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五狩目 独り立ちしないと負けかなって思ってるから。

 太陽系からサワディーカー☆(キラッ) 地色に戻って解放感に浸ってるうちに、ツァスタバくんはっさいは十歳になりました。

 光陰矢のごとしってホントですね! たった二年で会話能力と表情筋の自由度が、飛躍的に上昇しました。

頑張った……頑張ったよ私……超頑張ったよ……!

 前は☆戦争のパ○ワンのブレイド的に部分的に伸ばしてた髪だけど、まさかの時の縫合用によし、専用魔道具マジックアイテムの触媒? によし(アストラのおっさん談)だそうなので、居候決まってから伸ばし始めましたが、妙に伸びが速くて、二年で五十メル近くまでくるくるもっさり伸びました。

 正直前世含めてここまで伸ばしたことないから、途中めっさ切りたくなって転げ回ったけどね。うぉおおおお髪切りてぇえええええ! って。

今はだいぶ慣れて、首の後ろで一纏めに括ってますが、癖っ毛つーか、巻き毛っぽいです。もふくるー。

 髪もですが、身長もすくすくにょきにょき、元気に育って既に百六十に迫るイキオイ出ちゃってます。

十歳女児の身長じゃねーぞ。そのうちうなじ削ぎ落とされるんではなかろーか。何それ怖い。

 あと、最近とみに顕著になったのが、骨格の男女比率のオカシさです。

何かね、♂7:♀3くらいになってるんですわ。稲川さん家のJUNJIさんもビックリの恐怖体験ですよ。気付いた瞬間は催眠術とかそんなチャチなもんじゃない、もっと恐ろしいものの(略)でしたねー。

お陰で、公衆浴場でもMAPPAになってついてないことを示さないと、XX染色体だって思われなくなりつつあります。

 で、「骨」格ってことは頭蓋「骨」も入る訳で……だからなのか、顔立ちもM仕様に傾きつつある訳で……。

最近どうにか、そんな自分の顔にもようやく慣れてきました。

自分の顔でSAN値削られるとか、どういうことなの。

 ……そ、それはそれとして、黒い入り江の黄色い旗っぽく、娼婦フッカー殺し屋ジョブキラーがゴロッゴロしてそうで、かつ、マジモンの傭兵マーシーが入り浸るいかにもな酒場兼宿屋で、最初は水汲み薪割り皿洗い掃除洗濯、いわゆる下働きしてたんですがね。

 それが、呑みに来たローナーのおっさんが、適当でいいから何か喰うもん頼む、つったのを、コスミのじっちゃ――居候先のロークさんのことだけど――がこっちに丸投げぶちかましてきたもんで、仕方なく適当に、厨房にあったラム肉叩いて適当に香辛料ぶっこんで肉団子っぽくして焼いて、適当にイタリアントマトっぽいトマトとニンニク潰したトマトソースもどきにぶっこんで煮込んで、ベジタブルスティックとバーニャカウダもどき、チーズの盛り合わせ、お手軽なんちゃってガーリックトーストと一緒に出したところ、酒の肴やちょっとしたメシ物まで担当することになっちゃいまして。

いいのかそれで。本当にいいのかそれでコスミのじっちゃよ。

 んで、それ以外だと、副王都こっちでそれぞれ、自分のねぐらに散ってるおっさんたちへの業務連絡(無償)ほか、カビと埃と酒瓶のすくつと化したドライゼのおっさんの部屋との戦闘(有償)とか、やっぱり腐海と化したステアーのおっさんの部屋の薙ぎ払い(有償)、ローナーのおっさんの飯の配達(有償)、シグのおっさんからお店のチャンネーへの付け届け(?)の配達(有償)、アストラのおっさんの実験助手モルモット(ボランティアとして参加)、サコーの父ちゃんによる正しい児童教育(ボランティアとして参加)、時々おっさんたちが呑みに来るついでに持ってくる、手配書回ってる賞金首の換金手続き代行(有償)とかで小銭稼いだり。

盗品密売グループのアジトにスネークしたり、浮浪児ストリートチルドレン使った麻薬の製造販売組織に引き込み役としてお邪魔したり、どっかの保養地の人間オークションで見たことあるイケメンのおにーさんにアシスタントとしてレンタルされて、金と権力にもの言わせて公的に「おまわりさんこいつです」できなかったゲイシーな方のジョン・ウェイン系連続殺人犯シリアルキラー、趣味:エド・ゲイン派家具コレクションの金持ちボンボン釣りしたりで、忙しくも充実した二年間を過ごしました。

 いやー、あの時は正直引いた。マジ引いた。心のドン底から引いた。皮革職人も家具職人も鬱極まって自殺に走るってもんですよ。そんな家具もんは推理小説の中だけで十分だっつーの。

 ドン引きし過ぎて、ついうっかり金持ちボンボンの喉笛かっさばいちゃったけど、あれは正当防衛だから。

変態死すべし慈悲はない。ロリペドショタリョナのおにちく性癖四重苦の存在していい空間は、いつのどこの世界線にも、ニュートリノ一個分も存在しません。

え? いやだなー青玉丹使ってないのにショタ認定された腹いせなんかじゃありませんよ? ええ、断じて違うとも!

 つーか、賞金首の換金手続き代行はまだしも、よくよく考えたらパシリじゃねーだろ的なことの方が多かった気がするけど、それはきっと気のせいだから大丈夫だ問題ない。

これはパシリ、いいね?

 んでまあ、二年間、住と食はコスミのじっちゃに、小銭稼ぎはドライゼのおっさん他のお世話になりつつ、非常に刺激的で充実した日々を過ごしていた訳ですが、無事十歳になったので、これを機に独り立ちしよう! と。

朝起きて顔洗いながら、そう決めた訳です。

 なので、次の「仕事」の打ち合わせで集まってたおっさんたちに、晩飯出すついでに言ってみました。


「あ、そだ。俺ギルド入るしゅうしょくするから、下宿ここ出て独り暮らしすっから」


 と。

ちなみにメニューは、これから呑みに雪崩れ込むことを予想して、肝機能サポート重視のメニューです。

 カレーっぽくなるよう配合を超頑張ったミックススパイスで仕上げたしじみとポロネギのスープに、アーティチョークのディップを塗ったバゲット、ニンニクとバジルを利かせた豚バラのトマト煮込み、クルミとボイルザリガニ、ブロッコリーのブルーチーズドレッシングのサラダを中心に、タウリンたっぷりめで攻めてみた。

本当はエビが欲しかったんだけど、内陸で海産物は難しいんですよねー。しじみも淡水しじみだし。


「まだ宵の口だし、エールでいいよな? ハイ決まり」


 よっこいせ、と大皿と深鉢をどかどか並べる。

基本、どかっと盛って出して、後は喰う分だけ取り分けて喰ってもらう方式ですんで、うちは。

 次はエールを運ばねば。

ここのエールは黒スタウトで、ちょびっと舐めた感じでは、苦みと酸味は強いけどいがらっぽさはなく、香りもいい。

真っ赤に焼けた暖炉の火かき棒をジョッキにつっこんで、じゅっとアルコール飛ばしたホットエールは、あれでなかなか結構美味かった。

 コスミのじっちゃが、なみなみと黒スタウトを注いだジョッキを片手で三つずつ持ち、六つを一気に運ぶ。

いやー、これができるようになって、一気に効率上がりました。ビバ成長。

 キツいやつはある程度飯喰ってからになるだろうから、肴はえーっと、何があったっけ。ま、適当でいいや、適当で。

 そこそこ癖ののないホワイトチェダーっぽいチーズと生ハムを適当にカットして、ローストして軽く塩を振ったナッツ類と一緒に皿にのっけて、蒸留酒の瓶の隣に置いておく。

牡蠣のオイル漬けとかあればよかったんだけど、内陸で海産物は難しいんです。


「そんじゃ俺、明日ギルドだから上がるわー。コスミのじっちゃー、後頼むな」


 ソムリエエプロン風の前掛けを外し、コスミのじっちゃに声をかけ、なし崩しにしようと思ってたんですが、甘うございました。


「お父さんそれ初耳なんだけどどういうことかなちょっとお話しようか」


 サコーの父ちゃんに首根っこ掴まれて、強制連行です。

いや、そこは息子の成長を喜びつつ、巣立ちを祝おうよ。つか怖い怖い顔怖い超怖い。

笑顔がこえーよサコーの父ちゃん。


「いや、言ってないし。つか、思い付いたの今朝だし」

「思い付いたって……そういうことはもっとちゃんと考えろ! そんな行き当たりばったりでこの先どうする!」

「どうにかなるんじゃね?」


 だってほら、割と先行き不安な商売でここまで皆様きちゃってんじゃん? と視線で問えば、ぐう正論的に答えに詰まるサコーの父ちゃん。

生きた見本がこんだけ揃ってちゃ、反論できませんよねー。

 そんな私とサコーの父ちゃんとのやりとりに、ドライゼのおっさんがぶふっと噴き出し、それにローナーのおっさんがつられ、ピタ○ラスイッチ的に伝播していき、父ちゃん除く全員が大笑いしております。


「お前の負けだな、サコー」


 肩を揺らして笑っているローナーのおっさんを、ギロリと一睨みしたサコーの父ちゃんは、仕方ないと言うように大きく息をつく。

 そこにすかさず、


「……けどまあ、ここで放り出すのも寝覚めが悪ぃ。この先一本立ちしてやってけるか、ひとつ試してみるってのはどうだ?」


 入り込んできたドライゼのおっさんの言葉と、見るからに腹に何かありますなイイ笑顔。

……あ、これあかんやつや。

めくるめく蘇る既視感デジャヴ、まわれまーわれそーおまーとー。


「拒否権を発動します」

「そんなもんはねえ」

「……ですよねー」


 今度はどんなムチャブリされるんでしょうか。

お笑いウルト○クイズ? 吉○の若手?

あ、そんなん生ぬるいですかそうですか。


「で? 俺は、何をすればいい?」


 そうとなったら、開き直るしかあるまい。

ここ最近体動かしてないし、どうせやるなら思い切りやれるのがいいしね。

 年々、体は着実に出来上がっていくけど、今の自分がどの程度なのか。

どこまでできるのか。どこまでできないのか。

 それを実地で確かめられるんだなぁ、と思うと、されるのがムチャブリであっても、ついつい口元が緩んでしまう。

 上がる口角が作る笑みに、サコーの父ちゃんが沈痛な面持ちで頭を抱えてるのが見えたけど、こればっかりは死んでも治らなかった性分だから仕方ない。

 卒業試験に挑む学生の気分で、空いてる席に腰を下ろす。

さて、どんな話が飛び出すことやら。

非常に――楽しみだ。

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