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修羅場?

久しぶりの投稿。待ってていてくれた人もたまたま来てくれた人もありがとうございます。

静かな教室に響いた破裂音。

左頬を抑え呆然とする近藤と静かに怒りを顕にする志奈乃が目に入る。

普段は綺麗系の美少女に見えるグレーアッシュの髪と切れ長の目も今は威圧感を放っている。


倒れた机を直していて、音がした瞬間は見ることができなかったが志奈乃が近藤にビンタしたことは容易に理解できる。

その後ろで鞄を3つ持ちながら苦笑いを浮かべる岳の反応からも間違いは無いだろう。


「最低」


吐き捨てるように一言だけ言い放ち、志奈乃は僕の方に近づき手を差し出す。


「朔ちゃん、帰ろう。こんな人とこれ以上話す事なんて無いから」

「う、うん」


どうしてここにいたのか。

いつからここにいたのか。

先程の話を聞いていたのか。


聞きたいことは山程あるが今はこの気まずい空気から抜け出す方が優先されるだろう。

何より不機嫌な志奈乃とここで話したくはない


「河野、ちょっと待ってくれ」


痛みで呆然としていた近藤は正気を取り戻し志奈乃を引き止める。


「何?これ以上話すことはないけど」


言葉にはしないが目つきだけで話すことはないと言っている。


「どこから見てたんだ?」

「ほぼ最初から」


志奈乃は吐き捨てる様にそして静かにその一言だけを言う


「そうか…なら正直に言うが俺はお前の事が好きだ。付き合ってほしい」


急な告白で空気が凍る。僕だけではなく岳も驚きで目を丸くしている


「お前すげーな。この状況で告白するのかよ」


常軌を逸した発言に岳は呆れよりも近藤の心臓の強さを褒めたたえる。

男として近藤に共感できる部分は無いがその度胸だけは素直に尊敬できるかもしれない。


「どうせバレちまってるしな。それにこんな奴より俺の方がいいだろ」


「あーあ、俺はもう知らんからな」


僕の事をこんな奴と言う近藤に対して岳は溜息を付く。

志奈乃の方は怖すぎて確認することすらできない。


「河野は月見の事が好きなのか?」

「好きだけど何?」


「え?2人の時に近藤が言ってた事は本当だったんだ…」

「おい、こんな所でもう一人告白したぞ」

「え?志奈乃?」


呆然としている僕と驚きながらも笑っている岳。

だが、志奈乃は照れよりも怒りの方が優っている様子に見える


「さっき近藤君から聞いたでしょ。私が朔ちゃんの事を好きなんて朔ちゃん以外の全員が知ってるから」

「そ、そうだったんだ…」


この数ヵ月で潮だけでなく志奈乃にも好きだと言われてしまった。

初めての目的が来ているのかもしれない。


「朔ちゃんが気付いてなかっただけで前からそこそこモテててるから」

「ご、ごめん。でも心を読まないで」


「岳、僕もう帰っても良い?一回冷静になりって色々と考えて答えを出したい」

「おい、気持ちはわかるけど駄目だ。お前がいなくなったら志奈乃がますます暴れるぞ」

「た、たしかに…」


「岳、月見、うるせ―ぞ。今は俺が告白の返事を待ってんだよ」

「ああ、すまん」「ごめん」


怪訝な表情で睨む近藤に僕と岳は素直に謝罪をする。志奈乃が僕を好きだと言った事によって近藤が志奈乃に告白したという事をすっかり忘れていた


「朔ちゃんの事は一旦おいておくけど近藤君は私のどこが好きなの?」

「顔…と性格だ」

近藤は引っ越して来てから日の浅い志奈乃に性格が好きだと言い放つ。

僕も岳も志奈乃の性格は嫌いではない。寧ろはっきりしている所は好きですらあるが会ってからそれほど経っていない近藤がそれを言うのはあまりにも説得力がないだろう


「性格?へぇ、いきなりビンタする人が近藤君の好みなんだ」

「おお、そんな気の強いところも好きだぞ」


「へーそうなんだ、私は暴力を振るう人は嫌いかな。強い人は好きだけどね」

「暴力?それは勘違いだ。こいつが情けなくて弱いから大げさにビビっていただけだろ」

「それに強い奴が好きなら何でこんなひょろい奴が良いんだよ。俺の方が絶対強いはずだろ」


軽く笑っている岳とは対照的に蔑んだ表情の志奈乃が目に入る。

「脈ナシの私を何回もデートに誘ったり、朔ちゃんのことを弱いって言ったりして、近藤君って本当に見る目ないんだね」


「見る目?」


「うん、私は今はこんな格好だけど小学生の時は男の子みたいだったよ。それに、朔ちゃんは空手の黒帯でめちゃめちゃ強いよ」


「岳、こいつって本当に黒帯なのか」


近藤は僕の方を指差しながら嘘だろと言わんばかりに疑っている。


僕よりも信用のおける岳に聞いたのは当然かもしれない。


「何で俺に聞くんだよ。朔、言ってもいいか?」


本当は誤魔化したいが、違うと言ったら志奈乃が嘘をついたみたいになってしまうので仕方がなく頷く。


「うん、良いよ」

「ああ、高校入る前に黒帯とってたな。こいつの父さんは空手の道場を経営してる。信じられないなら他の奴にも聞いてみろよ。学校の近くにあったから俺と同じ中学の奴なら全員知ってる」

「まじかよ…」

「ああ、朔は我慢してたけどキレたら瞬殺だったぞ。朔が温厚な奴で良かったな」


その一言を聞き近藤は怯える。


「まじかよ…じゃあなんでやり返さなかったんだ?」

「いや、殴られたりした訳じゃないから僕から手は出せないよ。殴られたら正当防衛はしたかもしれないけど」


「そ、そうか。月見、すまん。俺が悪かった」

「うん、もういいよ」


「強いってわかってから謝るのは格好悪いね」

「おい、志奈乃。丸く収まりそうなんだから余計な事を言うなよ」


岳は苦笑いをしながら志奈乃を宥めようとしているが志奈乃は不服そうに不貞腐れている


「瞬、お前ももう良いだろ。どう考えても志奈乃はお前とは合わないぞ」

「あ、ああ。そうだな」


近藤はシュンとして完全に戦意喪失したようだった。それを見て岳は近藤の元に近づく。


「朔、悪いけどゲーセンはまた今度にしてくれ。こんなんだけどバスケ部の仲間だし慰めてやらないとな」

「ああ、良いよ。ゲーセンの気分じゃなくなったしね」


「ありがとな。よし、瞬行くぞ」

「慰めなんていらねーよ」

「遠慮するなって。良いと思った女に断られるだけじゃなくて軽蔑までされた上に弱いと思ってた奴が空手の黒帯で手を出さないように気を遣われてたとか男として格好悪すぎるしな。ストバスでもしに行こうぜ」

「凹むからはっきり言葉にするな」


嫌そうな顔をしながらも近藤は岳に引きずられていった

岳がこの場にいて本当に助かった。岳がいなければもっと地獄の様な空気になっていただろう。


「志奈乃、僕たちも帰ろうか」

「うん、そうだね」


志奈乃は先ほどまでの怒りを鎮め頷いている。この様子ならもう大丈夫だろう。

今日は家に帰りこれからの事をもう一度考える事にしよう。


「じゃあ落ち着ける場所に行こうか」

「え?」

「ゆっくりと話そうね」


笑顔で話す志奈乃には何故か威圧感の様な物を感じた。



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