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訓練の成果

この一ヶ月間、何があるわけでもなく平穏に日々が流れていった。あの一件が無かったかのように平和だ。

逆に怖いくらいに。

俺はその間次の襲撃に備える為に訓練に励んだ。

強くなってあいつを倒す。ハラバラやアラヴァル、リリベルだって俺が守りたい。

そして俺自身も守りたい。

その為に俺は死ぬ気で強くなろうと鍛えた。


そのおかげかこころなしか一ヶ月前に比べ身体がゴツくなった様な気がする。

一つ懸念点を挙げるとするならば魔法だ。

バイアスの得意魔法は千里眼。

だが俺には得意魔法は無い。

魔法の訓練も出来ていないのでその面で少し不安が残る。これから先も特に魔法を鍛える予定は無いので益々不安が募る。


「なあ透」

「ん?」


するとアラヴァルが肩を軽く叩き、声をかけてきた。


「お前魔法を鍛えたいんだろ?」

「まぁそうだな」


そういえば少し前にアラヴァルに相談していた。

「そろそろ魔法を鍛えたい」といった形でだ。

そこでアラヴァルは「少し考えてみるよ」と言って席を外したのだ。

恐らく何か思いついたのだろう。

俺は適当に聞いてみることにした。


「お前、この村から出ていったら?」


「え?」


一気に突き放された感覚だ。

今まで一緒に時間を共にした仲だったのに。

その一言は透の心に無情に突き刺さった。


「いや、出て行って欲しいとかじゃなくてな。ここの外には魔法ってのに詳しい奴がいるかも知れないって話だよ。それなら魔法を鍛えられるだろ?」


「でも…それじゃ村の人達が心配で」


「いやいやお前が居なくともこれまでこの村は存続してたんだから問題無いって。行ってこいよ!外の世界へ。」


アラヴァルの熱弁が先程とは別の暖かい意味で心に刺さる。アラヴァルのアドバイスを受け、俺は数日後にここを出ることにした。

俺がこの村を出ることを数名の知り合いであるエルフに伝えてみると、


ハラバラ

「いい機会ダスね!頑張ってくるダスよ!」


カラベル

「おぉそうか。外の世界でも元気にな!」


リリベル

「無茶は…しないでくださいね。あと絶対に…帰ってきてください!」


てな感じで意外と前向きな意見が多かった。色々なエルフからの後押しで俺は外に出る覚悟が出来た。

ひとまず図書館に行ってサバイバルでのコツについて念入りに調べておかないと、痛い目をみる。

準備を怠ると死んでしまうかも知れないからな。

俺は鞄に必要なものを詰めて、出発の日の為に準備を重ねていった。


ーーー


〜当日〜


「また帰ってくるダスよ。」

「あぁ帰ってこい!」


「ありがとな。お前ら。」


最初は2人が送り出しに来た。

俺は門の前で最後の荷物確認を行っている。

そこに寝起きのカラベルと髪を綺麗に整えてあるリリベルが登場した。


「なんだ、適当に頑張れや」


カラベルの言葉は適当だ。だがいつも団員のことを第一に考えている優しい人なのは既に知っている。


「頑張って…!」


リリベルの言葉は多くは語らずに、簡潔な物であったが、俺の中では大きな意味を持つ言葉へと成った。

これから一人旅だ。人間の友達も出来るかも知れない。そんな希望を胸に俺は出発した。


「行ってきます!」


ーーー


清々しく送ってもらったもののここから先どの方向に国があってどの方向に人がいるのかなどさっぱりだ。

しかもジメジメとした空気に魔物の臭い、極めつけには一面緑で風景の変わらない道。

つまらない。その言葉に尽きる。


そういえば落ちてくるとき、村とは反対の方向に大きな国があったように思える。

そこに行こう。俺は行き先を近くの王国に設定する事にした。


「てか、空飛んで穴通れば帰れるじゃん!」


透は自分に『飛べ』と魔法をかけて宙に浮いた。

だが力は一分と持たずに地面に落下した。


「駄目か…」


早く帰りたい。そういえば母さんや父さんはどうしているのだろうか。自分を探しているのではないか。将又、諦めて二人で暮らしているかもしれない。

早く帰らなくては。家族や友達に迷惑は掛けれない。

俺は足を早め、魔物に臆することなく進んでいった。


魔物討伐も慣れたもの、というよりは強くなったので単純に戦いに慣れた。

戦闘技術も一ヶ月で磨きをかけたので安心だ。

とはいえ魔法を行使すると流石に疲労が溜まる。

ポンポン使える代物では無いのだ。


「軽く囲って寝るか!」


日も暮れてきた頃なので夜を凌ぐために家を創る事にした。

土を生み出し周りを囲んで村に行くときにも創った簡易的な家である。

中に焚き火でも作って軽く飯!と言いたいところだが、いくら隙間を作ってるとは言え狭い空間で火はマズイ。

前回も焚き火を作っていたがあればガサツすぎただろう。

少し反省するべきだ。

ひとまずほんの小さな灯火を創り木の実や事前に焼いた冷めた魔物の肉にかぶりつき夜食を終わらせた。

因みに肉は冷めていて少し硬かった。

ーーてか味もしないし最悪の飯である。

村が恋しくなるな。


ーーー


夜が明け土の家を崩し出発することにした。

寂しくもわくわくする国探しの一人旅もまだまだ始まったばかりだ。

七眼英傑とやらに出くわしたり、一流の凄腕剣士に出会ったりする可能性も無きにしも非ずなので一応最大限の警戒態勢を取りつつ歩を進める。


とはいえずっと警戒態勢を取っていても綻びは生まれていまうだろう。

それを理由に少々リスキーではあるが所々休憩を挟み進むことにした。

休憩無しで進み続けると脚が限界を迎えるのも一つの理由であるがな。


あの降り立った場所は最初に空に飛ばされた場所から大きくズレたらしい。

人の気配が全くと言っていいほど無くただひたすらに森が続くのがそう嫌な想像を掻き立てる要因だ。

いや恐らく正しいだろう。


そんな考え事をしているとある気配がした。

魔物の気配だ。


「まったく面倒臭いなぁ」


草むらから少しだけ覗かせたものは大きな大砲のような角であった。

どうやら気配の正体は砲角犀のようだ。

俺は瞬時に角に剣を斬り込む。


「ぐるあぁぁ」


剣は角にどんどん斬り込んでいく。

剣に足を乗せ力を込めて斬った結果、見事に角は斬り落とされた。

角を失った犀は自暴自棄になり突進してきたがそれを跳び箱のように跳ねて避け、剣を背後から突き刺し怯ませ、最後には首を斬り討伐した。

魔物の死体は放置し、ひとまず国へ向かう。


ーーー


さらに数日が経った頃、国の兆しが見えてきた。

それは途中で気づいたことだった。


「にしても見つからん、てか木が邪魔で見えん…」


その時透の頭に電球が生まれた。

その電球は無から光を生み出し、透に閃きを与える。


「あ、木に登ればいいじゃん」


登った先に見えたのは少し遠くにある石が積まれて出来た壁と大層な城の屋根である。

木に登ればある程度は見えることになぜ気づかなかったのか。


そうやって木に登って様子をみながら進んで行くことによって着々と国に向かっていった。


国にどんどん近づいていった頃、人がいた痕跡を見つけることが頻繁にあった。

人が直近に居たと思われる者は少ないが少なくとも立ち寄ったと思われるものはある。


「第一村人、どんな人かな?」


そんな考え事をしていると遠くからドスドスと近づいてくる音が聞こえた。

その音は段々と近づいて来ている。

俺を目指すかの如く。


「これ俺を狙ってね?」


すぐにその場に隠れ様子をみると、少し体の大きい銀色の鎧を身にまとった一人の男がその場でキョロキョロと辺りを見回していた。

恐らく俺を探してる。

俺がゆっくりと後退りしているとつい木の枝を踏んでしまい、パキッという音が響く。


男はすぐに照準を音の方向、すなわち俺に向かって走り出す。

ついに見つかった俺は両手を挙げて自分は無害ということを証明すべく降伏の意思を伝えた。


すると鎧の男は口を開いた。


「降伏か、だが未知の人間を信じることは出来ぬ」


男は剣を振り回し俺に斬り掛かる。

俺はそれを避け続けたが、全てを避けきることは出来ずに掠り傷を受ける。


「こりゃちとまずいな」


そう悟った俺は鞘から抜いてない状態で剣を取り出し、攻撃を防ぐ。

負けじと男も剣を振る。

両者譲らない戦いが始まった。

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