熱いですね! 暑いなんて通り越して熱いです! ですから今日は寒いお話を。
ご機嫌いかがでいらっしゃいますか? まいにちまいにちほんとにほんとに熱いですね!
先日、大した装備も持たず炎天下でバイトに出かけたら脳が煮えてヤバかったです! 到着したのはクーラーがきいている涼しい室内なのに、何も考えられない! 「わたしって……あの……なんで……いるんですか?」イケメン先輩に自分の存在意義を問うという哲学的な行動に出ました! ちがうんです! べつに深遠な話がしたかったわけじゃないんです! 熱くて頭がまわらなかっただけなんです! わたしが聞きたかったのは自分の存在意義じゃなく、次はなんの仕事をすればいいかだったんです!
わたしの言動に驚いたイケメン先輩は、ブスっとした顔で外の掃除へ行こうとしました。そうか! 次は外の掃除だ! わたしが行きます!
先輩:ダメです。僕が行きます。
ソウ:でもお外は熱いです! わたしが行きます!
先輩:ダメです。
ソウ:わたしが倒れてもお店は倒れませんけれど、先輩が倒れたら店は倒れてしまいます! 倒産させたくないので、ここはわたしが!
先輩:ダメです。
そう言って地獄のような熱さの外へ……! ごめんなさいいいい!!
先輩、めちゃめちゃイケメンで普段は塩対応なのに、ときどきめちゃめちゃ優しいのですよ(涙)。しかもぶっきらぼうに優しい……(涙)。彼はロマンス小説の主人公かなんかだろうか? イケメンで塩対応なのに優しいって、できすぎやろう……。
優しい先輩に迷惑はかけられないので、わたしは一計を案じました。翌日わたしは凍らせたペットボトルを胸の谷間(!)に挟んで外へ突撃しました! 外は灼熱地獄ですけれど、心臓のすぐ近くに凍ったペットボトルがあるので涼しい! これなら平気! うひひ♪ あとでエアコンフィルターも外で洗おう!
ご機嫌でお掃除していたらチャポ……チャポ……聞き慣れない音がする。なんの音だろう? それは凍っていたペットボトルの中身が溶けて、水になった音でした。そしてその瞬間…………、
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
あっという間に身体は業火に焼かれ、這う這うの体で涼しいジム内に逃げ込みました! 危なかった! 外で倒れるところだった!! こんな炎天下で作業をしている皆さんは、いったいどうやって熱さ対策をなさっているのでしょう? 最近はファンのついた作業着なんかもありますけれど、あれだけでしのげるのでしょうか??
そういうワケで熱さしのぎに、人生で二番目に寒かったお話を……。
一度目の結婚(わたしは二回結婚して、二回離婚している。テヘ☆)は、福岡市に住んでいました。東京や大阪ほどではありませんけれど、都会です。すぐ近くに小さな商店街があって、少し歩けば駅ビルにたくさんのお店がある。その駅から電車に乗れば、天神も博多も空港もすぐです♪ バスや電車は網の目のように張り巡らされていますし、5分も待てばすぐ来る。とても便利な街でした。
そんな都会に雪が降りました! しかも珍しく積もった! 福岡で雪が積もることはほとんどありませんから、わたしは大喜びです! 真っ白な銀世界! なんてキレイ☆ なんて素敵☆
雪でバスの運行が乱れるだろうと早めに出勤する夫を見送りがてら、すぐ近くのコンビニへタバコを買いに出かけた。夫を見送ってひとしきり雪で遊んでタバコを買ってアパートに戻った。「さむい♪ さむい♪」ご機嫌さんで部屋のドアを開けようとしたら、カギがかかっている……!
「え? 開かないんですけど?」ガチャガチャ! ドアは開かない。動揺した頭で考えます。わたしはカギを掛けずに部屋を出た。誰かがカギをかけたはず……。って、夫しかおらんやろが~い!!
たぶん夫はわたしがカギを持って外へ出たと思ったのでしょう。そんなもん、持ってないです! 持って出たのはタバコ代とスマホだけ。ほかは何にも持ってない!
えっと……。カギがないから入れないから、カギをなんとかしないと……。考えようとするのですけれど、しんしんと寒さが足元から這い上がってきて考えがまとまらない。さむい……。
すぐに帰るつもりでしたから、薄いロンTと綿パン、足は裸足にスニーカーです。この頃はまだパンツをはいていたのかなぁ? はいていたのかもしれませんけれど、ちっちゃいパンツで寒さを防げたとは思えない。服もクツも白いので、いかにも寒々しい……。
夫に電話してみましたけれど、出てくれません。まだバスの中かなぁ? それなら電話に出られないよなぁ……。 ここで待っていてもしょうがないから、夫の会社へ行こう。
真っ白な雪の道をトボトボと歩き始めます。さむい……。さっきまで嬉々として雪に足跡をつけて遊んでいたのがバカみたいだ……。横殴りの風が裸足に吹きつけます。さむい……。身体の感覚がなくなる……。
さいわい都会なのでバス停はすぐそばです。通勤や通学の人たちを満載したバスがわたしの前で停車しました。たくさんの人が乗っているなぁ……。わたし、乗れるかな?
おそるおそる乗り込むと、バババっと人が引いた。そしてわたしの周囲だけ、広々とした空間が……。どうして? さっきまで押し合いへし合いしてたのに? まわりを見てみると誰もわたしと目を合わせようとしない。ほかの場所はギュウギュウなのに、わたしだけポツンと立っている。なんで?
あ、そっか! 不審人物と思われているんだ! ありえない量の雪が降っているのに、わたしは上着も着ず裸足です! 頭はボサボサ、顔は洗ってない。いまのわたし、不審人物だ! バスが揺れてフラフラ倒れ込むと、そこだけ見事に空間が広がります! 誰もわたしと関わり合いになりたくないらしく、必死でよけてくださる。すみません、ごめんなさい……(涙)。
やっと夫の会社に到着しました! デカイ会社なのでバス停の名前は会社名です! そこでたくさんの人たちと一緒にバスを降りる。そこで降りる人は全員会社の関係者なので、ヘンテコなわたしが降りると驚いたように横目でジロジロ見ながら会社へ入っていった。夫、ごめん。私のせいでヘンなウワサが立つかも……(涙)。
バスを降りたらすぐ電話が鳴った。夫からです!
夫 :マチちゃん、どうしたの!?
ソウ:カギが……。
夫 :カギがどうしたの!? 言ってごらん!?
ソウ:マチはカギを持たずに外へ出たの。そしたらドアにカギが……。
夫 :ボクがカギをかけちゃったんだね!? ごめんよ! すぐに持っていくよ!
ソウ:いま、会社の前です。
夫 :ボクの会社まで来てくれてるの!?
ソウ:はい……。
夫 :すぐ行くからね! あったかい守衛室で待たせてもらっておくといいよ!
会社の入り口の守衛室へ近づきます。風に吹かれながら身体中に雪がついたありえない薄着で裸足のわたしを見て守衛さんが声をあげる。
守衛:あなた! どうしたのですか!?
ソウ:いつもお世話になっております。社員の家族です……。
守衛さん、社員の家族と聞いてちょっと安心したのと、ビックリしすぎて素になったらしい。
守衛:雪ががぁば積もっっとるばい! どぎゃんしたっと!?
ソウ:夫がカギをかけて出勤しまして……。
守衛:あんたさん、うちに入れんとね!?
ソウ:いま夫がカギを持ってこちらへ向かっています。
守衛:寒いけん、こっちの部屋に入りぃ!
ソウ:いえ、すぐ来るそうですから、ここで……。
部屋に入ると守衛さんに夫の顔を見られてしまう。アホな妻を持っているとバレたら、夫の出世に影響しかねない。幸い横殴りの雪は視界を奪ってくれます。夫の顔バレせずに帰りたい……。
門から少し離れたところで立っていると、あっという間に頭や身体に雪が積もります。最初は雪を払っていたのですけれど、すぐメンドクサクなってしまった。積もりたければ、積もるがいいさ……。
後で夫から聞いたところによると、雪ダルマかと思ったそうです。白い服に積もる白いゆきで、全身が真っ白になっていたらしい。
夫はあわてて駆け寄ると、わたしの身体に降り積もった雪を払ってくれました。そしてカギと数千円を握らせて言いました。
夫 :すぐにタクシーをつかまえてあげるからね! タクシーで帰りなさい。
ソウ:でも、もったいない……。バスで……。
夫 :マチちゃんが風邪でもひいたら大変だ! いいからタクシーで帰りなさい!
夫はすぐにタクシーを止めてくれて、わたしの手を引いてタクシーに乗せてくれました。そしてわたしは無事に部屋へ帰り、あたたかい部屋でほっとしたのでした。
……これが人生で二番目に寒かった話です。都会だったから良かったものの、田舎の甲賀だったら間違いなく凍死していました……。生きてて、良かった……(涙)。
え? 一番寒い話ですか? 一番寒かったのは、ちょうど今頃です。灼熱の夏でした。
夏なのに、どうして寒いかですか? 聞いてくださいますか? 人生で一番寒かった話……。
去年の夏休みに小学生の前でお話をさせて頂いたのです。今日みたいに熱い日でした。コロナのせいで子どもたちの間隔がものすごく広かった! そして子どもたちの後ろには、子どもたちより遥かに多い人数の大人が!! 校長先生に教頭先生、担任の先生に自治会の会長さまや役員、保護者の皆さまがズラズラズラ~っと!!
動揺したわたしはしどろもどろになり、子どもたちは話の内容がわからなくて「???」な顔をしている。なんせ子どもたちの間隔が広すぎて、どこに向かって話をすればいいかわからない。あせって何とかしようと頑張ってみたけれど、空回りするばかりで……(涙)。
熱い日だったので熱かったと思うのですけれど、わたしはずうっと冷や汗をかいていました……(涙)。
いまでも思い出すと冷えびえします……(涙)。あれは寒かった……(涙)。人生で一番寒かった……(涙)。
あ! そうだ! イイコト思いついた! 今日のバイトで外の掃除をするときに、その時のことを思い出しながら掃除をすればいいんだ! そしたらきっと熱くない!
……ダメです。その時のことを思い出したら、寒くてきっと凍死します……(涙)。灼熱地獄の炎天下なのに寒くて凍え死んでしまいます……(涙)。