断章 真衣サイド1
上空二千フィート。
一機の軍用機がホバーリングをしていた。
機内にいる全員が戦闘服とガスマスクに身を包んでいた。
その機体の中で一人の女性が声を張り上げた。
「おい、時間だぞ。起きろカラスども」
その言葉に一同、私語もなく一斉に声のもとを振り向く。
「今回の対象は、先日から連絡が取れなくなっているコロニー56だ。状況は不明だが、ホワイトカラーである可能性が非常に高い。テロリストであれば、占領して人質交渉に持ち込むはずだ。だが、それもなく音信不通状態。すでに絶望的な状況であることから住民はいないものとする。そのため、火気使用は自由。ホワイトカラーを発見次第殺傷せよ。苗床化を避けるために慎重に行動せよ。そして、迅速に情報収集をしろ。いいな?」
そこで一人、手が上がった。
「ここ最近、遠征が続いています。それも同様の事件が………。ここよりもまだ無事なコロニーの守護に回った方がいいのでは?」
「意見ありがとう、香織さん。でも、状況がわからなければ断言もできないし予想も着けられないの」
「『クイーン』の可能性は?」
その言葉に全員が息をのんだが、うちの隊員なだけあって乱れることはない。
「それも考慮しているわ。でも、憶測に怯えていても先に進まないわ。まずは、現状の打開と情報取集よ。いいわね?」
その言葉に、一同が敬礼した。
「よし、では班分けをする。4班に分かれて東西南北の防衛線から侵入し、戦闘痕を発見次第報告。『クイーン』と会敵したとされる場所を見つけたら私に報告すること。私がその方角を担当するわ。内部に侵入次第戦闘ログを漁りなさい。何が起きたのかを確認します。そのあと住居区に入り、ホワイトカラーの殲滅に当たります。以上」
「「「「了解!」」」」
よし。
「それでは降下開始」
その声に合わせて、漆黒のカラスたちが下りていった。