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真相2

「あんまり怒るとばれるわよ」


姉さんは潮に聞こえないように僕の耳元で声を出している。そのため、顔は見えないがきっと腹の立つ顔をしているに違いない。


「ど、どうしたの朔夜ちゃん?」


急に怒りをあらわにした僕を見て、潮は驚きあわあわとしている。


「ううん、何でもないよ」


カランカラン


吊り上げ式のドアベルが店内中に響きわたった。


「あら、お客さんきちゃったわね」


姉さんがお客さんに聞こえないくらいの小声でいう。これはこの場から逃げるチャンスだ。


「私が行くよ、いらっしゃいませ」


「あら、逃げられちゃったわね」


「?」


「多分お姉ちゃんに恋バナを聞かれたくなかったのよ」


「あーなるほど。やっぱり、朔夜ちゃんはかわいいですね」


何か変なことを二人に言われている気がするが無視して接客に集中した。



現在の時間は20時。今日は閉店時間になっても居座る迷惑なお客さんがいなかったので閉店と同時に今日のアルバイトが終わった。


「お疲れさま、もう上がっていいわ。車出すから着替えたら声をかけてね」


「お疲れ様です。いつもありがとうございます」


潮は姉さんを待たせないように急いで更衣室に向かっていった。

 

疑問符を浮かべている僕を見て姉さん説明をしてくれた。


「平日は家まで送るようにしてるの。制服でこんな時間に一人で帰すわけにはいかないでしょ。変な人に声をかけられたり、警察に補導されるかもしれないからね」


たしかに、堀川学園の制服で夜に歩いているのは目立つかもしれない。

まあ、実際の所は塾や部活で遅くなる人も多いので気にしすぎかもしれないが、気にするに越したことはないだろう。

 

「特に潮ちゃんは夜一人で歩いてるとどっちの姿でも目立つのよ」


「あーたしかに」


たしかにアルバイトの時のような化粧ばっちりの派手潮だと、遊んでると思われて補導されそう。かといって地味潮でも心配されて補導されそうだ。



「潮はいつもどっちの姿で帰ってるの?」


「土日の私服の時はそのまま、制服の時は髪をおろして眼鏡ね。どっちもかわいいけどやっぱりバイトの時の方が私は好きね」


「朔乃さんお待たせしました」


「お、やっぱり髪おろしてる。あれ、

眼鏡は?」


「だて眼鏡なので気分で付け外ししてますね」


え、学校でしているあの赤いフレームの眼鏡ってだて眼鏡だったのか。地味潮の一番の特徴だと思っていたのに。


「目に髪が入るのが嫌だから学校ではするようにしているんです」


「あっそんな理由だったんだ」


「うん」


「じゃあ、行きましょうか」


「はい、お願いします。じゃあまたね朔夜ちゃん」


「うん、お疲れ様」


「じゃあ朔夜は誠也と待っててね」


「うん、わかった」



厨房に向かい掃除をしている誠也兄の方に向かうと僕の視線に気づいたのか掃除の手を止めた。


「朔、朔乃の趣味に巻き込んじまって悪いな」


「誠也兄が謝ることじゃないよ」


「そうかもしれないけど、俺はあいつの旦那だからな。お前が辞めたいならいつ辞めてもいいから安心してくれ。そこだけは俺が無理矢理にでも押し通してやる」


誠也兄はいつもと変わらず優しくて芯が強い。いつもは姉さんの尻に敷かれているが重要なところではしっかりと姉さんの暴走を止めてくれる。


最初の予定だった金額はもう貯まったので辞めようと思えばいつ辞めてもいい。

だが、今辞めるのは何かが違うのかもしれないとも思っている。


「うん、ありがとう。本当に辞めようと思った時はまず誠也兄に頼るよ」


「おう、任せろ」


くしゃっと笑い、僕の頭を撫でてくれる。


「でも、お前もよく受けたよな。まあホールじゃなくて調理補助って騙されていたみたいだけど」


「お金に目が眩んだ」


「まあ、高校生は欲しいものたくさんあるよな。そこだけは調理補助よりもホールの方が時給は高いからよかったな」


「え、そうなの?」


「ああ、お前の時給は1300円だろ?接客は時給1300円で調理補助は1100円だぞ。潮さんは長く働いてくれているからもう少し多く出してるが」


「あれっ、ほとんど接客しかしていなくて1100円なんだけど」


「ど、ドンマイ」


誠也兄は僕から目を反らし、また掃除を始めた。


やはり、戻って来たら姉さんを一発殴ろうと心に誓った。



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