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第十話:食いしん坊のドワーフと、大地の恵み

第十話:食いしん坊のドワーフと、大地の恵み

「食べ物が……もう、一粒の麦も残っておらんのじゃ……」

深い谷底にあるドワーフの王国『ガンドール』。本来なら鍛冶の槌音が響き渡るはずのその国は、今や静まり返っていました。原因は、数年前から続く不気味な「地脈の凍結」。どんなに耕しても土は鉄のように硬く、作物が一切育たなくなっていたのです。

「大変だ……みんな、お腹を空かせて元気がないよ。紅、クラリスさん、レオンさん、何とかしてあげよう!」

凛は、ガリガリに痩せ細ったドワーフの子供たちを見て、胸を痛めていました。

最強パーティーの「役割分担」

「あるじ、ご安心を。この国を覆う呪いの源を、紅が焼き尽くしてまいります。……一瞬で、山ごと」

「待ちなさい紅! 凛様が望まれるのは破壊ではありませんわ。私が聖なる祈りで地脈を浄化し、ついでに私の信徒としてドワーフたちを教化いたします」

「……俺は、その、畑でも耕せばいいのか? 聖剣エクス・カリバーンの切れ味なら、硬い地面もいけるはずだ」

口々に物騒な解決策を提案する仲間に、凛は慌てて首を振ります。

「みんな、落ち着いて! 暴力や魔法じゃなくて……そうだ、まずは**『みんなで耕す』**ところから始めよう。僕も、非力なりに頑張るから!」

凛の「全力」のクワ振りが引き起こす奇跡

凛は、ドワーフの村長から借りた、ボロボロで錆びついたクワを手に取りました。

「よいしょ、……よいしょ!」

凛が「精一杯の力」を込めて大地を耕そうとした瞬間――。

ズドドドドドドォォォォォン!!!

「ひ、ひえぇぇ!?」

凛が軽くクワを地面に突き立てただけで、鉄のように硬かった大地は、まるで豆腐のように柔らかく爆ぜました。それどころか、一振りごとに地脈の奥深くに眠っていた冷気の呪いが粉々に粉砕され、代わりに凛の『無限』の生命力が大地へと流れ込んでいきます。

「……あ、あれ? このクワ、すごく使いやすいね! 錆びてるのに、地面が勝手に避けてくれるみたいだ」

凛は気づきません。彼の背後で、クワが凛の魔力に耐えきれず、**神話級の遺物アーティファクト**へと進化し、金色に輝き始めていることに。

さらには、凛が額から拭った一滴の汗が地面に落ちた瞬間。

ザザザザザザァァァッ!!

「な……なんだと!? 芽が出た……!? 植えてもいない種が、一瞬で芽吹き、実を結んだぞ!?」

ドワーフたちが驚愕の声を上げました。

凛の歩いた後には、見たこともないほど巨大で瑞々しいジャガイモや麦が、猛スピードで成長し、一瞬で収穫期を迎えていたのです。

ドワーフ王、震える

「……お、おい。あの少年、何者だ?」

奥から現れたドワーフの王が、腰を抜かして震えていました。

「地脈を凍らせていたのは、太古の氷竜の呪いだったはず……。それを、あやつは『クワ遊び』のついでに、物理的に粉砕しよったぞ……!」

「王様! 僕、少しだけ土を柔らかくしておきました。これでみんな、お腹いっぱい食べられるかな?」

凛は、山のように実ったジャガイモを両手いっぱいに抱えて、屈託のない笑顔で駆け寄ってきました。

「……あ、ああ。救世主殿……。……いや、『農耕の神』よ……!」

ドワーフたちは一斉に、畑(という名の神殿)に向かってひれ伏しました。

女神の独り言

「凛……。あなたが耕したのは畑ではなく、この大陸の構造そのものです。あと、その手に持っているクワ、もう国宝レベルの聖道具になっていますから、返してもドワーフたちは畏れ多くて使えませんよ……」

「えへへ、みんな喜んでくれてよかったね、紅! ……あれ、紅、何してるの?」

「あるじのために、このジャガイモを最高の火力で蒸し上げているところです」

「クラリスは!? クラリスは何をしてるの!?」

「ジャガイモの一個一個に、凛様の聖印を刻んで『聖なる芋』としてブランド化する準備をしておりますわ」

「……俺は、皮を剥けばいいのか?」

こうして、ドワーフの国は救われ、凛のパーティーには「美味しいジャガイモ料理」が加わりました。

しかし、この「一晩で砂漠を森に変え、凍土を楽園に変える少年」の噂は、ついに海の向こうの『魔王城』にまで届いてしまいます……。

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