第十三話:神様決定戦?~僕はただの村人Aです~
魔界が「甘いイチゴの香りが漂う観光地」へと変貌を遂げたことで、世界は未曾有のパニックに陥りました。
「敵が……敵がいない!? 我が帝国の誇る十万の精鋭、明日から何をすればいいのだ!」
「魔族と戦うための聖騎士団が、全員魔界へ『イチゴ狩り』に出かけて戻ってきません!」
困り果てた各国の王と、宗教の指導者たちは、ついに一つの結論に達しました。
「あの少年(凛)を公式に『世界唯一神』として認定し、その庇護下に入ることで世界秩序を再構築しよう」
かくして、世界最高峰の会議「セントラル・シンポジウム」が開催されることになったのです。
凛、強制連行される
「ええっ!? 会議? 僕が? 何かの間違いじゃないかな……」
凛は、聖女クラリスと勇者レオンに両脇を抱えられ、豪華な馬車へと押し込まれていました。
「凛様、間違いなどありませんわ。今や世界の平和は、あなたの掌の上にあるのです」
「師匠、覚悟を決めてくれ。あんたが『神』だと認められないと、失業した兵士たちが暴動を起こしかねないんだ!」
「そんな大げさな……。あ、紅、助けて!」
凛が助けを求めると、紅は凛の膝の上で幸せそうに喉を鳴らして答えました。
「あるじ。大丈夫です。もし話がこじれたら、紅がその会場ごと、あるじを讃える巨大な黄金像に変えて差し上げますから」
「余計にこじれるから、それだけはやめて!!」
神殿での「神格認定試験」
会場となる聖都の大神殿には、各国の王、賢者、大司教たちが勢揃いしていました。
壇上に立たされた凛は、あまりの視線の数にガクガクと震えていました。
「……えーっと、初めまして。ヒューマンの凛です。特技は……あ、最近はクワを振るのが少し得意です」
会場が静まり返りました。
(……クワ? あれは地脈を穿つ聖具のことか!?)
(……特技がクワ……。なんと謙虚な神なのだ……!)
「では、凛様。あなたが神である証として、この『真実の天秤』に触れていただけますか? この天秤は、魂の重さを測り、偽りがあれば即座に砕け散る神具です」
「は、はい。触るだけなら……」
凛が、おそるおそる天秤に指先で触れました。
(どうか、僕がただの人間だって証明されますように。神様なんて、責任重大すぎます!)
パリンッッ!!! ガシャァァァン!!!
「あ……」
凛が触れた瞬間、数千年の歴史を誇る神具『真実の天秤』は、凛の**『無限(\infty)』**の魂の質量に耐えきれず、粉微塵どころか原子レベルで分解され、消滅しました。
「……壊しちゃった。ご、ごめんなさい! 弁償します!」
凛が慌てて手を振ると、その衝撃波(優しいそよ風)が神殿全体を包み込みました。
するとどうでしょう。古びた石造りの神殿が、凛の魔力に当てられて、一瞬にして純金とダイヤモンドの宮殿へと作り変えられてしまったのです。
満場一致の「神」認定
会場にいた全員が、その場でひれ伏しました。
「神具を無に帰し、一瞬で聖域を再構築された……!」
「ああ……なんという御業。もはや疑う余地はない。……凛様こそ、この世を統べる唯一神である!」
「「「凛様万歳!! 凛様万歳!!」」」
「ち、違うんです! 今のは手が滑っただけで……! 勇者さん、助けて!」
「師匠、諦めてくれ。俺も今、あんたの後光で視力を失いそうなんだ」
凛は絶望しました。
(女神様……。僕、ただの弱い人間として、ひっそり人を助けたかっただけなのに……。どうしてこうなっちゃうんですか!?)
女神の独り言
「凛……。あなたが『弁償』しようとして出した力が、この国の国家予算の1000年分を超えましたよ。おめでとうございます、今日からあなたは公式に『神』です。……あ、でも安心してください。あなたがどれだけ『神』と呼ばれても、私はあなたの『溜息』を、特等席で聞き続けてあげますから」
「みんな、立ってください! 僕、神様じゃなくて、ただの……うぅ、とりあえず、みんなでお茶でも飲みませんか?」
凛が差し出したのは、魔界特産のイチゴを煮詰めた「神の紅茶」。
一口飲んだ王たちは、あまりの多幸感に政治を忘れ、世界はさらに「平和(という名のゆるふわ空間)」へと加速していくのでした。




