n011;魔族ご対面
「おい! 起きてくれーっ、ヤマトネ! 西門を案内するんだ!」
私は、上に乗っかったヤマトネを、ふんじばるように背負い、駆け出した。
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◆視点変更:三人称
そして、ここは西門。
ベレッタ、病み上がりのブドリ、ドルメン(冒険者ギルドマスター)、ウグイス(受付嬢)が、いる。
各々、攻撃態勢だ。
4人が、対峙している相手は、魔族デリンジャー。
それは魔族と呼ばれる生き物だった。
魔族とは、簡単にいえば、魔物の高性能版。力が強く、魔法も使えたりして、何より、会話できるほどの知能を持つことが、大きな特徴!
ベレッタが話しかける。
「おい! 言葉は通じるか?」
デリンジャー答える。やはり会話できる魔族だった。
「人間と話す気は、毛頭ない」
「オークの群れを、町にけしかけたのも、お前か?」
「話術で、某の気を散らそうとしても、ムダだ。某は、悪党を滅ぼすのみッ!」
飛びかかるデリンジャー。鋭利な爪で切り裂こうとするつもりだ。
それに対し、ベレッタは愛用のリボルバー(拳銃)をぶっ放す。――胴体に命中した。
しかし、相手は無傷……! ちょっと怯んだだけだ。
「ツネクヤシ、ンレグ、オノホ、ジンモイダ【フレイム】!!」
ウグイスは、赤黒く燃える塊を放った。フレイムはファイアより強い火属性魔法らしい。
デリンジャーは、とっさに両腕でガードする。そこへフレイムこと、巨大な炎の塊が、直撃、爆破。
爆炎と煙が収まると、そこには、またしても無傷なデリンジャーの姿。
「…………ぅ、うう……」
ウグイス、渾身の一撃も、ムダに終わったことを見せつけられ、早くも戦意を失いつつある。
次に飛びかかるは、大柄なオバサンこと、ドルメン。自慢の大剣を両手に、デリンジャーを一刀両断にする構えだ。
これは、たまらずといった具合か、さすがのデリンジャーも、大剣の一撃を避けた。
そして、デリンジャーは、ドルメンの横っ腹を、横薙ぎに切り裂いた、爪で。
倒れ込むドルメン。すかさず、ブドリが駆け寄り、傷に手を添え、回復魔法をかけている。
デリンジャーは、すでに、相手を見くびっている。
「どうやら、お前たちでは、某の足元にも及ばないようだ。某に、最後のあがきを、見せてみよッ」
回復中のドルメンに近づくデリンジャーを、ベレッタが体当たりする。が、反対に軽く弾かれてしまう始末。
ベレッタ、ブドリ、ドルメン、ウグイスは、必死に頭を働かせ、危機を脱する方法を探しているようだが、ただただ、冷や汗が垂れるばかり。
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そこへ、向こうから近づく一人の男。ミラッガーだ。
やはり、息も絶え絶えだった。とても戦力になりそうにない。
「みな、皆さ、ゼェツ、ぜぇ。助太刀に……ぜぇ、来ましたっ!」
すでに戦っていた4人の青ざめた顔は、喜色には転じなかった。
「ハーッ、やはり、この気配、魔族でしたか……」
ミラッガーの額に、新たな汗が垂れる。
ミラッガー、魔術の構えに入る。両手を合わせ、合掌のポーズをとり、詠唱をはじめた。
「ケツミラカ、クツミラカ、ケツキマ、クツキマ、……」
そうはさせない、と、デリンジャーは、詠唱中のミラッガーへ向かう。
が、そこをブドリに邪魔される。が、難なく、ブドリは蹴飛ばされてしまう。
基礎的な力が、違いすぎる。
今度はドルメンが、阻む。しかしドルメンの傷は完治していない。
同じように、ドルメンも一蹴しようとした、――その時!
向こうの方から、大きな爆発。そして爆風が、ここまでやってくる。そして、激しい揺れ。
「オークの群れの方からだ! いったい、あっちでは何があった!?」と、ベレッタ。
デリンジャーも突然のことに、呆気にとらわれている。
――ここだ!! 起死回生のチャンス!!!!
「今だぁぁっ!!! 受けてみよッ!! 【拘束魔法】!!!」
発動準備が完了したミラッガーは、敵のスキを見逃さず、魔法を放った。
デリンジャーの足元が、うねる、うねる! からみつく!
「ぬっ、これは……」
デリンジャー、足がままならぬ。
「今です! ギルドマスター! 今がチャンスです! やって!!」と、声は大きいウグイス。
ドルメン、大剣を持ち上げ、渾身の一撃を、デリンジャーに落とす。
――バチィン。
切断音ではない。
デリンジャーは、大剣の刃を、両手で挟んで止めた。すなわち、本物の真剣白刃取りだ。
本当に、真剣を、真剣白刃取りするのを見るのは、ここにいる全員、初めてのことかもしれない。
それくらい、真剣白刃取りを、現実に行うのは、尋常なことではない。
デリンジャーは、両手ではさみ持つ大剣を、力技で奪い取った。と、同時の流れで、大剣を、彼方 向こうへ放り捨てた。
デリンジャーは、未だ拘束魔法にかかったまま。にも関わらず、ゆっくりと、ゆっくりと、前進する。
「ぬ……ぬう…………」
うめくミラッガーは、今もなお、拘束魔法に力を注ぎ続けている。
デリンジャーに対し、ドルメンの攻撃、空手チョップ。
しかし、突き出した腕を、逆に引き込まれて、デリンジャーの拳を食らってしまう。
ドルメンの身体、宙に放り出され、そして、ドスンと落下。
……勝負にならない。
そのことを、ベレッタ、ウグイスは悟る。
ドルメンとブドリは気絶したのか、動かず。
ミラッガーも、ありったけの魔力を消費する勢いであり、もうじき、倒れる。
何より、魔族デリンジャーは、終始、余裕を持って動いており、全然本気を出していないことが伝わる。
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そこへもう一人、二人、やってきた。
背中に大人を背負って、駆ける少女、――ノロだった。そしてヤマトネ。
到着と同時に、ノロは、背負っていたものを、放る。
「ミラッガー……もいるね。慌てて駆け出して、モズクを取りに行ったようだが、いったい全体、どういうわけだい? こりゃあ?」
「ノロさん……、来ましたか……っ! こいつです。モズク? は後にしてください。マゾクを! 魔族を何とかしてください!」
ミラッガーが訴える。
ノロは、魔族デリンジャーを見すえる。
デリンジャーもノロを見て、ハッとする。
――デリンジャーの態度が急変。
数歩、ヨタヨタと後退し、それから、地にひれふした。
「…………」
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みんなは、地にひれふすデリンジャーを、用心深く、見ていた。
そうしているうちに、かなりの時間が過ぎた。
デリンジャーは、何かをやらかすのかもしれない。が、一向に、なにもしない。
あるいは、新手の死んだふり、近づいた瞬間を待ち構えているのかもしれない。
そんな中、ノロが、デリンジャーのそばまでゆく。
「気をつけてください!」とウグイス。
「ソイツは、並大抵の強さじゃねえぞっ」と、ベレッタ。
一方、デリンジャーは、よく見れば、わずかだが、小刻みに震えていた。
ノロは、デリンジャーの頭に手を乗せる。
「お、おい!」、ベレッタ、心配の声。
ノロは、デリンジャーの頭を撫でた。
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■要約
・西門では、魔族デリンジャーと、ベレッタ、ブドリ、ドルメン、ウグイスが苦戦していた。のちにミラッガーも加わるが苦戦。
・ノロが来たことで、デリンジャーは戦いをやめる。




