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きっと周りからはリア充爆発しろと思われているけど、本人たちは真面目に恋愛に悩んでいる2人

きっと周りからはリア充爆発しろと思われているけど、本人たちは真面目に恋愛で悩んでいる2人 大地サイド

作者: 瑞木美海

同じ名前の、三紀子さん視点の話とリンクしています。

そちらも読んで頂けると、より楽しんで頂けると思います。

「うるさい!!だまりなさい。私には門内三紀子って名前があるんだから!そんな、遥か彼方昔につけられたあだ名を呼ぶのは止めなさいと、いつも言っているでしょう?」


 また、三紀子さんに怒られてしまった。

 でも貴重な昼休みなのに、作ったお弁当を完食した瞬間、毎度毎度電池が切れたかのように意識を飛ばして眠られてしまうと、寂しくてしょうがない。

 せめて、お弁当についての批評位教えてもらえないと作り甲斐がないじゃないか。

 切実に!


「だって、三紀子さんって、眠っている姿はあんまり似ていないんだもの…僕としては起きて、バカね!って言って欲しいんですよ!」


 そんな、照れ隠しがまた口から飛び出してしまった……

 僕の名前は瑞木大地という。

 まぁ、毎回毎回、こんな照れ隠しを口にしてしまうものだ。

 彼女は、門内三紀子という大学の一年先輩で、なおかつ会社でも一年先輩だ。

 大学の時に一目惚れをしてからずっとおつきあいをしている。


 なぜ、大学のサークルやゼミまでならともかくとして、同じ会社でまで後輩をやっているかと言えば……

 僕が、三紀子さんとお付き合いしたいからだ。

 将来的には結婚する。他の誰にも渡すつもりはない。これは決定事項だ。異論は認めない。何か言った奴は黙らせる。今までもそうして来たし、今後もそれが変わる事などない。

 三紀子さんに拒絶されない限りにおいてはね…


「瑞木ぃ、いい加減に飽きなよ……アンタと私が大学で出会ってから、ずっとそれを言い続けてるけど、なんで飽きないのよ!」


 飽きる訳がない。

 もう、この会社に入社して10年で、大学の3年間を入れたら合計13年間、隣で三紀子さんを見続けて来たけど、目を開けている時はもちろん、目を閉じている時は更に美しさに眩暈がしそうになる。

 最近、眠っている三紀子さんに人前にかかわらず、口づけをしたくなる衝動に駆られて困っている位だ。

 そして、へたれな僕は、三紀子さんの部分を彼女にしてこう告げるんだ。


「彼女が僕の女神だからに決まってる。僕は彼女を愛しているからね。そして、一番彼女の魅力を引き出すのは、少し照れた状態でバカね!って言うセリフを言う時だからだ!」


 きっと、今は『なぜ、31歳の男が、そんな私が再放送でしか見たことのないアニメに詳しいんだ?確か、年代的には私が覚えているのが既に奇跡なのに……2つも年齢が下なのに…』なんて考えているはずだ。だって、前にもそう言っていたからね。

 だから、僕はあえてこう告げる。


「世の中には、記録媒体が色々と存在しているんですよ?兄や姉も好きだったんで、良くビデオで見てたんですよ」


 あははっ。怒ってるなぁ。

 『私の心を読むな!!』とか思ってるんだろうなぁ。

 目を瞑ってしまった。

 さっさと見開いて貰わないと、キスを我慢できそうにない!


「もちろん、貴女の後輩にして、未来の旦那様ですが?」


「いい加減にその妄想を止めろ!!そして、私の心の声を読むな!!」


「いやぁ怒った顔は今日も素敵です。そして、そこは『ばかね!!』一択でしょう?どれだけ布教すれば受け入れてくれるんです?いや、既に答えてくれたことがある訳ですから、もう一度僕を受け入れて下さいよ」


「お断りだ!!もう休憩の終わりだから、その蕩けそうな笑顔をどこかに仕舞い込んで仕事に戻れ!」

その割には嬉しそうに三紀子さんが微笑んでいるように見えますけどね。

いつもの、確認をしときましょうか…


「残念です…では、今日の晩御飯はどこにします?」


「ん……今日は日本酒の気分だから、モツ煮とレバ刺しが美味しいお店が良いなぁ」

三紀子さん、好きだよねレバ刺し。

僕も好きだけど、日本酒との組み合わせはどうもな。


「えーっ!またレバ刺しを肴に日本酒ですか?そこはビール一択だと思いますよ?モツ煮については同意しますが!」


「別に、お前に付き合えなどと言ってないんだから良いだろ?好きにビールを飲め!私は日本酒で楽しむからな!!」

また、寂しい事言うし…


「乾杯が寂しいじゃないですか…一緒に一杯目はビールにしましょうよ」


「仕方ねぇな…出汁巻きが旨いなら考えてやる…」

出汁巻きか…

その条件の店は2件思い当るけど…

今のこの時代に既にオープンしてたっけ?


「約束ですよ?絶対ですからね?」


「わかったから、いい加減仕事に戻れよ!」

仕事は後回しだな。

その店があるかどうか確認しないと、僕と三紀子さんの楽しい食事が害されてしまう。


「楽しみにしてて下さいね?」


「わかったから……」

その、蕩けるような笑顔のためなら仕事など!

後回しで十分です!!


 あぁ……嬉しいな、今日も三紀子さんと一緒の夕飯だ。

 それに、三紀子さんも嬉々として参加してくれるだし……

 幸せだな。


 大学2年の時から、延々繰り返されるこのやり取り……

 会った初日に、僕の好きなアニメの話に乗っかってくれた2つ年上の三紀子先輩の『ばかね!』の台詞で、何があっても絶対守ると心に誓い、血の滲む努力の結果何とか交際がスタート。

 前世の記憶を持って、自分自身に転生した僕は、前世での記憶を元に常に美味しい夕食を、自炊を含めて提供してきた。まぁ、勘定は割り勘だけどね。

 特に、前世では晩年まで1人で過ごしたこともあって、それなりの腕があると自負している。

 まぁ、素人レベルだけど…

 折角だから、前世の時に美味しかったなぁ、と感じた料理を三紀子さんと味わいたいと思って始めたこの夕食も、もう13年。

 1つの区切りをつけたいと思ってるんだけどなぁ。


 まぁ、既に三紀子さんの大学卒業とともに始めた同棲も、今年で10年。

 いつもの『ばかね!』で始まる布団の中の情事も10年か……

 二人で食べる毎朝の朝食が美味しくて色あせる事もないなぁ……


 なんで結婚出来ないのかって?


 毎回緊張して、結婚の申し込みの時は決まって、あの人のあだ名で呼んで申し込んでるからだと思われます。

 ……だって、いつも幸せそうに笑いながら、『私の名前は三紀子よ。そんな名前を呼ばれても承諾できないわ』って言われるので…

 布団の中だったらとっても喜んでくれるのに、と照れ隠しで言ってしまう僕も悪いんだ……


 でも、『それ以上言っちゃダメ』と言いながら手で口を塞ぎに来る三紀子さんの照れた姿を見るために、毎回そうしたい欲望に駆られる僕を責める事なんて、誰にも出来ないと思う。

 だって、女神としか呼べない位に可愛いんだから。

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