n015;ワンインチリボルバー
「……かもしれんが、そんなモンじゃなかった。撃ったと同時に、まるで、銃を中心に爆発でも起きてるんだ」
「爆発くらいで死ぬもんかね?」
「死ぬときゃ死ぬもんだ、ノロちゃん。……ヨシ、いい、見せてやろう」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
銃器屋のオヤジが、店の奥から持ってきたのは、片手で持てるか怪しいほどの、どでかいリボルバー。
事実、オヤジさんも、両手で重々しく、運んできている。
「これが?」
「ああ。ワンインチリボルバー……と、古文書には書いてある」
「古文書?」
「この銃の設計は、古代ペブロイ文字で書かれた、古文書の中に記載されていた」
「ふむ」
「ワンインチの名の通り、100口径だ」
「と、すると、さっき使ってたヤツが、50口径って言ってたから、倍か倍々の威力か? そうでもない?」
「とんでもねぇ! 口径っていうのは、あくまで直径に過ぎない。威力は別だ。さっきのヤツの倍だって? 威力を何倍かで例えるなら、10倍、100倍、1000倍に収まるかだって怪しいもんだ」
「そりゃ、大げさな、素人でも分かる誇張。……さて、出してくれたってことは、試し撃ちしても良いんだろう?」
「ダメだ。威力は見せるが、撃たせはしない」
「じゃあ、どうするの?」
オヤジさんは、銃を、器具を使って固定しはじめた。何重にも、何重にも、固定器具を付けている。オーバーなくらいに。
「オイ、ちょっと、ノロ、こっちへ来なさい」
いつしか呼び捨てされる。
二人は、銃から距離を置いた。
銃の引き金から、オヤジさんの手元まで、ヒモでつながっている。
「こんなに離れる必要ある?」
「この倍は離れても良いくらいだ」
「いや、ここでいいよ」
「じゃあ、見てみろ! これがワンインチリボルバーの恐ろしさだっ」
そう言うや、親父さんは、両手で思いっきり、綱引きの要領で、ヒモを引っ張った。
ズドドドロドドドドウゥゥゥ!
おうおうおうおうおう!? 地面が揺れれれれっる!?! こんなにか……!
銃声は唸りが激しく、何と表現してよいか分からないが、すごい迫力だった。神のいかづちか、と思うほど。
銃口が向いた先は、草が全部焼かれ(というより地面がえぐれ)、的は、跡形もない。
まるで、私の、謎魔法、光球を撃ったかのようだった。
ちなみに、銃も、消し飛んでいる。――と思いきや、
ドガサッ!
ワンインチリボルバー、あった。目の前に落ちてきた。すごいな、無傷さ、このリボルバー。
「確かに……すごい威力。それと、この銃、発砲と同時に爆散したと思ったけど」
「爆風に包まれただけだ。この銃の特徴は破壊力だけじゃない。その異常な耐久力だ。溶岩に放り込んだって、一日は耐えるかもしれん」
「おおー、ほしいな、このロマン武器」
私はワンインチリボルバーを手に取る。名前を超える破壊力。
「バカ言え。お前さんが、バカを見ないように、自爆銃器の実態を、わざわざ見せたんだぞ!?」
弾倉を確認。残りが4発。今撃ったやつの空薬莢1つ……おやっ?
その空薬莢だったものが、粉塵になって、こぼれた。
オヤジさんの解説。
「威力がありすぎて、空薬莢も、原型を留めない」
「よく、そんな威力なのに、他の弾が暴発しないね」
「繰り返すが、銃そのモノは異常な頑強さを誇る。そして弾倉は特殊な防御機構になっている。弾倉内に綿花を入れたって、燃えずに残っているくらいだ。だが、心配なら、1発だけ入れて撃つのがオススメだな。ま……、そもそも、この銃においては、撃たないことがオススメなのだが」
「私は撃つぞっ、この一級品!」
私はオヤジさんから距離をとる。そして、彼方に向かって構える。
「ば……バカめッ! よさんかっ!」
発砲――!
轟く音、爆風、爆炎に包まれる。
。 。 。 。 。 。 。。。。。
「見ろ・ ・ ・ 、弾け飛ばされおった・・・ なんと、バカな、ことを・・・……」
私は、かぶった土砂を払って、立ち上がる。
「ぬおっ……!? ……だいじょうぶ……なのか……????」
「あァ、おかげさまで、心配かけてしまったけど、――こうでもしなきゃあ、『大丈夫』という一言にも、説得力がないと思ってねぇ」
「無事か? 本当に、無事なのか?」
「見たとおりさ。私なら、コレを扱える。ということで、ワンインチリボルバー、私におくれっ」
「ああ……そうだな。む、しばし、考えさせてくれ」
。。。。。。。。。。。。。。
店の中に戻った。
オヤジさんはテーブルの上に、ワンインチリボルバーの弾丸を並べながら、考え事をしているようだ。そして、決断したらしい。
「そうさな。ホコリをかぶるよりは、使われる方が良いだろう。そのワンインチリボルバーが使うなんていう奇特な人間なんてのは、お前さんぐらいだろうしなァ……。ああ、持っていけ」
「お値段、いくら?」
「金か?」
「そうだ。金の問題だ」
「金は今じゃなく、後払いでいい。そうだな、値段は、ノロの払いたい額でいいぞ。んで、ソイツの弾だがな、あまり量は作れない。今あるのは、ここに並べたものだけだな」
先ほどからオヤジさんが並べた、一回りデカイ1.00口径弾が、十数個、並ぶ。
そのうち、少数の弾には、赤と黒のストライプが塗られている。それを指差して尋ねる。
「この弾は? オシャレ?」
「ソイツは特殊火薬を、めいいっぱい詰め込んだ――いわゆるマグナム弾ってヤツだ」
ひょいと、つまんでみる。ズシリ。
「おー、マグナム。おー、重量感がいいね。そして、名前、カッコイイ!」
「その名に劣らず、破壊力は、通常弾を、さらに凌ぐ。それはもう……、銃身が耐えられるかどうか、わからないくらいにな」
「と、すると、あまり使わない方がいい?」
「ああ。その銃が壊れてもいいってんなら、構わないが。まぁ、この弾も含めて、全部持っていけ」
「最後のとっておきにしておくよ。んじゃあ、また、弾、作っていてちょうだいな、あとで買いにくるから」
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■要約
・物騒な自爆銃器『ワンインチリボルバー』を頂く。扱いづらいロマン武器。自爆銃器のニックネームは伊達ではない。




