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よーく眼を凝らせろ

「ーーそろそろか?」

「そろそろかと」

「では始めるとするか」


男は腰を上げ立ち上がり拳を突き上げ宣言する。


「祭りの時間だッ!!」


「「うおおおおおぉぉぉ!!!」」


その日、地下に集う魔族の意思が統一された。

それが引き起こすのが平和なのか、それとも厄災なのか。

まだ誰も知る事はできない。


ーーー


あの馬鹿げた鍛錬が始まり一週間が経過した。

やる事は変わらない。だが一つ変わった事がある。

模擬戦を行う時異能の使用を禁止された事だ。

これで純粋な剣術が鍛えられるとか。


「また透の負けだ!」


ライナは剣術のみになると勝てる見込みが見えないほど強かった。

それだけ日々鍛錬を積んでいるのだろう。

だとすればそんな鍛錬を積んでいる者と来て3日の俺が戦うのはおかしいんじゃ無いか?


そういえば異能ありで勝負した時は俺の勝ちだった。

それだけ異能は恐ろしく人を逸脱した能力なのだろうか。


「そういえば魔族にも異能持たない種族も居るんですか?」


俺は剣を肘置きにし、水分補給をしながら聞いてみる。

すると腕を組みながら見ていたラジャイが反応する。


「いや居ないな、なんなら人族は異能持ちが少ない方だぞ」


だがアラヴァル達は異能を知らない様子だった。

何故だ?


すると同じように水分をとっていたライナも反応した。


「そうだな、基本的には魔族に生まれるものだ。例外は無い」


エルフにも居たのか?

わざと隠してたのならタチが悪いな。

少し信用を失いそうだ。

だが俺を救ってくれたのはエルフだ、そんな事実よりも感謝が勝つ。

気にしないようにした方が良さそうだ


俺は木剣を持ち直しまたライナへ向ける。

喉に力を入れ精一杯声を張る。


「もう一回だ!」


ライナもそれに呼応して声を張る。


「勿論だ!」


ーーー


剣術について身体が馴染んできた頃、ある噂が騎士団内、なんなら国中で流れ出した。

どうやら魔族が入り込んできているとか。

この国は魔族差別国家であるため、魔族は煙たがられている。

俺はそれがエルフではないことを祈ることしか出来ない。


「おーい!! 透!!」


するとラジャイからガラガラとした少し掠れている声で呼ばれた。

少し遠くにいるので走って向かった。


「何ですか?」


「初任務だ、最近魔族の噂が立っているからパトロールをする。ついてこい」


「はい!」


これは進展だ!

遂に俺にも初任務が来た!


俺は心の中で喜びを爆発させていたが、ここで叫び暴れるのも非常識なので心の中にギリギリ留めておく。


ーーー


初任務と言っても街の中を周るだけだ。

以上が無いか確認する、基本的には警察のパトロールと殆ど変わりない。


「異常なんてあるんですかね」


「まだ分からぬ」


ひとまず情報が集まる酒場を寄る事にした。

酒を頼もうかと考えたが、仕事中なので控える事にしよう。

席に着き、適当な飲み物を頼んで待っていると隣の席から興味深い話が聞こえた。


「最近、魔族を見たんだよ」


「今の聞いたか?」

「聞きました!」

「聞き込み行くぞ」


ラジャイはすぐに席を立ち酒を飲んでいる男に近づいた。


「一杯奢る、今の話詳しく聞かせてくれ」


「仕方ねえなあ、最近ここらで魔族の噂が上がってるだろ? その魔族を見たやつが俺の友達に居たんだが、そいつ曰く肌が独特な色をしていたらしい。」


「肌が独特?」


そういえば俺達を襲撃したあの男も赤い肌をしていた。

もしかしたらそいつが居た可能性があるな。


「もしかしてそれは赤色か?」

「お前知ってるのか?」


「いや青色らしい」


別人か、それともその関係者か。

以前警戒を解くべきでは無さそうだ。


「あと見た場所は正門付近らしいな」


「なるほど」

「協力感謝する。これビール代だ」


「この程度朝飯前よ」


ひとまず情報を確保した俺達は居酒屋を出て正門付近に向かう事にした。

正門付近に近づくのは捕まった時以来なので少し行くのが憚られる。


「何ビビってんだよ、行くぞ!」


「はあい!」


背中を叩かれた衝撃で変な声が出てしまったが、気合いは入った。

空もだんだん赤みがかって来ているので早足で正門に向かった。


ーーー


「でかい門だなあ」


「何間抜けなこと言ってんだ、探すぞ」


凱旋門のような堂々と構えた圧巻な正門を前にして観光客の様な反応を見せてしまった。

前回は気分と顔が俯いていたので気づく事はなかったが大きく構えている。


「片っ端から見るんですか?」

「正解だ!報酬として俺と共に周る義務を課そう!」


気が乗らない。

仕方ない、片っ端から家を訪問するか?

否、裏路地を見て行った方が早いだろう。


「裏路地に行きましょう!」

「妙案だな」


俺達は裏路地に向かうことになった。


ーーー


薄暗く少し異臭がする。

ゴミが不法投棄されているところを見るに日本と大して変わりはないらしい。

異能があろうと所詮人の範疇なのだ。

そんな事をしみじみ感じながら歩いているの走っている人影が一瞬だけ映った。


「あれを追いかけるぞ」


俺は必死に足を動かし、ラジャイの後をついていった。


「は、速え」


それにしても俊敏だ。

おそらく魔族で間違いなさそうだ。

ジリジリと距離を詰めていく、どうやら魔族も俺達に気づいたらしい。

俺はラジャイについて行くのに必死だったが、ラジャイはある場所に誘導しているような追いかけ方をしている。


「おいおい、そこは行き止まりだぜ」


「なっ!?」


謎の男は袋小路に追い詰められた。

近づくとフードを被り顔を隠している事がわかった。


「お前を負けだ、素直に投降しろ」


すると男はフードを外した。

フードの陰に隠されていた素顔が露わになる。

そこには青い肌をした凛とした顔立ちの顔があった。


「俺はリュート・プラチナム、ドゥーべ・ルートヴィヒ様の配下だ」


「誰だ?そいつ」


ラジャイは平然としていた。

だが俺は感情を抑えきれなかった。

あいつは先輩を殺したあの悪魔の配下、あのバイアスと同じ立場の男なのだ。

許せない。今すぐにでも殺してやる。

殺す、殺せば安全だ。

何も失う事は無くなる。

殺す殺す殺す殺す。

「おい」

どう殺そうか。

ドゥーべ本人を引き摺り出さなければならないからな。

皮を剥いで磔にしてやろうか。


「おいどうした!!」


「あ?」


感情に身を任せて実力の分からない敵に攻撃するところだった俺をラジャイが止めてくれた。

駄目だ、感情が不安定だ。

あまりこの世界に長居はしたくないな。

自分が自分じゃ無くなってしまう気がする。


「ひとまず逃げよう、あいつは七眼英傑の仲間だ」

「となると2人じゃ分が悪いな」


「逃げるのか?臆病者が」


「ああ、俺は慎重なんだ、バイアスを殺す時も慎重に行ったさ」


「貴様だったのか、よくも......よくも同胞を殺してくれたなぁ!!」


ちょっとした煽りのつもりだったが、判断を間違えた。

リュートとかいう男は今ブチギレている。

今相手を怒らせるのはまずい。

早く逃げなければ。


「おい透!背中に乗れ!」

「え?」


俺は言われるがままラジャイの上に乗るとラジャイはそのまま全力疾走で街を駆け抜けていった。

男はずっとこちらを睨んでいる。

どうやら追いかけてくる様子は無い。


「今はまだ許してやる、だが次は無いぞ」


リュートの脅し文句に少し寒気がする。

背筋を冷たい何かぎ伝う感覚だ。


「七眼英傑の話、あとで聞かせてもらうぞ」

「カーマインとライナと四人で話そう、戦争になるかもしれない」


そこには不穏な空気が流れたまま、騎士団本部へ走り抜けていった。

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