n005;女傑ノロ
その後、索敵するが、もう敵はいない様子だ。
ブドリとたちと合流して、奥へ進む。この奥が、地上につながっているとの話だ。
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ゾンビの群れが迫る。大所帯で移動したから、人間の臭いに誘われたか?
「か、格闘ゾンビの群れ、か……」と、ブドリ。
「格闘ゾンビ?」、聞き返す私。
「ゾンビの一つで、格闘を得意とします。普通のゾンビより、すばやいから気をつけるように」
と、言われても、私には、先ほど相手にしたゾンビと同じ種類のように見えるが。
「たりゃぁ」
投石! 投石! 投石!
さくっと、何匹もの格闘ゾンビを、戦闘不能にできた。
なんだ、ブドリが戦々恐々だから身構えたけど、弱っちいじゃないの。
「な…………なんです、今の魔法? は?」
「魔法? 随分と華やかな想像をしてくれる。だが実際はタダの石、石投げさ」
と、私は、ブドリに、石を拾って見せる。ブドリは目を皿にしている。やはり、この洞窟に転がる石は、タダモノではなかったかも。高級品だったか?
それからも、バラまけるように、石を投げ飛ばしていって、その後には、格闘ゾンビの肉片が、散乱した。
「行こう」
後ろで固まっているブドリたちを、手で「来い来い」と手招く。
結局、戦ったのは、私一人だった。他の人達は、微動だにせず、見ているだけで。いや、いいんだけどね、誰一人、ゾンビの攻撃を喰らわずに済んだのだから。
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洞窟から出た。
「お空さん~!」
私は、天に向かってバンザイした。陽の光を、全身に浴びる。傷が癒やされる……感覚がする。
「そういえば、貴女の名前をうかがっておりませんでした。聞かせてくれますか?」
というブドリさんに、「ノロだよ」と答えた。
「おケガは?」との心配にも、大丈夫と答えた。
「私は、この方たちと教会まで付き添いますので、これで」
と、ブドリさんは、皆を引き連れ、去ってゆく。
なぜ教会へ行くのか分からないが、教会が病院の役目も果たしているのかもしれない。――お祈りすれば、傷も癒やしてくれるのかぁ~?
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さて、今は帰る場所がある。ベレッタの家へ。
「の、ノロちゃん!! 大丈夫だったの!?」
と、心配するベレッタ母のオバ様。
「健康、健康、絶好調」と、私は無事をアピールした。
その後。ベレッタとの会話。
「ノロ、お前に尋ねるが、一人で何十体もの格闘ゾンビを倒した、って?」
「そう。なんで知っている?」
「ブドリさんが、ノロの活躍を話していたんだ。ブドリさんがウソつくとは思えないが、どうも信じられなくてな。しかも、石投げだって? 石投げ? ただの石投げで倒したというじゃないか。本当か?」
「ベレッタは、アレと戦ったことがないのかい? その、ゾンビってヤツ、案外、柔らかいものだったよ」
「いや、冗談じゃないヨ。俺も戦ったことはあるさ、一戦ならずな。だが、とんでもねえ。銃弾は素通りし、刃物は溶かされる。タダの石なんて、言わずもがな、効くわけがねェぞ!」
「ただの石じゃなかったのかな。あの洞窟は、賢者の石でも量産してるんじゃないかい?」
「ははっ」
と、たわいない話をした。
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朝。私は、散歩をしていた、感謝を受け流しながら。
「この度は、私共の子どもを助けていただき、感謝感謝に耐えません。本当にありがとうございました。私共にできることがあれば、何なりとおっしゃってください。ぜひとも、お礼を申し上げたく――」
道行く人から、極めて重々しい感謝をされること、度々。――ま、確かに命は重いものだが。
「あ、どうも、いや、どうも」と、私は、それなりに適当に答えてゆく。
「あ、女傑ノロさんとは、貴女のことですね」と、礼をしていく人々。
誰が決めたか、「女傑」という二つ名?か何かが、レッテル貼りされた。別にけなされているわけではないらしい。
あるときは、頑固親父のような風貌の、とても厳しい親父さんが近づいて、土下座して感謝の意を述べた。それも路上のド真ん中。
「こん度は、ウチの母さんバ、助けてくれなすった。こんなか細い身体のオナゴが、一生懸命、命をかけて、見ず知らずの母さ、助けてくれてば、ブドリさん共々、聖人さんみたい人ガ、この町にはいて、皆、助けてぐれて、なんとも言えん! ――――ありがとう、ござい、ました」
額を地に頭突きするが勢いで、感極まったお声を頂く。
真面目に感謝を語る相手を、聞き捨てていくのも忍びなくて、全部聞き届けた。
それから、無難な言葉を2,3声かけて、私は立ち去った。
思えば、人の命を助けたことなど、初体験。
そして、考えてみれば、命を救われるとは、当人たちにとって、ここまで重々しいものか……そうだろうな、と、今更ながら実感する。
世界が変わっても、命一つを大事にする価値観に変わりはない、か。
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ちょっと、感謝疲れをした。度重なる感謝も、度を越すと、気疲れしてしまう。
というわけで、ベレッタの家に戻った。そしてベレッタと会う。
「ノロ、報奨金が出るらしいぞ?」
「何が?」
「拉致・監禁した悪漢たちを、とっ捕まえたろう? それで、ギルドから、お前さんに報奨金を出すとさ」
「金、くれるって? そりゃあ、頂かないと損だナ」
「んで、後日、冒険者ギルドに来て欲しいと」
「行こう行こう。ギルドってのは、お金の受け取り所のことね」
「いや違うぞ。ギルドってのは、同業者の組合みたいなもんで――」
「んじゃあ、商工会みたいなものか~?」
「いや、よく分からんな。まあ、いい、明日、連れて行ってやる」
「頼むよ!」
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翌日の朝食。相変わらずのメンバーだ。私、ベレッタ、ベレッタ母。
乾燥パンみたいなものを、ダシ汁で茹でて、それを食べている。うまくはない。
「今日は、ノロを、冒険者ギルドに連れて行く」と、ベレッタ。
「ノロちゃん、見た目によらず、戦えるのね! 冒険者になるの? でも、心配だわ……まだ早いんじゃないかしら?」
「冒険者になるかどうかは――。だが、10歳も過ぎれば、もう一人前だ。ノロの歳で、早いってことはないだろう。俺も、その歳にはもう、戦いに身を投じていた」
「そうだ。ベレッタの銃を、ノロちゃんに貸してあげたら?」
「それは良い考えだ――と思ったが、銃器では、ノロには力不足かもしれない」
「……?」
穏やかに首を傾げるベレッタ母。
そして、ベレッタと私は、冒険者ギルドに向かった。
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■要約
・格闘ゾンビたちを倒して、地下洞窟から脱出。ガンタウンのベレッタの家へ帰る。
・その活躍をブドリさんが広言し、皆から女傑ノロと讃えられるように。
・報奨金が出るとのことで、ギルドへ受け取りに行く。




