【4】
「気を取り直して!敵、倒しに行きますか…ま、大丈夫だよね。お兄ちゃんいるし、ここらへん、弱いし…多分…」
舞姫が嫌そうに言う。
「あああああ、もう!元気だせ!少し金貯めたらまた戻ってくっから!」
つい叫んでしまう。俺、この変な雰囲気嫌いなんだ。
「霊夜君…怖くないんですか?誰よりも元気ですけど…」
俺は乃奈の言葉で困る。
「怖くないって言ったら嘘になるけどな。怖がってたら生きていけないぞ?はい。この話終わり。さっさといくぞ?」
なにが面白いのかわからないが、舞姫が急に笑いだした。それにつられ、皆が笑いだす。
ま、普段俺はこんなこと言わないからな。
皆の笑いが収まってきたころ声をかけられた。
「あの…すいません…」
声のする方向を向くと、舞姫より少し年下の男の子と女の子がいた。
女の子は泣いていた。
「僕、柚也っていうんですけど…ここで生きていく自信なくって…あの…仲間…いれてもらえませんか?…」
女の子を守るように、柚也という男の子が言った。
女の子も泣きながら言った。
「私…柚愛です…お母さんにちょっと借りただけなんですけど…こんなことに…。怖いんです…外にでる勇気なんて無くて…でもお金貯めないといけなくて…それだったらって仲間探そう…ってことになったとき、皆さんの楽しそうな声が聞こえたんです。皆さんだったらPKの可能性、無いかなって思ったんですけど…だめですか…?」
ここはリーダーの舞姫にまかせる。
舞姫の決断ははやかった。
「いいよ。一緒に行こうか。私達も、さっきまで泣いてたんだ。2人の気持ち、すっごく分かる。がんばろ。絶対元の世界、戻れるから。だから…泣かないで。皆と笑お?」
なんてしっかりした妹なんだろうとおもっていると、舞姫のに睨まれた。
「お兄ちゃんが始めに声かけられたんだから、お兄ちゃんが答えてよ。」
それを言われると…
「ま、いいよ。過ぎたことだし。でも、お兄ちゃん死んだら、ぜっっったい許さないから!」
舞姫が頬を膨らませながらいった。
「さっきからずっと話してますが…お金貯め、いきませんか?お腹空いてきましたし…」
蒼がふとそんなことを言う。
時間を見ると…
「7時…か。そろそろいくかぁ。」
皆が一斉に…柚愛以外一斉に立った。
「柚愛、大丈夫だ。俺が守ってやるから。皆においてかれるぞ?」
ようやく柚愛が立ったころには8時になっていた。
「助けて…くださいね。」
柚愛はそう言うと、俺の腕をギュッとつかんだ。
「柚愛、回復しろ!乃奈、もっと後ろに下がれ!」
敵と戦うのは思ったより大変だった。
現実と身長を変えているらしい蒼は動きが鈍く、乃奈は攻撃を外す。舞姫は魔法の撃ち方が分からないらしく、杖でずっと殴っている。
意外と柚愛と柚也は特に問題はなく戦っている。ちなみに、柚愛と柚也は片手剣を使っている。
「皆さがれ!後は俺がやる!」
指示を出した瞬間、俺は誰よりもはやく走り出す。
敵の体力はあと数センチ。1人でも問題ない。
俺は敵までの数メートルを一気に縮め、攻撃をする。自分でもどんな動きをしているのかいまいちよく分からなかった。
数十回攻撃すると、敵のHPはあっという間になくなり、光の結晶となって消えた。
「ふぅ…今日は、これくらいにする?お兄ちゃん。」
息を切らせながら聞いてきた舞姫に返事をする。
「あぁ、そうだな。2人もつかれたみたいだし。」
と言って、柚愛と柚也の頭に手を乗せる。
町までの距離は近い。もう敵と遭遇せず帰れるだろう。
「…おいしい!」
乃奈が一口ご飯を食べると、大声を上げた。
「ま、こんなもんだよ。おかわりあるからいっぱい食えよ!」
今日の晩飯は俺が作った、朱那家特性カレーだった。
「しばらく食べてなかったねぇ、これ。ゲームの中でも食べれるとは思わなかったよー。現実で食べたのより美味しい気がするけどきのせいかな?」
ゲームの中だから食材が新鮮なのかな?または…
「…しばらく作ってなかったから作り方を忘れ、余計なものを入れなかったからうまい…のかな…」
これからは余計なもの入れないようにしよう、うん。
あ、でもいれなかったら朱那家特性カレーじゃなくなるじゃん。
「まぁ、いいじゃないですか!美味しいんですし!」
柚也が精一杯のフォローをしてくれる。優しいなぁ…
「霊夜さん、お料理上手なんですね…お腹いっぱいになるまで食べちゃいました!」
柚愛が嬉しい感想をいってくれる。
こんなこと毎日いわれたら幸せだなぁ…俺。
霊夜君って料理できたんですねー