n018;怪鳥とシャノンとホフリ
「ノロがガンガンそれをぶっ放せば、ご先祖も、浮かばれるだろうよ」
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朝。
今日は冒険者ギルドにやってきた。
試しに手短な依頼を受けてみようと思って。
掲示板を見る。依頼書が貼られている。
「これがいい」
『薬草採集』と『迷宮探索』の依頼書に着目した。
すると、横にいたギルド職員が口を挟む。
「おやおや、ノロ様はFランクなので、『迷宮探索』は受けられませんよ」
見ると、そのギルド職員は、受付嬢のウグイスだった。
「ダメ?」
「ええ。ランク上の問題もありますし、パーティも組まないといけませんし」
「ぱーっと、パーティ? お祝いか?」
「いいえ。パーティというのは、一緒に仕事をするグループのようなものですね」
「パーティと言わず、チームと言ったほうが、分かりやすいんじゃないかな?」
「それでも、パーティと昔から言われておりますので」
「そっか。じゃあ、こっちの『薬草採集』はやっても大丈夫かい?」
「はい。それなら、構いません」
「薬草の見本を見せてちょうだい」
「それでしたら、こっちの棚に並べてありますので、ご確認ください」
そこには薬草のサンプルがあった。
「ふむ」
見た。行こう。
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町を出て、野山を駆ける。
心地よい、穏やかな風が吹いている。天気も晴天。
町付近に生えていた薬草は、もう取り尽くされたかな。見当たらないや。
だから、奥へ、その先へ、と、歩む。
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お日様は真上。
「昼になっちゃった」
散歩が趣味な私は、めくるめく景色に心奪われ、進みすぎたらしい。
「どこだよー? ここ?」
気づけば、荒野をさまよっていた。
グギィーヤ!
鳴き声。向こうのお空さんに、なにか飛んでいる。
化け物みたいな大きな鳥。怪鳥。
モンスターだろう、魔物だろう。
こっちに突っ込んでくる。
襲ってくる気がプンプン伝わってくる。
「これはいい。いいタイミングに、いい的だ」
私はワンインチリボルバーを使ってみたくてたまらない。
ところが!
今まさに向かってきた怪鳥が、急に回れ右して引き返して行っちゃう。
何を慌てている? まだワンインチリボルバーを見せびらかしてもいないのに。
「おーとっとととと! 逃げるな、この! 鳥!」
私は、ワンインチリボルバーを構えて、狙いを付けると同時に、発砲。
ズシン、と反動! 後方を支える右足が、地面に沈む。付近の地盤が揺らぐ。
「ぺっぺっぺ、砂、食っちゃった……」
爆炎の向こう、地平線の向こうに、墜落する怪鳥が見えた。
「ヨシ! ――うぐわっ!」
前に進もうとすると、前に倒れた。
右足が、地盤にめり込んだままだった。
「地ならしが足りない地盤だっ」
足を引っこ抜いて、先へ進む。
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怪鳥。
「でっかいなぁ~」
思いのほか大きい怪鳥は、身体を撃ち抜かれて横たわっていた。
「オー、撃たれたのか? まだ生きてるな? ヨシ、治してしんぜよう」
私は、怪鳥の手をあてがい、回復させるようイメージした。
緑色の光が立ち込める。多分、ヒールという類の回復魔法だ。
外傷は治った。心の傷は、治せない。
そして、怪鳥が、目が覚めた。
「天国から引き戻してやったよ。感謝してちょうだいな」
目が合う怪鳥。
グギャァァァーッ!!!??
「また逃げる気かっ? そーはいかないのね~」
私は、無理やり怪鳥に乗る。
暴れる怪鳥に揺られながら、空の旅がはじまる。
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いつしか、夕暮れ時。
グラグラ揺れる視界に見える、どこかの森。
ますます、知らない場所に迷い込んでしまった。
「――お!」
チラリと見えた人影、二人分。
あそこに、同年代の子が二人いる!
あとよく見れば、ちっちゃい緑の魔物みたいなのが、わんさかいる。
「ヨシ、怪鳥、あっちに行くんだ!」
怪鳥は、言うことを聞かない。当然だ、言葉がわからないもの。
「あっち! あっち! あっちだ!」
私は、足で、怪鳥の腹を蹴って、意思を伝える。
怪鳥、パニック!
「こっち、こっち、こっち!」
今度は、怪鳥の首を、進行方向に動かして、指示。
なおかつ、執拗に、進行方向を、指差し確認する。
怪鳥は、暴れながらも、そちらへ進路を変えた。分かってくれたらしい。
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森の中にいる二人に近づく。
そうすると、どうも、木々の枝葉が邪魔らしい。が、この怪鳥は、枝葉ぐらい、近づけば、叩き折ってしまう。問題ない。
先ほど、わんさかいた緑の魔物は、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
さらに二人に近づくと、二人は青い顔をしている。血色が悪い。遭難者か?
ボーイッシュな赤髪、短パン少女が言う。
「わ、ワイバーン……、な、んで……」
ワイバーン? 自動車ブランド・ワイバーン? いや、ミニバーンとかビックバーンという感じか。
どちらにしろ、謎のキーワードが、新出した。
「………………」
もう一人のローブを被った金髪少女も、固まっている。
赤髪少女、気を取り直したのか、構える。おお、武器はツメみたいなものを両手に装着するのかー。
「シャノン! お前は、下がって、攻撃魔法の用意をしろ!」と、赤髪。
「あっ、はい!」と、下がるローブ。
あいさつをしたほうがいいかな。
「こんにちはーーっ!」
私はバンザイをした。
「え……人? なんで」
戸惑う赤髪。
「実は薬草を探しているんだけど、ある?」
「そうかっ、お前、魔物使いだな! ……薬草を奪ったあとで、どのみちオレたちを殺すつもりかっ?」
おやまぁ敵対関係? なんで?
「奪うたって、自然に生えているのを取るだけよ。それがダメなことなの?」
と言うと、
「……? ちょっと前提から聞き返すが……、オレたちを襲いに来たんだろう?」
「はー、違いますが?」
「そ、そうか。そうか」
誤解が解けたらしいな。
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下がっていた、金髪ローブ少女も、寄ってきた。そして感謝された。
「助けてくださって、ありがとうございます」
「ええ? 助けた? 何が?」
「あのゴブリンたちを、追い払ってくれて……」
あの緑の魔物たちが、ゴブリンというものだったのかもしれない。
ゴブリンという、楽器みたいな名前は、聞いたことがある。
警戒心も穏やかに解けた。
「自己紹介といきましょうか? 私はノロと言う」
「ああ、名前か? オレはホフリ。格闘家をやってる」と、赤髪ボーイッシュ少女。
「ボクは魔法使いです。あ、名前は、シャノンです」と、金髪ローブ少女は、やはり見たまんま魔法使いか。
「ほうー、シャノンか。見た目も相まって、可憐だ……」
「えっ……可憐、ですか……」と、顔を伏せるシャノン。
「ちょいちょいちょい、勘違いする前に言っておくがな、こう見えて、シャノンは男だからな」
「そうは見えないな。新手のジョークか~?」
と私が言うと、赤髪ことホフリはニヤリと笑って言う。
「シャノン、股ぐらにある男のモノを見せてくれないか? そうすりゃ、誰でも性別がハッキリ分かるからよ」
「ひっ……。セクハラですよ、それ……」、と股間を両手で隠すようにするシャノン。
「まァ~、そちらさんの性別は、どーでも良いとして――」と、話を変える。
(どうでも良い…………)、つぶやくシャノン。
「――ここいらには、ビックリするような魔物もいる。コイツみたいに」
と、私は、怪鳥を叩く。
ウギャァアス。
「そういえば、このワイバーンは従魔ですか?」
「従魔って何? ワイバーンって何?」
「ソイツをワイバーンって言うんだよ!!」と、赤髪さん。あ、名はホフリさんね。
そうだったのか。
この怪鳥は、ワイバーンというのか。
覚えよう、怪鳥ワイバーン。Yバーン。
「従魔っていうのは、魔法契約で従属させた魔物のこと……です多分」
「なら、違うね。こう力づくで押さえつけたのよ?」と、ワイバーンの頭をガチリとつかむ。
ヒョエギョエギョエ~
ワイバーンは哀しげに鳴く。
「ま、まさか、野生のワイバーンなんですか!? それ!?」
「反対に、野生じゃないワイバーンって、どういうバーンだ? ワイだけじゃなく、エックスバーンや、ゼットバーンもあるんかい?」
「だから、従魔なら、野生じゃないんだろう。――んで、野草が欲しいと言ったな?」と、ホフリ。
「いや薬草。ここらに生えてる?」
「生えていたが。あらかたオレたちが取り尽くした」
「それに、もう暗くなるので、今日のところは町に帰ろうと思います」
「町か! それはいいね。実は私は迷子で。町まで案内してほしい」
「それは……いいですが……」、シャノンが口ごもる。
代わりにホフリが言う。
「そ、そのワイバーンも町に連れ込むのか?」
「ダメ? なんか許可証でもいるのか~?」
「許可も何も、ソイツは野生だろう? 従魔じゃないんだろう? ならダメだろう?」 なぜだろう?
「ん~~~。ところで、町はすぐそこ?」
「ええ、まあ、近いです」
「じゃ、歩くか。――さぁ、もう行っていいよ」
と、私は、ワイバーンだった怪鳥を、逃がす。
ギョヘーッギョヘーッ
ワイバーンは涙を流しながら旅立った。それなりの感情があるらしい。
「あ、逃がしちまって良かったのか? ワイバーンの素材は高く売れるのに」
「空飛ぶ乗り物として、世話になったからね。殺さずに帰すさ。――んじゃあ、町に案内してちょうだい」
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■要約
・『薬草採集』依頼をやる。
・怪鳥とお友達。ワイバーンだった。のちに逃がす。
・シャノン&ホフリと会う。町へ。




