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Re:CALL  作者: 明上 廻
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新人とは?

 翌日、初出勤すると僕だけ別室に連れていかれた。

 受付の人が名簿録をみて慌てて僕を別室に連行した。

 他の新入隊員の前で正直、目立ちたくなかったのに。

 「なんで?」

 とりあえず、昨日用意してもらった軍服に袖を通し部屋で待機しているとノック音が聞こえてきた。

 「はい。空いています」

 そう言うとノブが回され、厳ついガタイのいい大男が入ってきた。

 何度も見た人ではあるが、軍服に袖を通した状態だといつも以上に大きく見えてしまう。

 「あれ? 石永さん、どうしたんですか?」

 石永伸一いしなが しんいち

 この軍部を取りまとめている少将であり、昔、お世話になった人だ。

 昔の傷が原因で現役を引退してはいるものの、普通の人よりは圧倒的に強い。

 だって、常に模擬戦は複数人相手でも問題なく立ち回っていた。

 万全ではないにしても、歴戦ではある。

 「甲斐田、ここでは少将と呼べ。前から言っているが、この軍部は縦社会だ。お前が、俺を呼び捨てにすると俺自身の立つ瀬が無くなる」

 ………めんどくさい。

 いままで傭兵のようなことをしてきた身からすれば束縛感を覚える。

 「すみませんね。間借りしているところに問題があるので」

 「………まあ、そうだな。それか家系柄なのかもしれないな。お前の姉は、剣崎最高司令のことを『アホは軍部の金庫にしがみついていろ』と軍会議で言ってのけたからな」

 何というか、姉一号らしい一言だ。

 「しかも、新人たちのいる前で、だ」

 姉にはコンプラという言葉はないのだろうか?

 「おかげで軍部は二分化されてしまった。現実問題を知らない新兵は剣崎派閥に。現実主義は四乃宮派閥につくようになった。まあ当然だな。だが、四乃宮にも困ったものだ。俺が後押しした『特務隊』の隊員たちから練習が辛すぎるとクレームが上がる始末だ」

 真衣姉さんならやりかねない。

 というかやるな。

 「具体的には?」

 「鬼ごっこ」

 鬼ごっこ?

 「四乃宮に捕まえられたら、その場でほふく前進10キロ、スクワット100回を時間一杯したり、パラシュート無しでの降下訓練。支援物資をもって制限時間内に近隣コロニーまでに到着させる訓練だったり………まだ聞くか?」

 ………なんて答えればいいのだろうか。

 いつも四乃宮邸にいれば、それが『日常』とか言ってはダメかな?

 それとも相槌でもしておけばいいのだろうか。

 「あと剣崎派の幹部事務所に行って、幹部の矯正の仕方という名目でボコしたり、生皮を剝いだりしていたな」

 まるで任侠ものの映画だ。

 でもこれは、四乃宮家と剣崎家の因縁みたいなものだし。

 昔、剣崎家のバイト依頼が来たときは、真衣姉さんはものすごい形相だった。

 ………そして不運はくるもので、剣崎家のご令嬢が誘拐される、という事態になったけど。

 僕、個人としてはどうでもいいことだ。

 でも仕事は最後までやらなければ、ね?

 「それで個室に呼んだ本題に入りましょう」

 これで身内トラブルとかは、勘弁願いたいものだけど。

 「そうだな。………『特務隊』に———」

 「お断りします」

 「他の隊員よりも給料が———」

 「お断りします」

 「有給取得も———」

 「お断りします」

 これ絶対、真衣姉さんのストッパー役だろ?

 それに、特務隊には———、


 ———『あの人』がいる。


 内輪もめはまっぴらごめんだ。

 それと真衣姉さんからのしごきは嫌すぎる。

 真衣姉さんの武勇は、二年前の入隊時から轟いていた。

 実技試験で三人の教官相手に一歩も引かないどころか、三分で全員を無力化もとい気絶させ、気に食わない上官を叩きのめし役職を奪って目の前にいる石永少将の許可のもと『特務隊』を復設させた。

 自分の隊員たちを指導するにあたり、『地獄』の訓練を実施。実践で隊員たちの生存率が飛躍的に向上したものの、あまりにも過酷すぎるため嘔吐袋や脱水症状の人のために点滴、………部位欠損をした人のために有機生命義手を取り揃えていた。なお有機生命義手は、対象の人間からDNAを採取して、できうる限り欠損部に似せたものだ。(※アンダームーンの知り合い価格で提供されているらしい)

 練習で死にそうになるとか、ごめんこうむりたい。

 「あんな人間やめちゃった集団に入るなんて御免ですね。それに給料面も8年間貯めていたのでそこまで問題ありません」

 「………そうか。お前も大概人間やめちゃった人物だけどな」

 そんな馬鹿な。

 僕は、一般ピーポ―ですよ?

 そう言うと石永さんは、悲しそうな顔をしていた。

 無理なものは無理だから。

かわいそうだけど、やだね。

 「わかった。お前の意思は尊重する」

 「ありがとうございます。では、僕は式場に———」

 そう言うと、石永さんは不思議な顔をしていた。

 「聞いてないのか?」

 「え? 何をでしょう?」

 「お前は、今日から現場担当だ」

 新人とは?

 

 

 


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