第十四話:次元を超えた「最強」の悩み相談
神として認定され、ダイヤモンド輝く宮殿(元・石造り神殿)の主となった凛。
彼のもとには日々、世界中から供え物のジャガイモやイチゴが届き、紅とクラリスが「どちらが凛様の隣でティータイムを共にするか」という、神殿を半壊させるレベルの口論を繰り広げるのが日常となっていました。
そんなある日。
凛の座る玉座の目の前で、空間がバリバリと音を立てて裂けました。
「わわっ!? 窓が割れた……!? 直さなきゃ!」
慌てる凛の前に、裂け目から一人の青年が転がり込んできました。
漆黒の鎧を纏い、背中には星を砕くと言われる大剣。しかし、その表情は……凛に負けず劣らず、絶望に満ちていました。
「……ここか。別の世界の『神』が降臨したという場所は」
青年はガバッと凛の前にひれ伏しました。
「お願いだ……教えてくれ! どうすれば、村の家を壊さずにドアを開けられるんだ!? 力を抜いたつもりでも、ドアノブが粉々になるんだ! このままじゃ、俺は故郷に帰れない!!」
最強同士の「次元を超えた」共鳴
青年の名は、ハルト。
彼もまた、異世界で魔王を倒した際、手違いで「全ステータスをカウンターストップ(限界突破)」させてしまった、哀れな最強勇者でした。
「……分かります。その気持ち、痛いほど分かります……!」
凛は、ハルトの手を(手袋越しに、優しく、慎重に)握りました。
「僕も、握手しただけで将軍さんを飛ばしちゃったり、クワを振るだけで大地を割っちゃったり……。本当に、普通に生きるのって難しいですよね」
「……っ! 分かってくれるか! 俺なんて、この前寝返りを打っただけで、住んでいた宿屋が更地になったんだぞ!」
「僕は、井戸を掃除しようとしたら、不老不死の聖水が噴き出しました……」
二人の周囲には、次元の壁をも溶かすような、深い「最強の哀愁」が漂い始めました。
凛の「無自覚」なアドバイス
「ハルトさん、僕が気づいたコツを教えますね。……それは、**『自分は綿毛よりも軽い』**と思い込むことです!」
凛は立ち上がり、空中をふわふわと歩いて見せました。
(実際はレベル無限の平衡感覚と重力操作なのですが、本人は『思い込み』だと思っています)
「あと、ドアを開ける時は、『これは壊れやすい卵なんだ』って自分に言い聞かせるんです。僕も、紅の卵を抱えた時は、必死にそう思いました」
「……卵。そうか、俺はいつも『ドアを引く』ことばかり考えていた。……『卵を慈しむ』。それが、極意なのか!」
ハルトは開眼しました。
彼は、凛の体から漏れ出る「無限の優しさ(という名の強制バフ)」を浴びることで、荒れ狂っていた自らの魔力が、少しだけ静まり返るのを感じたのです。
そして、異世界交流会へ
「よし、ハルトさん! 悩んでいてもお腹は空きます。僕の村(魔界)で採れたイチゴを食べませんか? これ、魔王さんも泣いて喜んだんですよ」
「……あ、ああ。いただくよ。……なんだ、このイチゴ。一口食べただけで、俺の鎧の呪いが解けていく……」
二人の最強が仲良くイチゴを食べている光景を、紅と聖女、そして勇者レオンが遠巻きに眺めていました。
「……紅。あの黒い男、焼き払うべきでしょうか? 凛様の『お悩み相談室』の予約は、私が三ヶ月先まで埋めておいたはずですが」
「……待ちさない、クラリス。あの男からは、あるじと同じ『バケモノ(失礼)』の臭いがするわ。今は静観しておきましょう」
「(……次元を超えて、師匠の被害者……いや、信者が増えたな)」
女神の独り言
「凛……。ついに世界どころか、マルチバース(並行世界)の救済まで始めましたね。あなたのその『天然なカウンセリング』で、どれだけの最強たちが救われるのか……。まあ、イチゴを食べさせているだけのように見えますけどね」
「ハルトさん、今度は僕がハルトさんの世界に遊びに行ってもいいですか? 困ってる人がいたら、僕もお手伝いします!」
「……ああ。君が来てくれたら、俺の世界の魔王も、きっとジャガイモ農家に転職するだろうな」
こうして凛の「お助け」は、ついに世界の壁を越えようとしていました。




