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勉強会2

いつもと変わらない朝。

ホームルームが始まるまでの教室はそこかしこで話し声が聞こえてくる。


その中でも僕の机に腰掛けている岳は特にテンションが高い。


「なんか元気ないな」

「掃除してて寝不足…」


いつもより顔に精気がない僕を心配して、岳が声を掛けてくる。


昨日、アルバイトが終わってから3時間ほど掃除をしていたので、いつもより寝る時間が遅くなってしまった。


テストまで1週間を切っているのに僕は何をやっているのだろう。


「朔の部屋っていつも綺麗だろ。そんなに掃除する必要あったのか?」


「ちょっとでも部屋が綺麗だって思われたくて」


「ああ、潮にか」


「何で潮だけなの」 


日頃そこそこ綺麗にはしているが友達が家に来るときは必ず掃除機をかけている。


「俺と光がおまえの家に行く時はそこまでやらないだろ」


「あれ?たしかにそうかも…」


「無意識だったのかよ」


たしかに岳や光が来るときは掃除機をかけるくらいでその他は何もやらない。


彼女ならともかく、潮は只の友達で光や岳と何一つ変わらないはずだ。


潮のことは友達としては好きだが、今まで恋愛感情で考えたことは無かった。


潮が僕のことを好きだと知ってからは少し意識をしているが、そこまで気にしすぎる必要はないはずだ。


それならば、なぜ僕はわざわざ3時間も掃除をしたのだろう。


「おはよう」


僕の思考がショートしていると隣の席の潮がやってきた。


「お、おはよう」「うっす」


「何話してたの?」


「今日の勉強会のことだ。何の教科をやるか話してたんだ」


こういう時の岳は機転が利くというか空気が読める。


「あーなるほど。私は何でもいいよ」


「じゃあ数学と物理にしようぜ」


「光ちゃんの得意科目だからいいかもね。学年一位に教えて貰える機会なんて中々ないよね」


岳が何も言わず僕のことを見て、僕も無言で頷いた。


「国語と英語にするか」「やっぱり国語と英語にしよう」


「え?二人がそういうなら別にいいけど…」


訳がわからないと言わんばかりに首を横に傾げた。




放課後になり、4人で僕の家に向かう途中にコンビニに寄ることにした。


「お菓子とか飲み物たくさん買っていこうぜ」

 

「岳、遊ぶ訳じゃないんだからね」  


「まあまあ、ちゃんと勉強もするんだしいいんじゃないかな」


「沙羅、何か楽しそうだね」


「うん、みんなで放課後に遊ぶって中々ないから」


「たしかに、私と岳は部活ばっかりだし、テスト期間で部活が休みになっている時くらいしか遊べないよね」 


岳はともかく潮と光は遊ぶ気満々だった。


「3人とも勉強する気あるんだよね?」


「「「もちろん」」」


三人とも返事だけは良いが、勉強をするテンションではない気がした。



「「「お邪魔します」」」


家に着き、すぐに2階にある僕の部屋に向かう。


「相変わらず綺麗ね」 

「私の部屋より綺麗…」


昨日徹底的に掃除したこともあり、女子二人に綺麗だと褒められた。

綺麗すぎて潮に引かれているような気がするが汚ないよりは良いだろう。


僕の部屋に何百回も来たことがある光と岳は部屋にズカズカと入りベッドに座り込む。


「潮、見てないで入っていいよ」


「うん、ありがとう」


岳達とは対称的に潮はドアの近くに座って部屋をキョロキョロ見ている。


僕の部屋は4畳ほどしかなく、勉強机が1個と普通の机が1つしかないので4人で勉強をするには、少し狭い。

まあ、リビングで勉強するのも嫌なので仕方がないだろう。


そもそも、このメンバーで勉強する必要はあるだろうか。

光は毎回1位、岳だって赤点をとるほどではない。


「潮は何位くらいなの?」


堀川学園では毎回20位まで廊下に貼り出されるが潮の名前は見たことが無い。

赤点を取ると追試の貼り出しがあるがそちらでも見たことがないので良くも悪くもないということだろう。


「テストによるけど80~100位くらいかな」


300人中100位ならそこそこ良い。僕が10位台で岳が150位くらいなので僕と岳の間か。


姉さんの話だと潮は去年からアルバイトをしているようなので、アルバイトをしながらその順位をキープしているということだ。そう考えると普通に凄い気がする。


「まあ、とりあえず軽く英語から勉強するか」

「私が教える!」

「いや、いいわ」

「大丈夫、前よりは上手く教えるから」 


「はぁ。じゃあ英語教えてくれ」

「任せて」


絶対に教わりたくない岳と絶対に教えたい光の勝負は光の勝ちらしい。


 

僕と潮は各自勉強、岳は光に教わりながら勉強し20分ほど経過した。


「これ、なんでこうなるんだ?」


「文法通りよ」


「意味わからん」


「なんでわかんないの?そもそも英語なんてノートに書かれている単語と熟語全部暗記して、文法通り単語を並び替えればいいだけでしょ。テスト範囲の単語を5分で暗記して」


「出来るわけないだろ。もっとできそうなことを言ってくれ」


数学と物理を教えられるのは回避したが案の定、光は英語を教えるのも下手らしい。


光は映像記憶が得意で2年生の全ての科目の教科書を4月だけで完璧に暗記したらしい。

だが一般人には不可能なやり方なので全く参考にならない。


「朔、頼むから教えてくれ。このまま光に教わるとただでさえ嫌いな英語がさらに嫌いになっちまう」


「えー失礼な。じゃあ私は沙羅に教える」


「私は自力で出来るから大丈夫だよ」


岳への教え方を見て、何かを察したのか潮も光の教えをやんわりと拒否する。


「ええ、沙羅も?つまんないなー…」


「おまえも勉強しろよ」


「もう勉強する必要ないんだもん」


光以外の人間が言うなら嘘をつくなと言い返せるがおそらく事実なので何も言えない。

全員から教えるのを拒否されて、拗ねる光は僕のベッドでゴロゴロしている。


それから30分ほど経ち潮がおもむろに腕に付けていたヘアゴムを持ち、両手で髪をたくしあげた。


岳は勉強に集中し、光はマンガを読んでいて気づいていないが、慣れた手つきで髪を結んでいき、まだ縛っている途中だが、僕の所からは既にはっきりと潮の耳が見える。


昨日からずっと思っていたが、やはりこの髪型の潮は他の男には見せたくない。


「潮ちゃん、前髪が邪魔ならピンで留めるだけでいいんじゃない?多分母さんに言えばピンくらいあるしもらってくるよ」


下らない独占欲なのはわかっているが、潮のこの姿は僕だけが見れる姿であってほしい。


「今潮ちゃんって言った?」

「あっ…」


目の前の髪を縛っている潮がアルバイトの時の姿と重なりアルバイトでの呼び方をしてしまった。


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