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日常

今日から新作投稿しました!

ハイペースで投稿していく予定なのでよろしくお願いします!

いつもと代わり映えのしない放課後。


6月になり、徐々に暑くなっていく2-2組の教室の中で僕、月見(つきみ) (さく)は 陰鬱な気持ちで掃除をしている。


「朔、俺掃除サボってもいいか?部活始まっちまうし」


「いいわけないでしょ。僕も早く帰りたいんだから手動かして」


目の前にいる穂高(ほだか)(がく)は堂々と掃除をサボろうとする。


岳は一言で現すなら僕の幼馴染みで完璧超人。

バスケ部のエースでイケメン、性格も良く、おまけに彼女持ち。


学力はこの学校では真ん中あたりの順位だが、ここ堀川高校は全国でも有数の進学校である。そのため、全国の高校生の中で比較するとかなり頭も良いほうだ。


「仕方がないな。とっとと終わらすか。それはそうと元気なくね?可愛い顔が台無しだぞ」


「可愛いって言わないで。それ以上言ったら僕が掃除をサボる」


自分で言うのも嫌だが、僕の容姿はかなり中性的だ。もっと言うのならば男性よりも女性に近い。

後ろ髪は耳たぶくらいの高さしかないのに顔が女性にしか見えないので初対面の人にはベリーショートの女性だと間違えられる。


「悪い悪い、機嫌治せって。なんで元気なかったんだよ?」


「あー、金無いなって考えてただけだよ。来週出るボケモンほしいんだよね」


ボケッとしているモンスターを捕まえて育成していくRPG。過去のシリーズは全部やっていて2年ぶりの新作だ。できれば発売日に欲しかったが、しばらくお預けだろう。


「ボケモンか。俺はもう予約してるぞ」


「ずるい、これが小遣いの差か……」


僕が買えないと言っているのに岳はさらっと、裏切ってきた。


学生の収入源と言えば月のお小遣いだが、僕の小遣いは月1100円。一円も使わずに貯めてもゲームを一本買うのに5か月もかかってしまう。


堀江学園はかなり校則が緩い。多くの学校で禁止されているツーブロックや髪を染めるのも許されている。進学校や名門校では意外とよくあることだか生徒の自主性に任せるということだ。だが、成績に悪影響を及ぼす可能性があるアルバイトだけは禁止となっている。


アルバイトもできない、小遣いも少ないとなるともう手段が無い。


「俺もカツカツだけどな。(ひかり)と遊んでるとすぐに金がなくなる…痛ってぇ」


「くだらないこと言ってないで早く掃除して」


後ろから箒で岳のことをどついたのは日野(ひの)(ひかり)


光は岳の彼女で学校一の美人と名高い。肩まである栗色のウェーブがかった髪、大きな茶色の目、白い肌。


顔だけで見れば誰しもが付き合いたいと思うほどの美人だが、がさつで口うるさいのがたまに傷だ。


「朔、なんか失礼なこと考えてない?」


「いいえ、何でも無いです」


そして勘が鋭い。


岳と光とは小学生の頃から一緒でずっと仲が良く、いつも三人で行動していた。去年の6月に二人が付き合いだしてからはこの関係は終わると思っていたが丸1年経った今でも関係が崩れることは無かった。


変わったことがあるとすれば、この仲良し3人組の中にもう一人加わったということだろう。


「まあまあ、もうすぐ終わるしそんなに怒らなくても」


光とは対照的な落ち着いたテンションで(うしお)沙羅(さら)が話に割り込んでくる。潮は高校一年生の時に光と仲良くなり、それから僕達とも徐々に仲良くなった。


赤い縁の眼鏡、胸あたりまである黒い髪、目にかかるほど長い前髪。耳も髪で隠れていて、一言で表すなら地味だ。


個人的には肌も髪も綺麗でちゃんと見ると可愛いと思うのだが、男だけが投票している可愛い2年の女子ランキングではトップ5にも入っていなかった。


可愛い女の子ランキングの1位は当然光。そして、2位は何故か僕だった……


男が可愛い女性ランキングに入っている時点で全くあてにはならないので潮の順位が低くても気にすることは無いだろう。


「ありがとう。暴力的なこいつを止められるのは潮しかいない」


実際、潮が光を止めてくれているおかげで中学の時よりもだいぶ僕への暴力が減った。


「なんだとー」


前言撤回。光は僕の肩をぐりぐりと肘で押しつけて来る。


「光ちゃん、月見君に暴力奮っちゃ駄目」


「月見君も光ちゃんにそんなこと言っちゃ駄目だよ」


「「はい…」」


髪の隙間から見える切れ長の目で、静かに僕と光のことを威圧する。

普段怒らない穏やかな人ほど怒ると恐いというのがよくわかった。


*


潮のお叱りをくらった後は、全員きびきびと動き、そのおかげで掃除はすぐに終わった。


思ったよりも早く家に着くことができたし、ゲームでもやって夕飯まで時間を潰すとしよう。


家の鍵を開けると奥から物音が聞こえる。

この時間、親は仕事に行っていて誰もいないはずだ。まさか泥棒か。

恐る恐るリビングに行くとそこには見覚えのある女性がテレビを見ていた。


「おかえり、朔。ちょうど良い所に帰ってきたわね」  


「あれ、姉さん。帰って来てたんだね」


久坂(くさか)朔乃(さくの)。僕の10個年上の姉。すでに結婚していて、旦那さんと一緒に喫茶店を経営している。


「今日は定休日だからね。それに用事もあったし」


「用事?」


結婚してからは別々に住んでいるが仕事が休みの日はたまに実家に遊びに来る。


「そう、あんたに用事。朔、私の店でバイトしてくれない?」


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