じゃがいもの花
初めて書いた小説です。
温かく見守ってやってください。
目が覚めると木で出来た部屋にいた。
窓からは温かい陽の光が指し木の香りに包まれなんとも気持ちのいい目覚めだ。
久しぶりのよく寝れたお陰か目覚めはすっきりとしている。
朝の空気の澄んだこの感じが好きだった事をすっかり忘れていた。
しかしながらここは一体何処だろうと辺りを見てみると木の机の上に小さなベッドと棚があり、小さなベッドでは小人が眠っていた。
ベッドも棚も木で出来ており、青と白のストライプ柄の布団。棚には小人の着替えらしき青い小さなとんがり帽子と服が置いてある。
そしてベッドには布団と同じ柄のとんがり帽子にツンっと尖った鼻。白い髭を生やした小人が肩までしっかり掛け布団をかけて気持ちよさそうに寝ていた。
あまりにジロジロ見すぎた為か身動ぎした小人は目を擦りながら欠伸を1つすると私に気がついた。
「おはよう。」
さも当たり前の様に私に挨拶をしてくる。
「あ、おはよう。」
「よく眠れた?」
「ええ、とても。」
「それは良かった。」
そんな会話をしながら小人は棚の上の着替えを取り、着ていた青と白のストライプ柄のパジャマや帽子を脱いでいく。
白くて寸胴な身体、手足は細い。目つきは悪い方だが瞳は温かい。
髭はお腹辺りまで伸びていて口は髭に覆われて見えない。
「お腹空いたね。目玉焼きとパンでいいかい?」
「うん。ありがとう。」
ササッと着替え終わった小人はベッドメイキングをし、キッチンに立つ。
キッチンなんてあったのか…目に入らなかった。
ポトポトと雫が落ちる音と香ばしい香りの珈琲と卵を焼くジュージューという美味しい音が食欲を誘う。
「どうぞ。」
「…いただきます!」
2人で小さなテーブルに向き合って座ると小人が用意してくれたこれまた小さな小さなモーニングセットを食べる。
卵は黄身が半熟でトロトロ。良い塩梅でとてもシンプルなのにとんでもなく美味しい。
普段はたっぷりミルクを入れないと飲まない珈琲はブラックでも美味しい。
パンは外はサックリ、中はほんのり温かくてふわふわしてバターの甘い香りがする。
どれも美味しくてペロリだ。
とても小さな朝食だったが不思議と程よいお腹の満たし具合でほっこりとする。
「この後僕は仕事だよ。」
「仕事?」
「ああ、見てみるかい?」
小人の仕事といえば靴作りだろうか?なんて考えながらコクリと頷く私を見た小人の動向を見守る。すると小人はくるっと後ろを向くとベッドへ歩いていく。
あれ、あんなのあったっけ?
小人のベッドの足元に長机が置いてあり、そこには5種類の花が並んで置いてあった。
また目に入ってなかったのかな?
寝起きすぐだったしね。
小人はその机を私の方へ持ってこようとしていた。
「手伝うよ。」
「おお、凄いや!ありがとう。」
私からすれば小さな長机をひょいっと持ちあげると小人はにっこりと目を細めて笑顔をくれた。
「何処に置けばいい?」
「君の前に置いて欲しいんだ。」
「ここでいい?」
「ああ、そこが丁度いい。」
そうして私の前まで戻ってきた小人は机の上の花の様子を確認している様だった。
ピンク、紫、白、青、黄色の花は長机に等間隔で並べられていた。
「僕お仕事はこの子達をこうやってする事なんだ。」
そう言うと小人はピンクの花を取ってその腕に抱き、目を瞑ってぎゅう〜っとし始めた。
身体を揺らし抱いた花に愛情を込めてるようなその姿がとても可愛らしく、ホッコリした気持ちで見守っていた。
「こうするとこの子達は元気で綺麗になるんだ。」
そう言うと抱いていた花をそっと机の上に戻した。
小人の抱いたピンクの花は確かに先程より元気になりキラキラ輝いてる様だった。
なんて素敵なお仕事だろうと紫の花を抱く小人を横目に他の花を観察すると白い花だけ元気がなく、しおれているようだ。
「この子は…」
萎れた白い花を指差し問うと先程より生き生きとした紫の花をそっと机の上に戻した小人が白い花の前に来た。
「毎日この子にも他の子と同じ様にしているんだけどどうしても元気が出ないんだ…。」
「何故だろ…。」
「この子が元気を無くしてから他の子達も前ほど元気で美しくなくなってしまった。花の数も少しずつ減っているんだ…。」
そう教えてくれる小人はしくしくと泣きながら白い花を抱きしめ始めた。
なんだかその姿がとてもとても悲しくて私も気づけば涙が零れていた。
「君も泣いてくれるの?」
しくしく泣きながら私を見上げる小人は手を私に伸ばしてくれる。
「だって、なんだか、とても悲しくて。同じ様にしている筈なのに結果が出ないなんて…。貴方が可哀想。」
「ありがとう、でも違うんだ。泣いてるのはこの子達を元気にしてあげられない事が悲しくて泣いているんだ。だから僕は辛くて泣いてるわけじゃないんだよ。」
そうなのか。と思いつつも声が出ず、ポロリポロリと出ていた涙はボタボタと床に雫を落とし、小さな子供のように嗚咽を漏らすほど私は号泣していた。
気づくと小人と変わらない大きさになっていた私は小人の隣にいた。
「ああ、違うのか。君が可哀想なんだね。よしよし、いっぱいお泣き。君はいつも頑張っている。僕は知っているよ。いいんだよ、自分を哀れんでも。辛かったね、悲しかったねっていっぱいいっぱい哀れんだら今度は僕みたいに君を愛してあげてね。」
小人はぎゅう〜っとお花達にしていた様に私を抱きしめてくれた。
私はボロボロ涙を零しながら小人を抱きしめ返した。
そうすると小人もボロボロと泣き出して2人で抱きしめ合いながら号泣した。
沢山泣くと気持ちは落ち着き、真っ赤に目を腫らしたお互いの顔を見ると可笑しくなり、今度はひたすら笑った。
こんなに笑うのはとても久しぶり。
何が可笑しいのかお腹を抱えて笑い続けた。
泣いて、笑って疲れきった私たちは2人で協力して小人のお仕事を終わらせる事にした。
青いお花を私が、黄色いお花を小人がぎゅう〜っと抱きしめた。
「ありがとう。」
私は無意識に何にとは分からず感謝をしながら言葉が漏れていた。
すると辺り一面が金色に輝き、キラキラと金色の粒子が降ってきた。
すると金色の粒子の雨を浴びたお花達がみるみる元気になり、キラキラ輝いて、沢山のお花が咲き始めた。
あの白いお花も萎れていたのが嘘のようにとても元気で輝いている。
「わあ!ありがとう!君のおかげだ!そうか。僕はすっかり忘れていたよ。感謝と愛情をあげないといけなかったんだね。」
「そういう事だったのか。みんな元気になって良かったね!」
胸の奥がポカポカと温まりまたほろりと涙が零れた。
「これで君も大丈夫だね。いつでもおいで。僕達は君の中にいる。君が話す言葉は全部聞いてるんだ。だからあまり悲しい言葉を言わないで嬉しい言葉を聞くと僕らはもっと元気になるから!」
驚いた。それと同時に納得した。
だからそうだったのかと。
しっかり頷くと彼らにありがとう。大好きだよ。と言った。
目が覚めるといつもの朝だった。
自分の部屋で自分のベッド。少し散らかった机。床に散乱した洗濯物。
陰鬱として見ていたいつもの部屋だった。
夢だったのかと思いつつあそこで目覚めた時のようにとてもすっきりした目覚めだった。
サッと散乱した洗濯物をかき集め動きやすい服に着替え、台所にいく。
ミルクを取ろうと開けた冷蔵庫だがふと考え卵を取る。
油をひいたフライパンに卵を割り入れ塩胡椒をし、少量の水を卵の周りにかけて蓋をする。
パンをトースターにいれ、ケトルで沸かしたお湯でインスタント珈琲を入れる。
香ばしい珈琲の香りと卵の焼けるジュージューという美味しい音。
お腹がぐぅーと鳴る。
出来たそれらを物を端に避けた机の上に置き手を合わせる。
「いただきます。」
目玉焼きは少ししょっぱい。
珈琲はあの時の様に美味しくない。
パンもスーパーで1番安い食パンで美味しくない。
「珈琲、ドリップにしようかな…。」
今日は休日。とりあえず部屋の片付けから始めようと思う。
最後までお読み頂きありがとうございます。
書き物初心者の文章は読みづらかったでしょう。本当にありがとうございました。
これは私が見た夢の内容に少し足したお話です。
じゃがいもの花なんて知らなかったのですが夢の中で私はそれがじゃがいもの花だと思っていました。
他の花は色しか分からず何の話だったのか記憶にありません。
小人は某関西ローカル番組の赤いとんがり帽子にラッパを吹くキャラクターによく似ていました。
その小人の花を抱く姿がとても印象的だったので残しておきたく書きました。
また夢であの小人に会えると良いなと思います。