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真相

学校が終わってからすぐにアルバイトのシフトが入っている時は、時間的にかなり店が暇なことが多い。


つまり、いきなり潮との雑談タイムになってしまうということだ。


「朔夜ちゃんのおかげで話聞けたよ。ありがとね」


学校の時と違いバイトの時は髪を縛っているので、嬉しそうな潮の顔がよくみえる。この前はお団子だったが今日はポニーテール。


僕に好意があるとわかってから、より潮のことが可愛く見えてきてしまった。

男というのは何て単純なんだろう。


「そ、そうなんだ。何て言ってたの?」


何て言ったかは僕が一番知っているが、不自然なので聞くしかない。


「ピアスの穴開いてても気にならないって」


「良かったね。そんなことで嫌われたら嫌だもんね」


「うん、でも友達が今日余計なことを言ったせいでまた悩み事が…」

「余計なこと?」


元気だった潮の表情が曇る。友達というのは光のことだろう。4人で話している時に何か言っていたかな?


「そうなの。自分から告白したら女の子といつでも付き合えるよって言ってて」


そういえば、そんな様なことを言っていた気がする。でもあれは光がからかって言っただけでそれほど気にすることもないと思うのだけれど。


「でも、その潮ちゃんが好きな人ってそんなにモテるの?その人が適当な誰かに告白しても断られるんじゃ」


「本人は気づいてないけどモテるよ。男らしい感じではないけど肌綺麗だし美形な方だと思う。女装しなくても女の子に間違えられるくらいだからね」


「へぇ、そうなんだ」


今まで女にしか見えないと言われ続けたせいで、この顔がかなりのコンプレックスだったが意外と捨てたものではなかったらしい。


「私の友達は格好いい系が好きだから全然興味無いみたいだけどね。そもそもその子は彼氏いるから安心してるけど」


たしかに光の彼氏の岳は間違いなく格好いい系だ。まあ顔なんて関係なく光と僕はお互いに恋愛対象外な気がする。


「でも他の女は…」


昼休みに聞いたドスの利いた声が再び目の前から聞こえてくる。

やはり昼休みの時も潮が喋っていたのか。


「う、潮ちゃん。恐いよ」


「あ、ごめんごめん」


「一応、クラスの中では私とその男の子が付き合っていると思われているから誰も言い寄ってこないけど油断はできないよ」


「え!?そうなの?」


思わず素の反応がでてしまった。

当事者のはずなのに全然知らないんだけど…


潮とは一緒にいることが多いからアホな男子にお前ら付き合ってんだろと言われたことは何回かあった。だが、その場で終わる冗談だと思って聞き流していた。


それに僕は毎回付き合っていないと言っていたはずなのになぜそんな噂が立っているんだ?


「うん。女子だけになるとよく聞かれるんだけど、否定しなかったらどんどん噂になっていったの」


潮は嬉しそうに右の耳に付いているピアスを触りながら話す。


「月見君はそういうことを言われた時は否定するけど、私が否定しないから隠れて付き合っているって噂になってるの」


初めて潮ちゃんの状態で僕の名字が出てきた。これで僅かにあった別人という可能性も完全に消滅した。


「潮ちゃん、絶対確信犯だよね?」


「人聞き悪いよ。否定もしていないけど肯定もしていないから嘘はついてないし」


どうやら潮は意外としたたからしい。


「まあ、その月見君も嫌がってはいなさそうだし嘘もついてないからいい気はするけど」


「あら、二人とも恋バナ中?」


自分自身の代弁をしていると、今一番聞かれたくない人間が玩具を見つけた子供の様な顔をしながらこちらに来た。


「はい、朔夜ちゃんに相談にのってもらってました」


「恋ばないいわね。前から話していた潮ちゃんが好きな月見君の話?」


「は、はい」

 

「やっぱり、潮ちゃんは月見君のことを話している時が一番可愛いわね。」



照れ臭そうに下を向きながら答えている潮はこう見ると容姿に似合わずあどけなさの残る普通の高校生に見える。

いや、それよりも聞き流すことができないことを姉さんが口走った気がする。


「姉さん、今月見君って言った?」


「ええ。私もこういう話は大好きだし、潮ちゃんからよく聞いていたから」


僕だけが見える角度で姉さんは煽るように満面の笑みを浮かべている。


今思えば姉さんは履歴書で潮が僕と同じ高校に通っていることを見ているはずだ。

月見なんてよくある苗字ではない。しかも堀川学園の2年生ということもわかっているなら姉さんは絶対知っていたはずだ。


だから、僕のことを女装させたり苗字と名前を変えたりしていたのか。

思い返して見れば最初に堀川学園がアルバイト禁止と言った時に姉さんは何かを考えていた。

あれは既に堀川学園の生徒である、潮を雇っていたから。


つまり、姉さんは潮の好きな男が僕だとわかっていて僕をこのアルバイトに入れたということか。


よくよく考えて見ればこんな偶然はあるわけが無い。もっと早く気付くべきだった。


「姉さん、とりあえず1発殴ってもいい?」

「え!?朔夜ちゃん急にどうしたの?」


「朔夜。いつも言ってるでしょ。私は可愛いものは可愛く見たいの」


お読み頂きありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 僕に好意があるとわかってから、より潮のことが可愛く見えてきてしまった。 男というのは何て単純なんだろう。  この文章を読んで、「男心を良く分かってる! 本当に女流作家か?」と思いました。…
2021/05/25 22:52 退会済み
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