【第八話】拷問のような
今日を凄惨で悪夢じゃなきゃ説明がつかない日にしようね。
仲間に惨いことをした奴を許せない。
そんな気持ちのまま小生は走った。
崖を飛び越え、森を抜けて海にたどり着いた。
ほとんどが凍っていて、ほぼ氷海だ。
足跡をみると一隻の黒い大型客船に続いていた。
乱暴に飛び乗って足跡を辿る。
船の中を走っていると、大きな扉の前で止まっていた。
扉を開けると、また理解したくない光景が広がっていた。
口を布で塞がれ、フード男が着ていたものと同じパーカーを着た涙目のヲリーヴが、フード男の膝の上で抱きしめられていた。
よく見ると、ヲリーヴの腕や足が縄で縛られていた。
「こんな時に誰なん?」
フード男が明るい口調でそう言って、フードを外しながらこちらを見た。
「お前!ヲリーヴを放せ!」
怒りに任せて小生がそう言った。
「何言うてるん?てか君だれなん?」
フード男はヘラヘラと笑っている
「ん"!!!ん"ーん"!ん"!ん"!」
小生に気がついたヲリーヴが必死に何かを訴えかけながら、首を横に振っている。
「え?何?ヲリーヴちゃん」
フード男がヲリーヴの頭をそっと撫でた
しかし、次の瞬間
撫でていた頭をガッと掴んで冷たい声で
「あの男なんなん?」
と聞いた。
ヲリーヴは泣きそうになりながら必死に何か話そうとしていた。
「ん、んん"…んん"ん"ん……」
口を塞がれているので聞き取れ無かったが、小生と入口の扉を交互に見ていたので、おそらくだが、「逃げて」と言ってるのだろう。
「なぁ、ヲリーヴちゃん。あの男誰なんかちょっと教えてくれへん?」
フード男がヲリーヴの口に巻いてある布を外した。
「ウェン!はよ逃げて!こいつアカン!あんただけでも生きて!」
ヲリーヴが必死に叫んだ。
やはり、小生の大事な仲間を奪ったのはこいつだ。
「ヲリーヴちゃん、何言うてるん?大好きな旦那さんにはよお友達紹介してくれへんかなぁ?」
明るい口調でそう言ったが、目が全く笑ってなかった。
「何してんのウェン!早く逃げて!アンタには死んでほしくない!」
ヲリーヴがそう言っている間、フード男はヲリーヴの頬に自分の頬をくっつけていた。
小生がフード男に殴りかかろうとした瞬間、男まであと50cm程の所で薄紫色の硬いものに拳が当たり、6mほど吹き飛ばされた。
「君さぁ、ヲリーヴのなんなん?」
フード男は真顔で、低く冷たい声で聞いてきた。
「小生はヲリーヴの友人だ!ヲリーヴは小生の初めての友人だ!」
そう言う小生をフード男は冷たい目でじっと見つめていた。
「へー!そうなんやね!」
そう言いながらフード男はニコニコと笑いながらヲリーヴの口を布で塞いだ。
「お友達が挨拶に来てくれたんか〜、嬉しいな〜」
フード男はヲリーヴが着ているパーカーのチャックを開けた。
「あ、自己紹介が遅れてもうたなぁ。俺はリキュール、リキュール・クンツァイトやで〜。よろしゅう。」
小生はフード男、リキュールに再び殴りかかろうとしたが、ガラスのような何かに邪魔されてリキュールに近づけなかった。
ヲリーヴが震えている。速く助けないと。
「ヲリーヴちゃんは人気者やなぁ」
小生は見えない壁に攻撃を続けたが、壊れる気配がない。
リキュールがヲリーヴにフードを被せて、前を手で軽く閉めてこちらに見せてきた。
「なぁなぁ見てや!彼パーカー!可愛くない?」
「せや!せっかくやし、俺らがラブラブなところお友達のウェン?君にも見せたげようや!」
ヲリーヴのパーカーが脱がされた。
ヲリーヴは震えながら泣いていた。
今回ヤバかったのに、最後まで読んでくださって本当にありがとうございます!