に優しいわけではない。

死なせては災いが降りかかるのではないか、或いは罰せられるのではないかと言う思いから、嫌々ながらも世話をしているという感じだ。

あまつさえ地下牢という場所で、誰も王女の安否を確認に来たりはしないものだから、死なせなければ何をしてもいいという劣悪な環境にすらなっていた。

そんな状況下にも関わらず、幸か不幸か、王女は1人目に比べると長く生きた。

この間、王族や王家に連なる高位貴族の幾人かが事故死や突然死に見舞われたようだ。

しかし王女が8歳のころ。

食事も取れないほどに精神を病み、衰弱死した。

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