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リア充の帰宅物語  作者: 絶望的メガネ
第一章 村と魔物と眼
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休暇のひととき

透は昨日の調子で四日間の訓練を終えた。

今日は休日だ。

一週間や一ヶ月という概念はあるらしい。

古来より東洋の人間によって作られたとか。

東洋の文化を聞く限り日本人が既にここに来ている可能性が高い。

海の底にここに入る為の裂け目があるはずなのに何故元の世界の人がここに来ている痕跡があるのか。

いやここの人間が見つけた可能性もあるのか。

まぁそんなことはどうでも良い。

俺はアラヴァルと共にエルフの商店街に出た。


商店街とはいえ小規模な村の商店街だ。

さほど広くは無いが活気に溢れていた。

入った瞬間にその活気に包まれてなんとなく心が躍った。

色々な売店が立ち並んでいた。

店主達は俺を見た途端少し怪訝な目をしていたが、すぐにそれは他の客に逸らされた。

人間が珍しいのだろう。

俺には耳以外では判別出来ないがエルフには出来るのでだろうか。

今度アラヴァルに聞いてみることにする。


そんなことより俺は朝飯をまだ食べていない。

アラヴァルにおすすめの飯屋を教えてもらい、そこで朝食を取ることにした。

店に入ると奥にカウンターがあり、カウンターに直接辿り着ける一本の通路があった。

通路の左右にはテーブル席があり、客がちらほら座っていた。

俺たちはカウンターに座りメニューを開いた。

そこには文字だけのメニュー表があったが全て見た事のない文字だった。


「ごめん、文字読めねぇ」

「お前がそこまで馬鹿だとは思っていなかったよ」

「ひとまず俺と同じの頼んどくよ」

「ありがとう」


完全に盲点だった。

知らない図形があるなとは思っていたがまさか文字だとは、

言語については今聞いといた方が良いだろう。


「飯が来る前に言語について教えてくれないか?」

「そうくると思ってたよ。 この世には3つの言語がある。 一つは大昔に使われていた魔天語、今現在人間が使う人間語、俺たち亜人が使う亜人語の3つだ。魔天語に関してはほぼ使うやつは居ないが、地方の亜人が偶に使うくらいだな。俺らは使わん。」


流石アラヴァルだ。

博識な友を持つと実に便利である。

もっとも道具なんて微塵も思っていないがな。

そんな事を考えていると料理が来た。

見たことのない料理だったが一番近いのはハンバーグだろう。

ナイフで肉の塊を切った途端に肉汁が溢れてくる。

肉とタレの香りが鼻を貫き脳天に直接料理の美味さをプレゼンしてくる。

脳はそれに応じて手を動かし、本能のままに肉を貪る。

口に肉を入れた時舌に電流が走った。


「美味い...!」


つい口から溢れた言葉は隣のアラヴァルに届き、アラヴァルはニヤニヤしながら肉を口へ運んだ。

エルフの料理はこんなにも美味いのか。

否、エルフであることはあまり関係ないだろう。

簡単な理由だ。

キツいメニューこなした透の体に肉の美味さが染み込んできたのである。

短い期間ではあるがトレーニングは過酷なものだった。

それを乗り越えた達成感と料理の腕が交わり、天に召す程の快感を生み出したのだ。

それはそれは美味そうに料理を食べていた透を見てアラヴァルは大満足であった。


そんなこんなで朝食をとった俺達は服屋に行くことにした。

そういえば服は団で貰ったものしか無かった。

偶にはオシャレしてもバチは当たらないだろう。

商店街を歩いていると独特な香りのする服屋を見つけた。

遠くから見える服には自分に似合いそうな服もちらほら見られる。

エルフの村だからといって元の世界と服のセンスが変わることは別に無いらしい。

俺達は早足で向かい店に入った。

中に入ったとき見覚えのある女性が服を選んでいた。

名前がパッと思い浮かんだので話しかけてみることにする。


「リリベルさん、で合ってますよね」

「ふぇ?!」


お洒落な女性服の前に立っている可憐な女性は隊長の娘のリリベルだった。

それにしても綺麗な女性だ。

思わず見惚れてしまいそうになるも俺は会話を続けた。


「あの…この後暇なんですけど一緒に何処かに行きませんか?」

「お前マジか…」

「あっ…じゃあ行きます…」


よっしゃ!

誘えたぞ!

これで親密になるチャンスだ!


困惑しているアラヴァルを余所目に俺とリリベルは服を適当に探してカフェに行くことにした。

また飲食店だがカフェは別みたいなものなのでそれは良しとしよう。

店の雰囲気は落ち着いた空間でゆったりと楽しめる場所だった。

恐らくス⚪︎バのような立ち位置なのだろう。

ス⚪︎バは前の世界でもよく行っていたからこういう雰囲気は慣れている。

カフェに着いた俺は適当に飲み物を頼む事にした。


「ひとまず俺はアイスティーでも飲もうかな」

「それじゃ…私もそれで…」


「なんか俺だけ仲間外れじゃない…カフェオレで」


席の配置は四人席で一番奥の席に俺、少し離れた隣にアルヴァルで俺の前にリリベルがいる。

少し不憫なアラヴァルを置いておいて俺は会話を楽しむことにした。


「あの服屋よく行くんですか?」

「は…はい…」

「へ〜やっぱりお洒落な服たくさんあるからね」

「そうですね…可愛い服が沢山あるので…」


鈴のような透き通った可愛らしい声に顔が緩みニヤけているとアラヴァルが咳払いで遮った。

2人の言葉は止まり視線がアラヴァルの方へと移る。

アラヴァルは拳を口の前に置き、話し始めた。


「2人で盛り上がるのは良いが、店員さんを無視するのはやめておけ。」


するとテーブルの上に飲み物が2つ置いてあった。

話に夢中で店員さんが来たことに気づかなかったのだ。

まぁ俺達に飲み物のことを教えたのは自分も話に入りたかったってのもあるだろう。

仕方ないのでアラヴァルにも話を振ってやることにした。


「最近アラヴァルも頑張ったんだよな、こいつ体力無いくせに頑張り屋なんだよ」


俺が適当に褒めてやるとアラヴァルの耳が紅く染まっていた。

どうやら褒められたことに照れているらしい。

褒められることに弱すぎるだろ...


「すごい...です...!」


小さく手を叩いているリリベルが少し可愛らしく見えた。

追い討ちを受けたことによりアラヴァルの顔がさらに赤く染まり林檎のように見えた。

やはりこいつはチョロい。

ちょっと褒めればこんなもんだ。


「なんなら今度見に来たら?」

「お前マジか!?」


ここで一気に踏み込んでみる。

これの返事によって俺の今後のモチベーションが大きく変わるだろう。

運命の瞬間だ。


「じゃあ次の訓練の日に行きますね」


どうやら作戦は成功のようだ。

また来週も頑張れるだろう。

アラヴァルの顔を見てみても満更でも無い様子だ。

大事な約束を交わしたあと俺達はカフェを出て解散した。


「お前よく誘えたな」

「ま、簡単よ」


言ってしまえばすぐだ。

そこでグダグダしてたって話は進まない。

思い切って言ってしまったほうが人生いい方向に進むと信じているからこその行動力が俺を幸福へ導いていると思う。


ーーこうしてエルフの村での休日が終わった。






 

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