n012;名もなき冒険者
ノロは、デリンジャーの頭を撫でた。
ミラッガーは力尽きて、その場で寝はじめた。
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ノロはデリンジャーの顔を上げて、ワケを聞いた。
「いったい、目的は何だったんだ?」
「ハ……、某は、人族を減らそうと……」
「なぜー?」
「貴方は……、その隠しきれない覇気でわかりますが、偉大なるお方、でありましょう……? その貴方であれば、おわかりになられると、思いますが、……」
「私の名はノロ。ただの人間さ。アンタ、私を誰かと勘違いしてるんじゃないかい?」
「に…人間……?? いえ……ですが」
「もう一度聞こう――、そちらさん、なぜ、この町を攻めた? 人間を食べたいのか~? それとも資源獲得か~?」
「人間を滅ぼすためです」と、ハッキリ言った。
「なぜ?」
「悪だからです」
「人間が?」
「そうです」
「魔族とやらは、悪じゃないのか?」
「人間よりは、悪ではありません」
「そうなのかー?」
「反対に、某から、お尋ねします。人間は、ウソをつき、本当のことは、稀にしか言わない。そんな存在が、悪ではないとしたら、……いったい、何なのですか?」
「人間が、何なのかって? 善悪で言やぁ、善悪の混ざりモノさ」
「善も、悪も、あると?」
「そちらさんを見る限りでは、魔族も人間も、大差がないように感じるけども?」
「しかし……しかしッ! 人間は、魔族を、虐殺しているではありませんか!?」
「んー……? この世界の歴史には疎いが……、多分、どっちもどっちじゃないか。どうせ、殺して、殺されて、殺して、殺されて……の悪循環なんだろう? だったら、やっぱり、どっちも自然の動物じゃないのさ」
「某は、幼きときから、人間は悪で、憎むべきものと教えられましたが……」
「本物の人間を見よう! そうだ、んじゃあ、アンタ、ここに暮らしなよ、暮らすんだ」
「なにっ……!?」と、ベレッタ、戸惑う。
「アンタ、そういや名前は? モズクだっけ? マズクだっけ?」
「某の名は、デリンジャーと申します」
「じゃあ、よろしく」
ノロと、睡眠中のミラッガー以外は、全員戸惑っていたが、なりゆきで、デリンジャーは、この町に留まることになった。
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ガンタウン。町は全域に土ぼこりをかぶっていた。先ほどの爆発のせいだ。
ここは、町の外。オークの群れがいた場所。
雑草広がる原っぱは、荒っぽい草むしりが行われたごとく、土をむき出しにしていた。
のみならず、1つ、どでかいクレーターまで仕上がっていた。爆発のせいだ。
今は冒険者たちが、徘徊している。
諸々落ちた、オークの死骸を、回収している。
焼け残っている箇所は、換金できるらしい。
まるでみんなで、落穂拾いでもしているかのような、のどかな光景。天気は快晴。
作業をしながら、会話している、冒険者たち。ーーそして以下が会話の内容。
「それにしても、今回の惨状は何だったんだ? あの爆発、オークの自爆か?」
「そうじゃない。俺の動体視力にゃあ、きっちり見えていた。ほんの小さな光る弾だが、それが町中から撃ち出された」
「魔法か? 銃弾か?」
「分からん。だが、銃じゃあ、ないだろう。銃器は初心者武器だ。あのパワーは出せない」
「となれば、魔法だろう?」
「魔法……なのか? あんなのは見たことないが。……世界は広いものだ。自分の見識の狭さを思い知らされる」
「あんな、すごい魔法を撃てるとなると、この町の、ギルドマスターくらいじゃないか?」
「酒場のママさんか? そう、ドルメンさん」
「いや違う。魔術師ギルドの方だ」
「ああ! 新しくできた。えーと、知ってるぞ、えーと、……ミラク、ミラクル? マジックさんだったか」
「ミラッガー……という名前だったな。わりと若い男だ」
「そん方が、今回の功労者か?」
「まあ……、あくまで、俺の推測ヨ? ここらで一番の凄腕魔法使いって言やぁ、そのミラッガーさんしかいねえぜ」
「魔法使い? 魔術師ギルドのギルドマスターなんだから、魔術師なんじゃないの?」
「同じもんだろう」
「あ、でも、ついこの間、話題になった女傑ノロ、ってのも……」
「ノロ? アイツが? 冗談ポイだ。お前は本人を見たか? 女傑ノロってのはな、ありゃあ、子どもだぞ」
「そうなの?」
「ああ。これも、俺のカンにすぎないが、その女傑さんが話題になったのは、未来の冒険者に自信をつけさせる一環だったんじゃないか、と。最近、冒険者のなり手が減っているだろう?」
「ええ? ヤマトネだかは、冒険者が増えてると言ってたような」
「そりゃ間違いだ。元々、まっとうに稼げない人間がやるものだからな、冒険者ってのは」
「僕は、冒険者を目指してなったんだけどな」
「なろうとしてなるのは、一握りなものだ。大抵の大人は、やらざる得なくなって、流れるままに生きた結果、冒険者に落ち着くんだ。……まぁ、最後に落ち着く先は、土の下かもしれないが」
「ギルドもギルドで、考えてみれば、酷なことをするもの。ちびっ子たちに、冒険者を、夢ある職業だと思わせるのだからな。イメージ戦略だ」
「夢は……確かにあるな。デカイのに当たれば、一発逆転でな」
「そんな夢は、宝くじでいい」
「男の子は、戦いに沸き立つもんだよ」
「そもそも、お前は男でも子でもないだろう。――確かに、魔物を殺すのが心地よいかもしれないな。だが忘れないでほしい。殺すというのは、殺されることと表裏一体だ。いつまでも、こちらが傷つかずに済むワケがない。とても痛い思いをして、それでも、やり続けられるか?」
「ま、オレは……やり続けられるか、じゃなく、それしかやりようがないのだがな」
「仲間も死んだな。あれは堪えるね……。敵前ゆえ、哀しみに浸る余裕すら、ないのだから。仕方なくて、亡骸、捨て置いて、逃げたよ。あいつ、食われてたな。俺も、ああなるのかな、って」
「そういう分かりきった暗部はな、ギルドは絶対言わない。子どもの夢を、守るんだ、と」
「はははっ。夢より、命を守ったほうが、いいんじゃないか?」
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◆視点変更:一人称、ノロ。
そして戻って参りました、魔術師ギルド。
となりにはデリンジャー。
目の前には、まだ汗を流す、ミラッガー。
「ああああの、ノロさん? 本当に、本当に、まぞまぞまぞくゴホン。魔族のデリンジャー殿を、ここに住まわせる気で?」
「そうさ! 魔族と人間の架け橋になる」
と、私はデリンジャーの背中を叩く。背丈の関係上、背中を叩くのも大変。
デリンジャーは鋭い眼光で、ミラッガーを直視。
「ひやぁぁ……」と、怯えるミラッガー。
「……ダメかい?」と私は尋ねる。
「いいえ……その……」
「ここに置いてもらえないだろうか」と、デリンジャー。
「ハ……あは、……はい」
「ありがとうね~」
私は、ミラッガーと握手しながら、ブルンブルン振った。ミラッガーの上体も、元気よくはずんだ。
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■要約
・魔族デリンジャーがガンタウンに住む。魔術師ギルドに。
・名もなき冒険者の雑談。




