『黒幕』 やてん
私 明智一郎は、見た目は平凡だが、頭脳はピカイチな名探偵だ。事件があれば西へ東へと赴き、どんな難事件でも解決してきた。
そんな俺に一枚の招待状が届いた。それは、テレビでもお馴染みの富豪、大蔵 翔が無人島に建てた洋館の披露パーティーへの招待状だった。俺は一度この人が巻き込まれた事件解決の手助けをしたことがあったため、その縁で招待されたのだろう。
俺はパーティーに参加することにした。これがただの洋館の披露パーティーだったら、俺は参加する気はなかった。俺が気に入ったのは無人島でなおかつ洋館という点だ。探偵としてはこの言葉はとても魅力的だ。これらは推理小説では何らかの事件が起こるシチュエーションだ、ワクワクしないわけがない。人としては失格かも知れないが、こればっかりは探偵の性というものでしょうがない。まあ、本気で事件が起こるとは思ってはいない。
そんなわけでパーティー当日、ワクワクしながら無人島行きへの船に乗り込んだ。この時、本当に事件が起こるとは思いもしなかった。
船が無人島に着き、七人の男女が降り立った。彼らが降り立つと船は去って行った。彼らは招待状にあった、地図通りに進んでいくと時代を感じる古臭い洋館が建っていた。およそ、新しく建てたものとは思えなかった。
この時、その場にいた全員がその洋館から溢れ出るなんとも言えないプレッシャーを感じていた。
洋館の玄関口に人数分の洋館の間取り図と各人の部屋割り、そして洋館への入館許可が記された紙が張られていた。彼らは戸惑いつつも洋館の中に入っていった。そして、各人部屋に荷物を置きに行くことにし、荷物をおいた後は一度、一階の広間に集まることにした。部屋はベッドと机に椅子、少しの照明とインテリアという殺風景な部屋だった。机の上には大広間に来るようにと記された紙があった。招待客の中には未だに姿を見せず、紙で指示を出していく大蔵氏に不満を抱いているものもいた。
それからしばらくして、約束通り全員一階の広間に集まり、相談して大広間に行くことを決めた。同じ一階の西側の奥にその大広間がある。
大広間につくと一人の男の死体があった。
被害者はこのパーティーの主催者の大蔵 翔。彼の死体は大広間の真ん中に魅せつけるかのように置かれていた。見える限りでは死因は背中に刺さっていた包丁による刺殺であるとおもわれる。
その惨状を目撃した彼らの反応はそれぞれ違った。目の前の惨状に驚き固まっている人もいれば、まるで子どものように目をきらつかせている人、まるで何事もなかったような無表情を浮かべているものも居た。
そんな中、大柄の男性が「ここから出よう」と提案した。そんな彼の提案に厚化粧の女が「まずは救急への連絡が先でしょ」と冷たく反論し、年の若い女がその二人に対し携帯を見せつけ圏外であることを報せた。
「まずは、皆落ち着こうか」と老人の男性が貫録のある声でその場にいるものに問いかけた。「そうですよ、みなさん落ち着きましょう」と年の若そうな男性が返事をし、学校の制服を着ている女の子も顔を縦に振っていた。ただ一人、それらのやり取りを無視して、死体に近づいていく男がいた。その見た目が平凡な男は死体の様子をあらゆる角度から写真に撮り、死体の確認をし始めた。その光景にほかの人たちは唖然としていた。死体の確認が済んだのか男がほかの参加者たちに向けて言った。
――死んでいる……と。
この言葉によってこれが大蔵氏のドッキリショーではなくなったことが参加者たちは理解したのであった。
この発言の後、老人の提案により各々、落ち着くため一旦、部屋に戻ることとし、三十分後に一階の広場に集まることにした。
――三十分後……。
参加者たちが続々と一階の広間に集まっていった。しかし、平凡そうな男のみが姿を見せなかった。不審に思った彼らはその男の部屋を訪ねると、その男は椅子の上で息絶えていた。
男の死体を見た後、一階の広間に全員戻ることにした。誰もしゃべろうとせず、その冷たい静寂がその場に満ちていた。それをやぶったのは制服の女の子だった。
「まるで、小説のそして誰もいなくなったに似てるね」と言い、――まあでも、呼んだ人が死んでいるからちがうけど――と続けざまに言った。その発言に気が立ったのかさっきの沈黙のせいなのかはわからないが、大柄の男は怒気をはらんだ声で「そんなもんはどうでもいい、今この場に殺人鬼がいるかもしれないんだぞ」と全員が心の内に思っていることを制服の女の子にどなりつけた。
女の子はその怒気に体を縮ませた。その様子を見て、大柄な男は「すまん」と短く謝った。その中、年の若い女が飲み物を取ってくると告げ、広間を出ていった。
十数分経っても女が戻ってこない女を不審に思い、全員でキッチンに向かうと、水によって異様にお腹が膨らんだ、女の溺死体があった。
立て続けに参加芋の死体を見せ続けた、彼らはいっぱい、いっぱいになっていた、老人をのぞいて。老人は全員に向けて言った。
「私はあえて、女を見殺しにした」
その発言にその場にいた全員が凍り付いた。老人は続けていった。
「殺人鬼が私たちの中ではなく、外部犯で可能性もあった。私は殺人鬼が外部犯かどうか確認するために、彼女が単独行動することを許した。そしてわかっ……」
その時、急に停電が起きた。そして、銃声が二回鳴った。銃声の後、明かりがつくとそこには老人と女の子の死体があった。その光景に残った三人が唖然としていると、いきなり若い男性が苦しみだした。そして泡を吐きつつその場に倒れた。残った、大柄な男性と厚化粧の女はお互いを殺そうとした。理由は簡単だ、殺される前に殺すしかないのだから。そして、体格的に有利だった大柄な男が生き残った。男が生きて帰れると歓喜に満ちていると後ろから足跡がした。振り返るとそこには……。
俺は洋館が燃えゆく姿をみた。このパーティーには八人(●●)の招待客が呼ばれていた。八人目の男は自称名探偵の男だ。え、その男は冒頭にしか出なかったってちゃんと見てごらん、その男はいるはずだから。じゃあ、俺が誰だってそんなのは決まっている、犯人だよ、この作品の。