【第二話】男同士の逢瀬
昼間の綺麗なカフェで、若い男二人が向かい合って座っていた。どうやらデート中のようだ。甘い空気が漂っている。
良い時間帯だが会員制の隠れ家のような場所なので、彼らの他に二、三人ほどしかいない。
二人のうち一人、タレ目で長い赤髪の男、フローガが口を開いた。
「そういえば、最近ロッゲンくんから校外学習のお土産をいただいたよ。メーセージも添えられててね、『いつもありがとうございます』って。とても嬉しかったよ」
そう言い終えると、もう一人のツリ目の男、フローガよりも長い紫と水色の髪の男、ヴァイスが目を丸くしていた。
「本当に?」
「ああ!もちろんだよ!」
フローガは身を乗り出してそう言った。ヴァイスは嬉し涙を零していた。
ロッゲン、ヴァイス・ブロートの弟であるロッゲン・ブロートは極度の男性恐怖症であった。何故そうなってしまったのかはわからないが、10歳年上の兄であるヴァイスにも自ら近寄ろうとはせず、兄の恋人であるフローガが話しかければ全力で逃げるほどだった。
そんな弟が変わろうとしていることがよっぽど嬉しかったのだろう。
今回フローガがヴァイスを人気のないカフェに誘ったのはこの話をするためだった。
店内に流れているノクターンがヴァイスの静かな泣き声を隠している。
こういう話をするのに最適な場所だ。
二人はしばらくロッゲンや、他の共通の友人の話していた。
「この前ヲリーヴさんが好きな仕事が入った〜とか言いながらかなりはしゃいでいるのを見かけたよ」
「あの人、いくつになっても変わらないわね。」
そう言ってヴァイスは紅茶を一口飲んだ。
「きっとこの前任せた演劇の仕事のことだと思うわ。ヲリーヴさん演劇が大好きだからドロドロ恋愛ミュージカルの悪役と、復讐劇の復讐担当の黒幕を任せたから絶対にそれだわ」
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