プロローグ
何故ブサイクが存在するのか。子孫を遺すという生物の本能を充たすため、その容姿というものは当然美しく、異性を虜にするものであったほうが都合がよい。イケメンだとか、美女だとかいうほうがモテる。モテればその分繁殖に有利となる。
何故ブサイクが存在するのか。彼、ウィリアム・アシュレイはその問いをテーマに研究を重ねた。が、無念、挫折した。彼は苦心し、そしてブサイクの存在理由を見つけ出すためにこう考えた。ブサイクをこの世から消してしまおう。もちろん残虐な方法ではなく、遺伝子の操作から、ブサイクが生まれないようにしようと。
そして彼は生まれてくる赤子がブサイクとならない─たとえ親がブサイクあったとしても─薬を開発し、認められた。世界中の人々がこれを服用し、何十年、何百年とかかるであろうが確かにブサイクが生まれない世界を築き上げ、ブサイクの存在理由を後の世代に託し、死んだ。
しかし彼には誤算があった。
そう、彼の創り上げた世界にはブサイクの存在理由なぞ必要無かった。故に人々はブサイクの存在と、彼の本来の研究を忘れてしまった。彼は美しい人々を創りあげた祖、「美の父」と皮肉にも尊敬の意をこめて呼ばれ、歴史に名を遺すこととなったのだ。
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これは、アシュレイが創りあげた世界の上の物語。