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再会

「おや、新しいお友達ですか?」

 森の入口に戻ってくると、ちょうど黒塔守がふたりを見つけて駆けてきました。

「はい、彼女はリーフです。あ、そうだ。よろしくね、リーフ」

「はじめまして、リーフさん。私のことは黒塔守と呼んでください」

「よろしく。それで? これからどうするのよ。もう日が暮れるわよ」

 森の中にいたために気づきませんでしたが、もう太陽は西に傾き、空は赤くなりはじめていました。

「すぐそこの町に行きます。そういえば、お弁当がありましたね。食べてしまったほうが良いですよ。馬で移動しますから、リーフさんは私の後ろにどうぞ」

「わかったわ。……ハル?」

「半分食べる?」

 ハルがパンを半分差し出すと、リーフはパンを見つめました。冷めていますが、柔らかいパンです。

「ありがと。それじゃ行きましょ」

 リーフが黒塔守の手を借りて馬の背に乗るのを見て、ハルは慌てて馬に飛び乗りました。黒塔守を見ると、彼はただうなずいて、馬を進めました。


「すっかり夜になってしまいましたね。宿は向こうです」

 昼間は暖かいクルイク地方でも、夜は冷えます。リーフは少し身震いしながら馬からおりました。

「初めてきたけど、夜も賑やかなのね。ハルがいたとこもそうなの?」

「ウルペースは旅人がよく訪れる町だから夜もやってるお店が多いんだよ。僕が住んでる町は夜は静かだよ」

 夜でも厚着した露天商が商品を並べ、町の人が行きかう町を、三人はしばらく見ていました。そして、黒塔守がふいに口を開きます。

「……この町はウルペースというんですね」

「え? はい。そうですけど……」

 はて、彼に見せた地図にはちゃんと「vulpes」と書いてあったと思うけど。ハルは不思議に思いました。ヴルペースだと思っていたでしょうか。

「谷より北のことは全く知らなくて……。途中にあった村の名前も教えてくれますか?」

「カーネ村のことですか?」

 黒塔守はなるほど、と言って地図にメモをします。隣でリーフもその地図を覗き込んでいます。

「どうもこっちの文字は慣れなくてだめです。さて、宿に行きましょうか」

「そうね、明日もはやいんでしょ? はやいとこ寝たほうがいいわ」

 三人は、町を眺めて話すことをやめて、宿屋までの道をただ黙って歩きました。

 ハルは、ケニスのことを考えていました。リーフを連れて行ってよかったんだろうか、どうして怖がられているんだろうか、と。でも、そんな考え事はリーフの声がかき消しました。

「見て、月が綺麗」

 見ると、まん丸い月が、空に大きく輝いています。家の窓から見る月よりも、なんだか大きく見えます。

「綺麗ですね。夜の女神様が唄っているのでしょうか」

「僕、ちょっと眠くなってきちゃった……」

 ハルは大きなあくびをひとつしました。黒塔守が少し笑って言います。

「そういえば夜の女神様は子守唄の神様でしたね」

「じゃあ宿まで走りましょ。歩きながら寝られたら困るわ」

「そ、そんなことしないよ! でもはやく行こうか」

 ハルとリーフは、夜の町を走り出しました。

2015 8/3 誤字修正

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