50.VS黒竜 【4】
まーた間が空いてしまいましたね……
気をつけるようにはしているんですが……
『くそっ……他の龍王たちも龍帝も分かってはおらぬのか……』
黒竜が落とされた渓谷には小さな光とたくさんの花があった。
『全く……こんなところに落としおって……』
「あー竜さんだー、みんなみんなー竜さんがいるよー」
小さな光が喋り、黒竜の周りに色々な光が集まってくる。
「本当だー竜さんだー」
「珍しいねー」
「どうしたのー?」
「なんでここにいるのー?」
『うるさい妖精どもだな』
「あー妖精って言った!」
「あははー私たち妖精じゃないのにねー」
「私たち精霊だよ花の」
「やっぱり竜さんたちには私たちは見分けがつかないんだね妖精たちと」
『ちっ……小賢しい……さっさとどっかへ行ってくれないか』
「あははーどっか行けだってー」
「ええーここは私たちの場所なのにー?」
「勝手に入ってきたのは竜さんなのにー?」
『ったく……精霊どもよ、ここから人間の大陸に行くにはどうすればいい?』
「えー教えよっかなー」
「どうしようかなー」
「竜さんたちってー」
「人間さんのこと、みーんな殺しちゃうもんねー」
『精霊ども、さっさと伝えろ』
「ふふふ……竜さん、ここがどこだかわかる?」
「竜さんが落ちてきたのはどこかの谷だと思うけど」
「ここはーー」
「「「「「大精霊の森」」」だよ」」
『な……!?大精霊の森?まさか……あの渓谷がここへ……?』
「そんなわけないよー」
「大精霊の森はね、君たちが住んでいる世界とは少し違うんだー」
「知らなかったでしょー」
「竜さんがここに来れたのはー」
「絶望したから、なんだよねー」
『何に……?』
「あははーやっぱりだー」
「なんも分かってなかったんだねー」
「竜さん、わざと暗示をかけているのかもしれないけど」
「黒いのに黒竜さんじゃないからねー」
「何に絶望したんだろうねー?」
「黒竜さんじゃなくなったことかなー?」
『貴様らッ……!……っく…はぁ……』
「どうしたのー?」
「攻撃しないのー?」
「なんだなんだー」
「弱虫だなぁー」
『精霊ども……!ここから出るにはどうすればいい……!』
「はははー」
「さっき言ったもんねー」
「ここは君たちがいた世界とは別世界なんだよー」
「出る方法はただ一つ」
「「「「「精霊と契約すること」」」」」
小さな精霊たちは口を揃えてそう言い、竜の周りを飛び交っていた。
『契約だと……?竜と精霊にそんなこと……』
「できない、って思ったでしょー」
「それが、そうでもないんだよねー」
「さて」
「なんで僕たちはここにいたでしょー?」
『精霊ども……!さては最初から……!』
「気づくの遅いなー」
「まったくーお母さんも物好きだなー」
「ねー」
「それじゃあ」
「いってらっしゃい」
竜の周りを眩い光が取り囲んだ後、大精霊の森から、五つの光と邪悪な気配が消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
『……戦っていないのではない。そういう契約だ』
「契約ねぇ……」
俺の前に憤然と佇む黒竜は何かを思い出したように遠い目をしていた。
同時に、黒竜の周りに五色の光が回り始めた。
「久しぶりだねー」
「そうだねー」
「死にそうー?」
「助けてあげてもいいんだけど」
「助けなくてもいいんだよねー」
黒竜から愉快な声が聞こえてくる。
「えーっ」
「竜さんよりやばい人間がいるよー」
「わーなにこれー」
「すごいすごいー人間なのにー」
「こんなことってあり得るのー?」
『勇敢だったな人間よ……だが、我は……死ぬわけにはいかない理由があるのだ』
そう言って黒竜は俺に向かって魔法を放ってきた。
火魔法<火球>、水魔法<水球>、風魔法<風切>
土魔法<岩弾>、雷魔法<雷撃>
火魔法<豪炎>、水魔法<水巻>、風魔法<竜巻>
土魔法<泥沼>、雷魔法<豪雷>
おおよそ人が生み出せる魔法の速度とは比にならない速度で、さまざまな魔法を繰り出してくる。
「ありえない量だな……っていうか、黒竜なのにそんな魔法って打てるんだっけ?」
俺は魔力に変換した呪力を大量に消費しながら防御魔法を展開する。
「スバル!あれは多分、精霊たちの魔法だと思う!」
遠くに離れていたラエルとノエルが俺に近づいてきて言う。
同時にバルジさんも近づいてきて口を開く。
「竜は……精霊と契約できないはずなんだが……」
「でも、黒竜が魔法を使うにはさっきの精霊の力を借りないと……」
「じゃあさっきの結界はなんだったんだ?あれも魔法だったんじゃないのか?」
『貴様ら……!いい加減に……!』
黒竜の怒りが最高潮に達したのか、地面がとても揺れている。
俺は全員に浮遊魔法と防御魔法を重ね掛けして誰も転倒させないようにした。
(…………なんだ…?この、さっきから感じる違和感は……)
また、黒竜が魔法を連続で放ってくるのを、俺は防御魔法<エリア>で、防ぐ。
と、同時に、獄炎魔法<舞>で反撃もした。
(ありえない…………何かがおかしいのに、その何かがわからない……)
他のみんなも、各々カバーをしながら着実に黒竜へダメージを与えている。
だが、見たところ黒竜に疲弊している様子はない。
「はぁぁぁぁっ!!」
マーチェは度々、黒竜に向かって剣を振り下ろしている。
先ほどまでは、剣を見るたびに激昂していた黒竜だが、今はそんなことどこ吹く風と、全員に向かって魔法を放っている。
(攻撃相手が全員……?いや、そんなことじゃないはずだ……でも……)
ラエルが逃げ遅れて、黒竜が放った魔法に当たりそうになる。
俺は、浮遊魔法と風魔法を使って加速しながらラエルを助けた。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。助かったよ、スバル」
俺はラエルを下ろして、もう一度考える。
黒竜の違和感。
標的の変化。
マーチェの剣に激昂していたはずが、今じゃ目的がわからない。
そして、現れた精霊。
竜は精霊とは契約できない。
なのに、魔法が使えないはずの黒竜は数々の魔法を……それも息つく暇もなく高速で放ってくる。
本来SSSSランクであるはずの黒竜が、Bランクの冒険者によって手傷を負わされるばかりか、こちらの被害はほとんど皆無。
根本的な話、なぜ出てきたのかもわかっていない。
今、ここのありえない状況。
頭の中に何か引っ掛かるような感じがしながらも俺は攻撃を再開した。
興味を持ってくださった方は下の星マーク、ブックマーク、感想等で応援よろしくおねがします!!




