よく見る夢
また夢を見ている。
「あんたなんか———」
夢の中。
「死になさい! 都木!」
僕は、馬乗りになっている母親に首を絞められながら拒絶の言葉を突きつけられていた。
ああ、またか。
何度も視た景色だ。
母親から流れる涙を見ながら、思ったことは怒りでもなければ苦しみでもない。
悲しみだった。
———ごめんなさい。
そんな顔をしないでほしい。
苦しまないで。
理由なんて知らない。
『ねえねえ、もっと楽しみましょう?』
頭に直接響く声は無視する。
でもこんなにも苦しみながら、必死に僕を殺そうとしている目の前の人物を見て、申し訳なく思ってしまった。
そっか。
僕は、生きていてはダメなんだ。
それなら僕は、このまま身を委ねよう。
気道が狭まり、酸素が欠乏して意識の微睡みが始まった。
夢が終わるということは、目が覚めるということ。
『ねえねえ、生きるのが辛いなら私たちに譲ってよ?』
もう一度、頭の中に声が響く。
ああ、夢が覚める。
いつものことだ。
視界がぼやけ、口から涎が垂れていく。
何度目だろうか。
この夢を見るのは。
あと何度、この夢を———。
『私たちが面白くしてあげるよ!』
脳裏に響く声を再度無視し、目覚めをまつ。
視界の隅に、近寄ってくる誰かが見えた気がした。
だけど———。
確認する前に、視界が完全に暗転した。