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同舟のラメンデ  作者: あぼしん
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【1-11】聖鐘歴2020年4月15日 ライド

「おいこれは…どうした、まさか村人勢揃いか?」


村の表入り口から街道を歩いてやってきたカイさんが、目の前の光景を目の当たりにして面食らっている。カイさんでもこんな顔するんだな。同じ人間だという事が再確認出来て少し安心した。


「みんなには昨日お別れを済ませました。だからそれで終わりかと思ってたんすけど、見送るって聞かなくて…」


水くせーぞー、村の息子の門出だー、うらやましいぞチクショー、24歳の娘がいたら紹介しろー等各々が好き勝手なガヤを飛ばし早くも収拾がつかない。その最中、村長のホベルさんがカイさんへと歩みを進める。


「事情はマウラから聞いております。カイさん、先日は本当にお世話になりました。これからライドの事、よろしく頼みますぞ」

「ええ、任せて下さい。俺の教えは厳しいですがね」

「ほっほっほっ、それくらいの方がライドにはいい薬ですよ」


無茶苦茶な事言い出したぞ。

いやちゃんと頑張るけどさ、その加減ってもんが…


「カイさん!ライドの事お願いします!この子昔から無茶ばかりするんで手綱を取ってあげて下さい!」

「安心して下さい。俺の目の届く内は勝手な事はさせませんから」


ナイラおばさんだ。

あの後おばさんとも話しをしてやっぱり二人して泣いてしまった。この年だからあまり泣いてる所見られたくなかったんだけどな。


「うおーんライドオオオ…寂しいぞォォ元気でやれよなァァ」

「俺はいつも元気だよ。そんな泣く事無いだろ?」


ポンスおじさん。

自己主張の強いクセのあるおじさんだったけど、俺の事を信じてくれて怒ってくれた事は忘れない。少しでも商才が育つといいな。


「カイさん、孫の事、一任致しました。何卒、強くたくましく育ててあげて下さい。この通りです」


ばーちゃん…

元から折れそうな腰を更に深く下げた姿を見てまた涙腺が緩みそうになった。ダメだ、ダメだ、耐えろ、俺。


「顔を上げて下さいお婆さん。お約束は必ず守ります。お孫さんが立派な大人に育った所をお見せしますよ」


ばーちゃんに寄って気遣う様に腰を上げさせるカイさん。

いよいよ旅立ちの時だ。


「ライド、状況は分かっているが俺はお前の口から直接聞いていない。皆さんの前でお前がこれから何をしたいか宣誓しろ」


何をしたいか。

そんなもの決まっている。

俺は拳を握りしめ、1回大きく息を吸い込み、こう言った。


「カイさん!俺は強くなりたい!誰にも負けないくらい強くなって!困っている人を助けたい!!そして俺は神聖級冒険者になるんだ!!だから俺を連れて行ってくださいッッ!!」


入り口から俺の大声が春の風に連れ去られどこかへ飛んで行った。後ろからはすすり泣く声が聞こえる。


「よし、出発だ」


カイさんの頼もしい声がした。

俺は振り返って改めてお別れをした。


「みんなああああ!行って来る!必ず戻って来る!元気でなあああああああああ!」


空気が弾けた様に歓声が上がった。

木の幹で休んでいた鳥達が何事かとでも言わんばかりに一斉に飛び立った。


俺の旅が、今、ここから始まる。


・ 


「マウラ、本当に良かったのかの?」

「いいんだよホベル。男には誰しも旅立つ時があるさね。あの子にとってはそれが今だったというだけさ」

「それなら良いがの。しかし寂しくなるな」

「うるさい奴が居なくなってせいせいするよ。これでのんびり余生を過ごせそうだ」

「無理を言ってからに。しかしライドめ、とんでもない男に付いて行きおったの」

「運命かもしれないね。一層メルメネス様にお祈りしないといけないよ」

「ライドは知っておるのか?」


「…………言いそびれたね」

「お前は昔からそういう所があるのぉ…」


・・

・・・


俺達二人は未だに穂を生やしている麦畑の間に通る街道を歩いていた。さっき飛んで行った鳥の家族だろうか、ほとぼりが冷めたかと村に引き返している。


「いい人達だったな」

「ハイ!俺の誇りっす!」


「ハハハ、故郷の人達が誇りか!そりゃいい!」

「何かおかしかったっすか?」


「いーや何も。それでいいんじゃないか、お前は」

「むっ何かバカにされた様な気がするんすけど」


「そう思うならお前に自信が無い証拠だな。どうする引き返すか?」

「あんな別れ方してどんな顔で戻るんすか!行きますよ!」


カカカと笑うカイさん。

そんな面白い事言ったか俺…


「さて、これから俺に付いて来る事になるが、1分1秒も無駄にしないぞ。全てがお前を鍛える時間だ」

「望む所っすよ!!もう今の俺何でも出来ちゃうから!」


そう、俺は今無敵なのだ。


「言ったな?じゃあ手始めに隣村まで走るぞ」


「はい…?何て言いました?」

「隣村まで走るっつったんだ。まずは基礎体力から作る。体力はお前を裏切らないぞ?覚えとけ」

「い、いやいやいや!隣村までどんくらいあるか知ってんすか!?」

「ああ、大体150ケルメルくらいだな。2刻もあれば着くだろ」

「150ケルメルゥ!?…えーと1ケルメルが1000メルだから、、えーと…どれぐらいだ?」


「お前には算術も必要みたいだな。俺の献立に入れておこう」

「いやっ、体を動かすのは得意っすけど、勉強はっ!」

「ゴチャゴチャ言うな。全てが勉強だ。ほら、走るぞ」

「うぇぇぇぇ」


ふと男の脳裏に、幼少の頃あの老翁と一緒に旅に出た時の記憶が蘇る。男は老翁に、まずは基礎体力じゃ!隣村まで走って行くぞい!と言われ文句を垂れていたかつての自分と目の前の少年を重ねていた。


こうやって次代に託していくのかもしれないと、何か運命じみたものを少し感じた。



走り始めたと思ったらカイさんが急に止まった。


「あーそうだ、お前に言うの忘れてた」

「何すか?急に立ち止まったりして」


「これから一緒に旅しようってんだ。自己紹介が要るだろ?」

「え、今更っすか?大して必要無いような…」


「お前はする必要ねーが、俺には要るんだよ。前に名乗ったカイ・オンサードって名前な、ありゃ偽名だ。本名はゾディアル・ハースランドっつーんだ。改めてよろしくな、ライド」


「………え?………………えええええええええええええええええ!?」





これが俺と神聖級冒険者ゾディアル・ハースランドとの出会いの物語だ。

エンプシー・リギウスのよいこのための

わくわく魔獣図鑑


              出版:生命生体研究所

              共著:冒険者協会


11、トロム

   おちてるきのぼうをてにもってたのしそうにあ

   るいてるまじゅうだよ。からだは40セルメル

   くらいでつぶらなめとわらってるようなくちで

   にんきがあるね。いつもプープーいってるのは

   きげんがよくてはなうたをうたってるんだ。

   かわいいけどにんげんにはなつかないからおぼ

   えておいてね。


   だい20しゅしていまじゅうだ。

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