8.初仕事
文字数増やしました。次回以降はちょっと減るかもしれません。
「え…えっと…それってどういうことですか?」
「ん?どうもこうもないが?」
「えっと、だからその…」
なんでじいちゃんとばあちゃんが英雄扱いされているんだ?
どこにでもいる普通の老人だぞ?
「なんでその…英雄って呼ばれているんですか?」
「あぁそういうことか。元々、サージェス様はこのカートゥーン王国の宮廷魔術師の一人で三大魔術師の一人なんだぞ。」
ふんふん。なるほど?
「で、今から30年くらい前に、魔物の大量発生があってね。その時に王都を救ったと言われているから英雄と呼ばれるんだよ。」
ほほーう。あの爺さん俺に隠し事してたなあ
まぁそんなこと言ったらフルボッコにされるから言わんけど。
「ちなみになんでその…おば……リ…リッテル様は英雄って呼ばれてるんですか?」
「リッテル様はなあその魔物の大量発生が起きた時にサージェス様とともに前線にたち、魔物を撃退されたからなんだ。ちなみにある地域では御二人を神として崇めているところもあるそうだ。」
そこまで話した時だった。
「……うっ」
後ろから呻き声が聞こえた。
振り返ると、ヨロヨロしながら立ち上がるニーシリーさんの姿があった。
「ニーシリー。お前の負けだ。」
ギルド長さんが言う。
「この子を冒険者として登録する。異存はないな?」
「……フッこれで異存があるなんておかしな話じゃないか。俺に勝ったんだぞ?」
「……そうだな。おい!早くこの子の登録をしろ!」
「ありがとうございます。えっと…」
「ん?ああ、俺の名前はキルーズ。キルーズ=マイスセットだ。それとこいつはニーシリー=サスペイス」
「ありがとうございますキルーズさん。それと先ほどはすみませんでした。ニーシリーさん」
「えっとそれじゃ一回戻ろっか」
まさかじいちゃんとばあちゃんが英雄だったとはな……
今でも信じられないくらいだ…
「それじゃこれがカードな。一応お前はニーシリーに勝っているけどFランクからスタートな。」
「はい。ありがとうございます。ちなみにキルーズさん。依頼とかはどこで受けるんですか?」
「…スバルあなたそんなこと知らないの?」
「あ、ああ。依頼はあっちのボードに書いてある。ちなみに君が受けられるのはDランク依頼までだよ。」
それじゃ依頼を吟味しますかなっと。
「ねぇスバル?私のこと忘れてもらったら困るんだけど?」
マーチェが怖い!やめて!そんな笑顔しないで!
「いやごめん。ちょっとどんな依頼があるのか気になっただけだよ。」
ちなみにマーチェもFランクとして新しく登録した。
「それじゃどんな依頼が……!」
「あらスバル気づくのが遅いね」
そこには「魔物大量発生 救援求む!」と書いてあった。
「キルーズさん、この魔物討伐依頼はなんで魔物ハンター協会があるのに冒険者ギルドまで回っていてるんですか?」
「ああ。これはな…」
「魔物が多いからでしょ。そんなこともわからないの?スバルは」
だんだんと、マーチェの口が悪くなってくる。
なんというか……なれると毒舌みたいな…………
「そうだ。今魔物が王国中の魔物ハンターを集めても倒しきれないぐらいたくさんいる。」
(あれか。魔王のせいか)
「じゃあなんでランク問わずって書いてあるんですか?」
「これはな、参加したがる冒険者が少ないんだよ。だから人手を増やすためにランクを撤廃した。でも実際はAランク相当だ。」
確か冒険者のランクはSまでだったはず。そんなに魔物って強いか?
「じゃあこれをやろうかな…」
「スバルならそう言うと思ったわ〜」
「マーチェはここで待っててね」
「ええ?私戦えるよ?魔剣さえあれば…」
「魔剣使えるの?」
「うん?そうだよ?」
「じゃあこれ使ってよ」
そう言って俺は腰に下げていた剣を渡す。
「え?でもこれはスバルのじゃ…」
「いや俺も正直それをうまく扱えないんだよ。でも経験者のマーチェなら使えるかもね。」
「ええ?…まぁじゃちょっとだけ時間ちょうだい」
「ん?元々そのつもりだよ?二日ぐらい練習期間にしようかなって思って」
「うん。わかった。」
ふー これで解放されるぜ。
「……スバル。何か失礼なこと考えてない?」
ぎくり
「いや何も考えてないよ?」
「……ふーん」
危ない危ない。ばれるところだった。
それじゃあ山にこもって魔法でもぶっ放しにきますか。
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私はスバルにはとても感謝している。
まさか山の中で魔剣を持たずにいるところに魔物化した熊に会うとは思わなかった。
ああ、これで私の人生は終わるんだって思ってた。スバルが来た時もそれは変わらなかった。
それなのに、スバルは一人で突っ込んで簡単に討伐してしまった。
世の中には自分以上にすごい人がいるんだ、って初めて気づいた。
おまけにスバルには魔剣ももらった。
彼の自作の剣らしいけどこれが結構すごい。
一つ目は大体なんでも切れること。力を入れなくてもスーッと切れる。
あとは、魔力を通しやすい。
魔剣は魔力を通さないと発動しない。
だから、基本的に魔力が通りにくい素材では作られない。
それにしてもこの剣の素材は魔剣のプロであるマーチェの目にもわからなかった。
(なんだろう?鉄かな?)
ただその分デメリットもある。
例えばものすごく重いことだ。
この剣は魔力を通すと重さが増す。
一応、身体強化魔法が使えるので、そこまで苦にはならないがずっと二つに魔力を流し続けると言うのは難しい。
(これはちょっと工夫しないとねぇ)
内心でいい戦法を思いつきながら努力をしようとするマーチェだった。
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二日がたった。
10時に冒険者ギルドの受付前で待ち合わせをした俺は、マーチェが来るのを待っていた
「おっはよー。」
「おはようマーチェ。あの魔剣は使えるようになった?」
「うん。まぁまぁ使えるようになったよ」
なんと。この二日間で大体使えるようになったって?
なんというセンスだ。天才の域を超えて怪物になれるのでは?
「……また失礼なこと考えているでしょスバル…」
うお?!なんで気づかれた?
「君はわかりやすすぎるんだよ」
と笑いながらキルーズさんが話しかけてきた。
「二人だけで大丈夫か?」
とニーシリーさんが言った。
「お前が心配することではないだろう?」
「はっはっはっ確かにそうだな」
二人が笑い合っていた。
「まぁ大丈夫ですよ。マーチェも魔剣が使えるようになってきたっていうし」
「っはは。そうだな。お前らならいけるよ」
とう言うわけで出発だ!
門のところを通る時にこの前の守衛さんにどこに行くか聞かれた。
依頼で魔物を狩りに行くと言ったらものすごく驚かれたけど納得はしてくれた。
まぁ、あんな熊を背負っていたら納得はするわな。
ところがそこで見送りに来たキルーズさんとニーシリーさんが騒ぎ始めた。
そういえば二人には行ってなかったな熊の魔物のこと。
そんなこんなで騒ぎながら俺とマーチェは森の中へ入って行った。
「……さてそれじゃこの前のところまで行きますか」
「もしかしてまた転移魔法陣で?」
「え?ああそうだよ?その方が楽だしね。一応あの街の門のところにも印を残しているし」
「はぁ〜またあれを経験できるのかぁ〜」
「よし、それじゃ起動するからそこに立って」
「は〜い」
「行くよ?」
ヒュンッ
ストッ
「ついたよ〜ってあれ?」
マーチェはめっちゃガクガクしてた。
「え?なに?今の。空中に浮かんでる気分がしたんだけど…」
そう言うことか。あれか、高所恐怖症的なやつか。
今度高いところに連れて行ってやろーっと
っとそれどころじゃない。
今回は一応依頼という形で来ているんだ。
さっさと狩って帰ろう。
そう思って受動探索魔法を起動した。
「ん?」
その受動探索魔法に何か大きな魔力がひっかかった。
「おいマーチェ…」
「だからいつも気づくのが遅いっていってるでしょ?!」
なんと。俺よりも先に気づいていたか。
にしてもこれは少しやばい。
今まで相対した熊とかの三倍の魔力がある。
「ちょっとやばいな…」
マーチェもそのことに気づいたのか、少し慌て始めた。
「え?ちょっとこの魔力大きすぎない?!」
「そうだな…これは少しやばいかも」
ドドドッ
しかも相手方もこちらに向かってきているということはこっちのことを探知できているということだ。
(相当な奴らだな)
ズザサァ
目の前に巨大な狼が現れた。
「ワオオォォォォォン」
『ワオオォォォォン』
っち。狼が呼応しやがった。
狼は魔物になっても集団行動をする。で、コイツがボスだとするとすぐに数匹が…
集まってくる。
「ええ?!スバルなんかめっちゃ狼増えてない?!」
「本当にやばいなこれは…」
そう言って俺は水の弾丸を辺りに撒く。
一応脳天にあたれば即死するやつだ。
しかし、みんな訓練されているのかそれとも経験したことがあるのか綺麗に避けられる。
(でも、これで終わりじゃないんだなぁ)
そう思って雷を放出する。
水系統は雷を通しやすい。これは前世の知識だな。
さっきの水のところ目掛けて雷を放つ。
もちろんマーチェに当たらないように極小のやつを、だ。
「ギャオオオォォォォン」
ついでにオーバーキルになるかもしれないけどまた水を撒く。
感電して動けなくなった狼の眉間にあたり、絶命していく。
しかし、最後まで一番最初のでかい狼は残った。
さっきの雷も本能的に危険を察知したのだろう。一番最初に動いて水がないところへ行った。
「…さて、最後はお前だ」
「むぅ、スバル私にもやらせてよ…」
「え?ああわかった」
そう言って俺は一歩下がる。するとマーチェは飛び出して行った。魔剣を発動させず。
足にだけ身体強化魔法をかけて。
「ハッッ」
狼の目の前で跳んだ。
その時、マーチェは魔剣に魔力を通した。
ぐわんっ
鞭のようにしなる剣が狼の目の前まで来ていた。
ボトリ
一撃か。っていうかあれあのマーチェだよな?
熊の魔物に怯えていたマーチェだよな?
でも、発想はいいな。重さを加えて切りやすくしたんだろう。
一撃で倒すほどの威力があったのか。
「ふうー どうだった?」
「完璧だったよ。しかしこんな使い方をするとはね…」
「あれ?ダメだった?」
「いや上出来だよ。じゃあそろそろ帰ろうか。もう日が落ちそうだし」
「えー?もっとやろうよー」
「だーめ。明日も来るつもりなんだから体は休めないと」
「……はいはい」
何はともあれこれで初仕事はクリアだな!
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