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三撃目 諦めと開き直りって根っこは同じな気がする

 月日は百代の過客だそうですが、お久しぶりですこんにちわ。

やっと土台作りの基礎練入れられるようになってwktkの止まらない、ヴェルヘルミナ(仮)六歳と六ヶ月です。


 この半年を地ならしに費やしたのは無駄ではなかったようで、大ウズラと兎は罠使わずに狩れるようになりましたが、さすがに猪はまだ狩れません。おのれ偶蹄目。

なので、中期目標は「猪を狩る」にしようと思います。

流石に六歳児にはまだ厳しいもんがあるので、あと一、二年はかかるんじゃないかと。

あー早く成長したい。猪鍋……ハム……ベーコン……ソーセージ……しょうが焼き……豚汁豚しゃぶ豚丼叉焼スペアリブ角煮……ッ!


 おっと失敬。

いやでもガッツリ肉喰いたくなる時ってあるじゃないですか。ねえ?


 それはさておき、朝起きて台所でパンと火種取ったら森に直行、のパターンに変化はないものの、基礎体力が上昇するにつれ、全力疾走マラソンでぶっ倒れるまで時間がかかるようになりました。

体力の増強は嬉しいけど朝飯が遠退くのは辛いんで、四ヶ月前から走り込みは内部魔力で負荷かけながらやってますが、いやコレがまたいい感じでして。

例えるなら重力1.25倍、標高三千メートルの環境下で、自分の体重の半分くらいの重り付けてる感じですが、その分、理想に至る土台が今着実に出来上がっているんだ、と実感できてたまらん上に、内部魔力の制御の練習にもなるから正しく一石二鳥。

お陰で内部魔力の制御に関しては、筋繊維一本単位から強化できそうな、つーか既にできてる変態的精密性を誇ります。そのうち細胞単位で強化できるんじゃないだろうか。

何より、その変態的な精密性により、脳神経の強化で思考の高速化による超加速にも成功しました。


 そう。加速装置です。加速装置です。重要なことなのでもう一度、加 速 装 置 で す 。

カッコいいですよね加速装置! 浪漫ですよね加速装置!

発動には「加速装置!」のキーワードと奥歯カチッのアクションが要りますが、加速装置つったらコレ以外に何があると言うのか。

違うと言うならベルサイユへいらっしゃい。(キリッ)


 ただ、本家モトネタの加速装置と違ってこちらは発動後の反動が半端ないので、当分は実用に向けての実験の繰り返しになりそうです。

いやもう見えちゃったから。むしろ渡りかけちゃったから三途の川的なモノを。ご先祖様に「百年早いわっ! くぉの未熟者めがぁっ!」と投げ返されましたこっち岸に。

いやマジで。ガチで。

身体強化しまくりながらすれば、どうにか一秒はイケるんじゃないかと、就寝前に実験してますが、毎回ご先祖様にお会いしては投げ返されてます。


 で、サヴィニャック家での扱いについては相変わらずですが、関わろうとしなけりゃいいだけの話なんで全力で放置してます。

私のスルースキルは百八まである!(嘘だけど)


 奥方様に気に入っていただくための使用人の自主的嫌がらせについては、圧倒的に立場の弱い被雇用者だし、何より貴族と平民の壁は、今は亡きベルリンの壁や南北三十八度線より越えられないもの。

しゃーないわな、とこちらも放置一択ですが、だからと言って好意があるかっつったらまたまたご冗談を、だけどさ。


 懸案事項は数少ない持ち物への被害ですが、それは五ヶ月前にうっかり解決しました。

なんちゃってジャーキーと干し果物、ビスコッティもどきの備蓄が順調に増える一方で、となると収納とゆー問題が発生しますよね?

今はまだいいけど、この先のこと考えたらどげんかせんといかんでしょう。

屋根裏部屋も安全とは言い切れないし、『ミヅガルヅ・エッダ』で使ってたインベントリ使えたらなー、と冗談のつもりで「インベントリ・オープン」と念じてみたらああた、ホントにインベントリウインドウ出てきやがりました。

ウインドウ出た瞬間、全力でパン粥噴いたし。いや鼻からポロロッカしてめっちゃ痛かった。

目と口からもイロイロ出ちゃって、人様に見せられないエラい顔晒してウインドウをガン見してる姿は、イロイロと致命的だったと思う。

女子力i(※1)でも流石にコレは人様に見せたらアカンだろ、と思うレベルでマジ酷かった。


 で、開いたウインドウには、『ミヅガルヅ・エッダ』でシャール・エスコットが手に入れたありとあらゆるアイテムがずらーっと並んでいる訳ですから、これまでの私の苦労は何だったのかとリアルにorzのポーズで崩れ落ちたのは言うまでもありません。

謝れ! 私に謝れ! とか軽くテンパりましたさ。

なんちゃってジャーキーとか干し果物とかビスコッティもどきとかせっせと作った私の労力って一体何だったんでしょうか……世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだよトンちくせう。


 けど、これで第一の目標、「十歳まで生き延びる」と、更にその後を生き延び続ける算段がついたんだから良しとしようと、どうにか自分を納得させました。

衣食住のうち、衣食の問題はこれで片付いたと言ってもいいし、住の問題も改善の目処がつきましたし。


 衣っつうか、装備は“こっち”にあってもおかしくないだろう一般的な武器なら各種揃ってるし、防具もある程誤魔化しの効くのが結構あるから、冒険者としての生活が軌道に乗るまでは、そっちに金かけずに済みます。

流石にガッチガチに付与エンチャントかけまくりのヤツや特殊素材製のやつ、それとは別の意味ではっちゃけてヤッチマッタナー、な漢の浪漫武器は出さないけど。漢の浪漫武器御三家は、パイルバンカーとドリルとロケットパンチだと思います。個人的に。あとス○カバーね。

特にククルカンのソロ撃破達成時のやつは、難易度に合わせて頭おかしい仕様になってるからなー……大概のフィールドボスをソロで討伐余裕です、な仕様とかどんな狂気の沙汰だ。


 食に関しては、企業コラボの調味料からスイーツまで種類も数も揃ってるし、ストレス解消と、フィールドモンスターをアナログ解体して手に入れた食材アイテムの消費を兼ねた“ロンリネス春の料理祭り”の発作のたびに作りまくった食品アイテムも山ほどある。

具体的には、陸自普通科連隊普通科中隊規模をあと十年は食わせられるくらい。ふっふっふ……圧倒的じゃないか、我が備蓄ぐんは……! な感じに。

唯一問題があるとすれば、日本人のソウルフードであるお米様がないことだが、じいさま印の完全無農薬有機栽培天日干し米に、物心つく前から慣れ親しんだ私の舌には、VRの米は米とは言えぬッ! 女将を呼べぃッ! なもので……ああでもこんなことなら贅沢言わんと備蓄しときゃよかった……ッ!


 住も、快適な眠りをひたすら追及した全天候・環境対応型寝袋があるから、宇宙空間や深海底でもない限り、屋根裏部屋でも湿地帯でも火山地帯でもツンドラでも氷原でも快適に過ごせます。

寝袋以外にも、宿に泊まる金がなくても快適な屋外生活を支えるテントに始まり、アウトドア用炊事道具や食器等々の各種アイテムが揃ってるから、野宿もバッチコイだし。


 とまあ、自立に向けての諸問題が一気に解決したお陰で時間的にも精神的にもある程度余裕ができまして、ヴェルヘルミナ(元)がヨハンナさんに教えてもらった“こっち”の言葉の読み書きの復習や、市川鷹ぜんせの記憶にある四則演算の練習にも時間を割けるようになりました。


 高級品である羊皮紙や、僻地(いや、見た限りサヴィニャック家の所領って、僻地だと思うんだわ)じゃ更に貴重な紙は使う訳にはいかないので、25センチ、ではなく25メル四方、厚さ3メルの板を、頭のもげた釘でがりがり引っかいちゃ削り、引っかいちゃ削りしながらやってます。あ、メルってのは長さの単位ね。1メル=1センチと思っていただきたい。

削り屑は、火種用の壺に集めておけばゴミにもならない。MOTTAINAIの精神で大切にしよう、限りある資源。

イベントリには、『ミヅガルヅ・エッダ』で作った羊皮紙と羽ペン、墨汁もどきが、ギボンの「ローマ帝国衰亡史」全巻1セットの写本を1グロス作っても余るほど積んであるし、ネタアイテム“ミヅガヅル学習帳”シリーズもフルコンプしてるけど、現状においてはそれらを使うメリットより、デメリットの方が大きいので、死蔵が決まっている。特に学習帳。


 そして、もうひとつ。

市川鷹がヴェルヘルミナ(元)を同化し吸収し、今の私であるヴェルヘルミナ(仮)になった日からの疑問について、考えることも。


 そもそも、私のスペックは六歳の女児のものとしては明らかに異質で異常だ。

市川鷹まえのわたしヴェルヘルミナいまのわたしになる前からそうであるなら、この世界の人間がすべからくハイスペックであるか、ヴェルヘルミナ(元)がチート性能と言うことになるが、記憶から判断する限り、ヴェルヘルミナ(元)のスペックは、全てにおいて極めて一般的かつ平均的な六歳の女児ものだった。

この劇的過ぎる魔改造ビフォアーアフターの原因は、やはり、市川鷹まえのわたしと言う異物の混入以外、考えられない。

イベントリの一件から、市川鷹にとっての分身とも言える『ミヅガルヅ・エッダ』のPCであった“仮想世界における市川鷹”もまた、彼女に上書きされていると推測できた。

いや、“現実世界における市川鷹”の記憶と“仮想世界における市川鷹”のスペックを持つ、“現実世界における市川鷹”+“仮想世界における市川鷹”なる存在が上書きされた、と言うべきか。


 “現実世界における市川鷹”の記憶と、“仮想世界における市川鷹”のスペックを持つ異物が、もともとのヴェルヘルミナに押し込められた結果、本来この世界において、異母妹をいびり倒す悪役になるはずであったヴェルヘルミナの個性が消し飛んでしまったとしたら?

そこに上書きされた、“現実世界における市川鷹”+“仮想世界における市川鷹”と言う中身に肉体うつわが引っ張られ、そうやって底上げされた肉体が中身のスペックを反映しやすくなり……と言った相互作用の結果が、今のヴェルヘルミナなのではないだろうか。

とすれば、私が本来のヴェルヘルミナを殺したようなものである。


 だが、そのことについて、申し訳ないことをしたなと、その程度にしか感じないのもまた事実である。

もうちょっとこう、罪悪感とかそういうの感じるかと思ったんだけど、かなり平然としてる自分に、ちょっと吃驚してる。

VRMMOの中でではあっても、一度は至った理想の境地さいきょう、その境地さいきょうに現実として到達し得る――その考えに至って、頭のネジが二、三本吹っ飛んだとしか思えないが、この可能性に揺るがずにいられるほど、私は出来た人間じゃない。


 現実と仮想、ふたつの市川鷹わたしに食い潰された本来のヴェルヘルミナには気の毒なことをしたが、詫びて済むのは所詮こちらの気持ちだけだ。

なら、傲慢だろうが何だろうが、私は私の欲を押し通す。

押し通して、到ってみせようではないか。

※1 iとは二乗してマイナス1になる虚数です。つまり主人公の女子力は実数として存在しないんだよ!<ナンダッテー!



と、うっすらシリアス風味混じりましたが、次回から元の路線に戻ります。

……ところで、育てゲーにアイドルやプリンセスがあるなら戦闘狂ウォーモンガーがあってもいいと思うんだ……。

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