49.VS黒竜 【3】
まーた間隔が空いてしまいました。
これからはできる限り早めに投稿したいと思います。
『むぅ……?何なのだ……?』
「は…………?」
視界が開けている。
さっきまでぼんやりしていた意識が一変してリフレッシュされている。
重かった体もいつの間にか軽くなっている。
手にあった呪力の塊も消えていた。
(今の一瞬で一体何が……?)
辺りを見ると、特に変化はない。
俺に言われて逃げていたみんなも戻ってきた。
「だ、大丈夫?怪我とかしてない?」
セイルはすぐに近づいて俺のことを心配してくれている。
マーチェも若干キョトンとしているが、心配そうな視線を送ってくれる。
「大丈夫だ……って、っ!」
手に激痛が走り、見ると、手のひらに黒色の丸があった。
「なんだ?これ……」
『我を横目に与太話か……余裕もいいところだな!!』
そういうと黒竜は今まで出してこなかったーー爪の斬撃を俺らに向けて飛・ば・し・た・。
「うわっ……って、え!?」
だが、それは俺たちに当たることなく、消えていった。
『な!?どういうことだ!?我の斬撃を手をかざすことなく無効化しただと……?』
「体が軽い……まだまだ戦えそうだな」
だが、黒竜も自分の攻撃が防がれたのがたまたまだと思ったのか、威勢良く言い返してきた。
『はっ、今のはたまたま避けれただけなのであろう?貴様のような小童が我に勝てると思うなよ!』
「いや……残念だけど、勝たせてもらうから」
『やれるものならやってみよ小童め』
「じゃあ先手……獄炎魔法<舞>」
赤色の炎が黒竜にまとわりつく。
だが、黒竜の咆哮によってかき消された。
『雑魚が。同じ手が何回も我に通じるとでも思ったのか?』
「そうだな……同じ手はあんまり使いたくないよな」
すると突然黒竜ブラックドラゴンへ雷が落ちる。
「誰も俺だけが攻撃するとは言ってねえからな」
俺が振り返ると、今まさに魔法を発動した後のパルムさんが立っていた。
『ちっ……人間風情が、群れやがって……』
「何言ってるんだ?群れるのは基本。そうしなきゃ生きていけないんだよッ」
俺の言葉が終わると同時に風の形をした刃が黒竜へ飛んでいく。
ノエルが放った魔法だ。
「これはお前の討伐依頼。お前のその角をもぎ取るだけで倒した証になる。なら、それ以外は粉砕してもかまわねぇってことだよな?」
『はっ、お前のような人間ごときにそのようなことができるはずが……ッ!?』
「何が、できないって?」
俺は軽くなった体に浮遊魔法をかけて浮かび上がり、爆発魔法の魔法陣を空中に描いていた。
描き終わると同時に俺の頭上に今までの数倍の大きさの青白い光を放つ球体ができていた。
「人間風情にやられる気分はどうだ?」
『ふっ、ふっ……そういうのは我が死んでからにした方が良かったのではないか?』
「はぁ?もう死ぬお前に言わないでおくやつがあるか?」
『もう死ぬやつか……それは一体誰のことなんだろうな?』
途端に、あたりが真っ黒に染まる。
『「黒竜の世界」……我ら黒竜に与えられた異能の一つ。これはお前らの攻撃が全て無効化される世界だ。これを前に使ったのはどれくらい前だったか……』
「へぇ……無効化ねぇ……じゃあこれ、投げてもいいんだよな?」
そう言って俺は自分の頭上にある青白く光っている球体を黒竜の足元に向けて投げつけた。
同時に爆音と共に煙が上がりあたりが見えなくなる。
『ふむ……やはりこの結界は最強であるな……』
「けっかい?なるほど……結界か……そういえば……」
そう言って俺は天井を見上げる。
とはいえ上下左右どこをみても真っ黒で黒竜も受動探索魔法で何とか捕捉している程度だ。
結界であれば、一番上の部分に強い衝撃を与えれば壊れるはずだったが……果たして中からでも効果があるのだろうか……?
『どこをみている?我はこっちだぞ?』
そう言って黒竜は斬撃を俺に向けて飛ばしてくる。
「残念だけど、さっきから何故か体の調子がいいんだ。下手に動かない方がいいよ」
それを俺は簡易的な防御魔法で防いだ。
『むっ……だが、貴様も我に攻撃することはできないではないか』
「そうだね…………もう、いいかな?」
俺は天井に向けて核熱魔法を放った。
着弾すると衝撃が空間内に一気に広がる。
ガラスが砕け落ちるような音がするのと同時に「黒竜の世界」が崩壊し始めた。
困惑して立ち尽くす黒竜目掛けて赤髪の少女が剣を振り下ろしながら崩壊しかけている「黒竜の世界」に入ってきた。
『むぅ……どういうことだ?なぜ我の「黒竜の世界」が破られている?』
「ああ、それね。結界なんだろ?天井に穴を開ければいい話だ。内と外から同時に攻撃すればそれぐらいはできるさ」
とは言え、半分は賭けだった。
マーチェたちがこの「黒竜の世界」にいないことはすでにわかっていた。
だが、威力不足で「黒竜の世界」が壊れなかったらどうするかはほとんど考えていなかった。
「これで最後の切り札は無くなったわけだ。どうだい?まだ戦うか?」
『誰が、最後の切り札だって?さっきも言ったはずだ。「黒竜の世界」は異能の一つだ。それも異能の中で特に最弱の部類に入るしな』
「へぇ……まだ強がってられるんだ。さっさとその力の全て見せちゃえばいいのに。」
とは言え、俺も先ほど核熱魔法を使用したことで、基本的な技は大体黒竜に見せてしまっている。
明らかに、黒竜より俺の方が不利だ。
『そうだな……ならば……「黒龍王の世界」』
もう一度、あたりが黒く染まる。
先ほどの結界の数十倍、漆黒度が増している。
「黒龍王……?あなた王だったの?」
黒竜に攻撃をしようとして近づいていたマーチェも今はこの結界の中に入っている。
結界の名前から今対峙している黒竜が黒龍王であると気づいたのだろう。
『そうだな……我は二つ前の黒龍王だ。元々代々黒龍王が継いできた技……貴様らにはデバフがかかり我にはバフが掛かる。魔力も物理攻撃もこの結界の中では全て無効だ』
「そうなの?魔法、使えるには使えるけど?」
そう言いながら俺は指に炎を灯す。
『ふん。使えたところで何も起こらんよ。我に攻撃を与えることもできない上に……その火、元々はそんな大きさじゃないだろう?』
…………そこがなぁ…………
「…………………!そうだ……ならこれを…………」
『なんなんだ?何もしないならこちらからいくぞ?』
そう言って黒竜は爪を俺に向けて振り下ろす。
明らかに間合いの外ではあるが、爪は一瞬で俺の目の前まできていた。
「さっきからそればっかだよな。少しぐらい違うの出してくれよ」
俺はそれを横に避けると、体の中にある呪力を一点に集め始めた。
「マーチェ。なんでもいいから今その場にとどまれる方法を使って。最悪、死ぬよ」
「はぁ!?今から何するつもりーー」
マーチェが言い終わるよりも先に魔法が発動した。
一気に風が吹き乱れ、その場に立っていることもできないくらいだ。
マーチェも黒竜も俺に引きずられるように風の影響を受け始める。
同時に、「黒龍王の世界」にヒビが入り始める。
「なぁ黒竜。お前、長い間戦っていなかったんじゃないか?」
『ぐっ………』
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『こんな雑魚が今まで黒龍王を務めていたとはな……甚だ恥ずかしい限りだ』
『貴様ら……誰にものを言って……』
『うるせぇよ老害ッ!今まで黒龍王の座に居れたことぐらい感謝しろッ!!』
『貴様らのように……「黒龍王の世界」が使えない若輩どもに黒龍王の座を渡す気にはなれんッ!』
『だがな、お前さえ居なければ黒竜の中で一番強いのは俺だ。お前さえ居なければなッ!』
そう言って若い黒竜は元黒龍王に対して、爪の斬撃を飛ばす。
切り傷だらけの元黒龍王は避けもせず、甘んじでその斬撃を受け入れた。
『……このような斬撃も逃れられないようじゃ本当に雑魚なんだな』
周りには他種の龍王と龍帝もいる。
赤龍王が口を開いた。
『黒竜……ただでさえ我ら龍種の中で最弱な貴様が黒龍王の座にいるのはあり得ない。黒龍王を続けたかったのならば、せめてその斬撃ぐらいは避けてやるんだったな』
『是。同じ龍王として恥ずかしい限りだ』
青龍王も赤龍王に続く。
『黒龍王ゼノスよ。貴様から黒龍王の称号と名を剥奪する。これからは貴様はただの黒竜だ。
ーーそれとそこの黒竜。お前はこれから黒龍王を名乗ることを許す。黒龍王アイリス、それがこれからの貴様の名前だ』
『はっ。謹んで拝命いたします。ーーじゃあな元黒龍王ゼノス。じゃなくて今はただの黒竜か……いや、追放された異端児の竜か。黒龍王アイリスとして伝えるよ。いや命令する。お前がこれから黒竜を名乗ることは許されない。わかったか?』
『アイリス。それだけでいいか?』
『はっ。龍帝様。』
『元黒龍王ゼノスーー貴様を龍王国から追放する』
こうして俺は暗闇の渓谷に落とされた。
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