n007;試験試合
閃光だ。目がくらむ。視界が真っ白。何も見えん。
たじろいだ私は、手を引っ込める。
光はなくなる。
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まばゆい光に誘われたのか、ベレッタが寄ってきた。そして言う。
「もう付き添いは良いか? もう俺が待っていなくても大丈夫だろう?」
「あ、うん、どーも」
と言うと、ベレッタはギルドの外に出ていった。
固まっていたウグイスが、口を開く。
「ひょえええぇえええっ……!」
肺から空気が抜けた音がした。閃光にビックリしたらしい。私もビックリだ。
「この水晶は、宴会の出し物だったのか。ビックリ箱みたいだなぁ」
「こ……この水晶は、魔水晶。魔力に反応する水晶です」
「へぇ~。んじゃあ、人が触るたびに、ピッカピッカ光って、目障りじゃないかい」
「普通はですねっ!――」
ウグイスが魔水晶とやらに触れる。チカッっと、白熱電球のように光る。四畳半を照らすには、少し物足りないくらいの光量だ。
「――と、こんな程度の光です。ノロ様のは……、あれはオカシイ。お天道様じゃないですか」
「ふむ、で、次の作業は……」
「なぜ、そう落ち着いていられるのですかっ」
周りの人々も、チラチラこちらを見ている。さっきの閃光にビックリしたのは、周囲も同じらしい。
「私はチャチャッと次の作業に進みたい」
「…………失礼しました。とにかく、魔力量は十分です。……十分以上に十分です。次にこちらに来てください」
「はい、っと」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。【室内 魔法 試射 施設】
ギルドの中を移動して、出た先は、広い部屋? 壁は石造りになっている。
それだけでなく、天井から床から、壁も例外なく、不気味な紋様が刻まれている。魔法陣、ってやつかー?
「この不気味なハウスはなに?」
「この不思議なルームは、魔法の試し撃ち場です。見ての通り、全面、結界を敷いてありますので、思いっきり魔法を撃ち込んでも、建物が崩れることはありません。安心して、ぶっ放してください」
「なるほど、ファンタスティックだ。だが、肝心なことに、私は魔法を知らない、撃てない、使えない」
そう言うと、いきなりウグイス嬢、彼方に向かって、火炎を放った。
マジカルだ、ファンタスティックだ、魔法だ。
「んじゃあ、”見て”覚えてください。ファイアくらいは撃てるでしょう?」
「ムチャクチャ言われる……」
試してみよう。
この世界は、前世と違う自然法則・物理法則がはたらいている。
魔法なんてない、などという、これまでの常識を捨てる。
魔法があり、魔力というのもある。私自身にも、多量に魔力がこもる。それは気づかなかった。
この世界そして自然のすごさに、思いをはせていたら、いつしか私は瞑想していた。
目をつむり、色々なことを考えては考えない――これは、空気の流れだろうか? エネルギーを直接的に感じる。いや、果たして、これが魔力と言って良いものなのだろうか? この身体には、魔力を感じる感覚器官が備わっているのだろうか? いいや、物理的な感覚器官ではなく――――などという思考が、背後に流れ行く。
。。。。。。。。。。。。。。。
◆視点変更:三人称
ノロは、空中浮遊していることに気づいていない。
多大な魔力があらわになり、ノロの身体は緑色の光に包まれている。
あまりに濃い魔力は、あからさまに目に見える。
その上、強すぎて、床から、ノロ自身を浮き上がらせている。
「う……うぅ、なに、これ、これほど……?!」
ウグイスは、ジリジリと後退して、逃げようとしている。
――どう見たって、あきらかに、あまりにも、力がありすぎるのだ。
ウグイスは、今まさに、災害の中に身を置く心持ちだ。
あるいは、一触即発の小規模 惑星破壊 爆弾 を目の前にしている気分に似ている。
絶対に 火を付けては ならない!
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◆視点変更;一人称。ノロ
目を開くと、怯えているウグイス嬢がいた。
「なにか? どうか? しました?」
「どう、どう、落ち着いて。ノロ様、落ち着いてください」
「とても平成な心だよ。いったい――お」
地に足が付いていない。
それをじーっと見ていると、徐々に降下して、軟着陸した。不思議現象……いや、私は超能力者になったのかもしれない。念力やテレポーテーションも、使えれば便利だから、今度、試してみよう。
少し落ち着いて、ウグイスは言った。
「ノロ様、魔法は、そう、止めておきましょう」
「なんで!? 私にはムリなのか? 見ただろ、空中浮遊! 私はアイキャンフライができる。素手で天井を雑巾がけできる力だ」
「いえ! その……思いのほかですね、あまりにも、あまりにも尋常ではないと言いますか……、色々と大事なものを吹っ飛ばしてしまいそうなので、ノロ様は魔法を控えたほうがよろしいかと」
「まだ、一度も使っていないのに!? あるものは使いたいぞー!」
「幸い、ノロ様は魔力のコントロールは上手いので、今は、そちらを”より”伸ばしていくことをオススメします。では、ちゃちゃっと戦闘試験に移りますね」
「ん、あ……うん、はい」
相手さんの必死な面持ちには、何を言ってもムダだろうと思った。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。【野外 戦闘 訓練 場】
また、場所を移動された。今度は、魔法っぽさが微塵もない、お外。
「ここでは皆、戦闘訓練に励んでおります。戦闘試験もここで」
確かに、筋骨隆々な男女が、汗水たらして、模擬試合らしきことをやっている。真剣を使っている人もいて、怖いね。
わー、金的攻撃も容赦ない。そして、急所を蹴り上げられたのに、怯まず反撃を続ける相手も、すごい。急所が急所でなくなっている。
「好きな武器をお取りください。わたしは対戦相手を用意してきますので」
と、示された壁際。そこには土に汚れた武器が色々とあった。
木剣か木刀、サビの入った真剣(サイズ選り取り見取り)、斧、槍、棒、物干し竿なみの棒、ヌンチャク、杖、銃……間に合わせの質の数々。!?
「おおっ、銃!?」
「それは使えません。弾がありませんので」と、後ろからウグイス嬢。そして、酒場のママさん。
「じゃあ、無難に…………、そうだ、コレ、使ってみたい」
手に取ったのは、ヌンチャク。変わりものに引き寄せられてしまう。――そして前世の類まれな武道家BLさんを思う。B・Lさん……、長生きしてほしかった。人類の喪失。
「では、こちらで戦ってもらいます」
「誰と?」
「アタシさ」
そう答えるのは、酒場のママさん。ギルドのフロントに隣接している酒場の。
「?」
私が不審に思っていると、ウグイスが説明する。
「こちらは、当ギルドのギルドマスター、ドルメンさんです」
「ギルドマスター? 強いの?」
ギルドの酒場のマスターということか?
「それはアタシのセリフさ。こう見えて元はAランク冒険者。アンタの強さはいかほどかねぇ」
「Aランク? ……ランクの説明は、まだ受けていなかったなぁ。まぁ、『私は強い』と言いたいのだろう、ふむ、そう」
そういえば、何で戦うことになったんだっけ? ……忘れたな。
ああ、冒険者になる試験だっけ? そうかそうか。
たまに記憶が抜け落ちる。髪の毛とともに。
。。。。。。。。。。。。。。
巨漢のママさんはドルメンさん。図体でっかいんだわ~。横綱じゃないか?
「はじめっ!!」
試合開始されてしまった。
が、ママさん改め、ドルメンさんは動かない。
「どっからでもどうぞ」とのこと。
「んん~と。本当は試合が開始する前に聞くべきだったけど、勝敗の判定基準などは、どうなっているかな?」
「降参するか、気絶させるかだ。守るべきは、相手を殺さないこと」
「分かった。……そちらさん、戦いの構えには見えないが? 本当に攻撃して良いのだろうね?」
「もちろんさ、かかってきな」
「ヨ~~シ。わかっ――た―ッ――――――」
私は、ドルメンさんの背後まで移動した。瞬間的移動のため、声はドップラー効果の影響を受けた。
※「ドップラー効果」は気になった人だけ、各自で調べてね。身近な現象だヨ。
「消えたっ……? バカな、詠唱もなしに??」
何を言っているのかは分からないが、これで終わりだ。
飛びかかる、背後から。
私は、ヌンチャクでドルメンの首を絞め上げる。
「はい、はい……、気絶してね、ねんね、ねんね」
ドルメンはドタバタ暴れようとするが、動けば動くほど、私は、なおいっそう、絞める。
そして、泡を吐いて気絶した。
「はい! 判定!」と、ウグイスに指示する。
「あっ、はい! ノロ様、勝ちです! ……と、いいますか、試験試合なので、勝ち負けを争っていたわけじゃないんですが……」
私は、首絞めを解放。ドルメンの気道を確保。頬を叩いて起こす。
「ん……ああ、アタシぁ、いったい……?」
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「いやぁ~、まいったねェ、完敗するとは」
ドルメンは、笑うしかない、という様子だ。
「さぁ、試験の結果は?」と、私は先を促す。
「もちろん合格さ。レベルが分からないとはいえ、ここまで実力者なら大丈夫だろ。いやぁ~見た目はチビで子どもなのに、たいしたもんだ、たいしたもんだワ」
と、ドルメン。
それから、ウグイスが手続きの続き。
「ではこれがギルドカードです。つまり証明書ですね。ランクはFからですね。正直DやCでも良い気はしますが……」
「あの、ランクの説明を受けてないんですがね」
「その人の実力を示すもので、だいたいレベルと比例しています。上からS,A,B,C,D,E,F,G……だったような気がします」
「え、はあ、大雑把な説明」
「あまりランクにこだわらないでください」
「あまり覚えなくていいということか」
「ええ、まあ」
「そっか」
魔術師は置いておいて、冒険者にはなったらしい。
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■要約
・魔法を撃ってくれと言われるが、今度は止めてくれと言われ、不発。
・ギルドマスターのドルメンと戦う。勝つ。
・面倒な手続きは終わったらしい。




