48.VS黒竜 【2】
すいません。
今週来週は投稿のめどが立っておらず、予想としては一個二個投稿できるかどうかだと思ってます。
また投稿間隔が開きますが、ご了承ください。
「ばっ……!お前らなんできたんだよ!」
バルジさんたちの後ろにはラエルとノエルもいる。
あの二人とは、たまに話すぐらいの仲だが、それでも同年代だ。
腹を割って話すこともたまにはある。
ついでに、依頼の手伝いをしてあげたこともある。
「バルジさんたちはともかく、なんでお前らまでついてきてんだ!あぶねえだろ!!」
そう。彼らはCランク冒険者。
Aランク冒険者もバルジさんたちはまだまぁ、黒竜に立ち向かうことが出来なくはない。
「友達が大変だって時に安全な場所でいるのもな」
「俺たちだって少しは戦えるさ」
「それでも戦力差が開きすぎだろ!」
二人は黙り込むが、その間も、バルジさんたちは魔法や剣を使って黒竜に立ち向かっている。
「とりあえず、お前らは俺が空間魔法使うから早く街に戻れ!お前たちで敵う相手じゃない!!」
俺たちSランク冒険者でさえ満身創痍。
このままだと、黒竜にバルジさんたちが耐えられるのも時間の問題だ。
「ーースバル。この街に、どれぐらいの冒険者がいると思う?」
「突然なんなんだ!そんなのわかるか!」
「ここはセットポート。だから多くの冒険者が集まる。だけど、レベルは低い。君がこの前Bランク冒険者を滅多滅多にしたせいで、Cランク以上で今動けるのは僕たちしかいないんだ」
「そんな僕たちだけ帰ったらどういう反応を街の人がすると思う?」
「………………」
「みんな不安がってるんだよ。さっきの……伝説上のフェニックスみたいな竜。あれを多くの人が見た。」
「もうすでに不安が広がっているよ。それで僕たちが君たちを残して帰ったら、街の人は君たちが全滅したと考えるだろうね?」
「説明してもそれは変わらない。なぜ僕たちだけ街に戻されたか……それを知られたら、状況は絶望的なものになる。」
「僕たちがここを離れるわけにはいかないんだよ」
「…………大人しくしてろ」
「そんなはしゃげないよ」
話がまとまった後で全員で黒竜の方を見る。
傷はほとんどない。
「ちっ…………パルム!あれをやろう!」
「ええ…………まぁ、それが一番やりやすいやつですけどね……」
俺はすぐにバルジさんのそばに行く。
「何をやるんですか?」
「ああ……あいつを倒すことはあたしたちにはほとんど不可能だ。だから、パルムができる最高の魔法……封印魔法を使って数十年は眠ってもらおうと思ってな」
「封印魔法!?パルムさんが?使えるんですか?」
「ああ。なんでも、魔法学院時代にそっち関係のことをやっていたらしくてな」
封印魔法……じいちゃんがやっていた事を少ししかみたことがない俺は特に役には立たないだろう。
「わかりました。準備ができたら合図ください。それまで持ち堪えるんで」
「頼んだよ。あれに持ち堪えられるのは君ぐらいしかいないんだから」
そこまでバルジさんが言った時、黒竜がいた方向から何かが飛んできた。
咄嗟に避けようとするが、俺はあることに気づいた。
「……浮遊魔法!」
明らかに、地面を見た時に人型の影が映ったのだ。
地面について、衝撃を受けるよりは、浮遊魔法で浮かせた方がいいと思って使ってみたが…………どうやら正解だったようだ。
ゆっくり降ろすと、肩幅が広く、頑強そうなーー【戦士】さんがいた。
「おい、大丈夫か!」
「バ、バラードさんが吹っ飛ばされるって……」
パルムさんが一瞬、狼狽える。
確かに、この【戦士】さんは、バルジさんパーティーの中では一番、図体がでかく、強そうに見える。
それが黒竜に吹っ飛ばされたのだ。
セイルがすぐに黒竜の方から俺たちのところへ駆け寄ってくる。
元から支援系の魔法が得意なセイルはこの【戦士】さん……バラードさんに治癒魔法をかけようとしたのだろう。
だが、あることに気づく。
バラードさんが吹っ飛ばされたーー傷口が腐り始めているのだ。
黒く変色し、明らかにヤバそうな雰囲気を醸し出している。
「おいおい……!大丈夫なのか?これ……!?」
だが、セイルが、治癒魔法をかけると黒く変色していたところも含めて傷が全部癒えた。
「ああ……ありがとう、嬢ちゃん」
バラードさんはそうセイルに感謝の辞を述べる……が、今度は黒竜がこちらに向かってきた。
黒竜の攻撃による傷を一瞬で治すことができるセイルを危険視したのだろう。
こちらに向かって突っ込んでくる。
慌てて、全員散開しながら避けた。
すると、俺の手の上にあった呪力の塊は一度は膨張が止まっていたのにも関わらず、再膨張し始めた。
「ちっ……どうしようかな、これ……」
「スバル!方法はあるんだろ!?それを試してくれよ」
ノエルとラエルには俺の呪力のことについて少し話した。
だから、二人とも、このまま俺が呪力の塊を膨張させ続けたらとんでもないことが起こることは知っている。
(もう、決めるしかないか……)
俺が悩んでいるのは失敗した場合。
失敗したら、もちろん黒竜は倒せるとは思うが、その勢いがバルジさんやノエルたちに届かないとは限らない。
だが、膨張させ続けてもそれは同じ。
自分の手で人間は殺めたくない。
それは、俺の前世での決まりが俺を縛り付けていた。
自分を襲うーー自衛のためなら、と考えればなんとか心を落ち着かせることはできるが、単純に自分が意図的に誰か人間を殺めるのはしたくない。
元から、名誉の戦死とかは嫌いだった。
俺の前世のじいちゃんはいわゆるそれだったらしい。
誰かのために立派に死ぬ。
誰かってなんなんだ?
前世のじいちゃんは国のために死んだ。
それは本当に国のためだったのか……?
そういう悩みが俺の頭をぐるぐると回る。
そんな時期が俺にはあった。
それに、今この場にいるのは恥ずかしがり屋だった俺ができた友達、だ。
そんなのをわざわざ殺すようなマネはしない。
というか、殺そうとなんて微塵も思わない。
だったら答えは一つだ。
「全員、一旦俺から離れろ」
自分でも思ったより低い声が出た。
大気を震わせ、黒竜までもが一瞬俺の方向を見る。
「本当にできるの……?失敗して死んじゃうとかないよね……?」
セイルは心底心配そうに俺に声をかけてくる。
俺は答えなかった。
「とにかく離れろ。巻き添えを喰らうぞ」
「……っ!分かった。失敗しそうになったら逃げてもいいからね」
俺に釘を刺してマーチェたちやノエル、バルジさんたちも俺の近くから離れた。
「さて、こっちを見てくれると嬉しいんだがな黒竜。」
『お前が一番、我は嫌いだ。だが……失敗することもあるのだろう?』
「そりゃな……一回も試したことがねぇからだよ!!」
肥大化し続けている呪力の塊を両手で挟むように抑え込む。
それと同時に体中に激痛が走った。
「ぐ、グアアアァァァァァァアアッッ!!」
だが、膨張し続けていた呪力は鳴りを潜めている。
『くくくくく……やはり失敗か。貴様らのような人間ごときにそのような多大なモノを扱えてたまるものか』
火傷をしたように手のひらがビリビリと痛む。
さらに、体中に電撃が走るが如く、立っていられる状態ではない。
(やべぇ……意識が朦朧としてきた……)
目眩も立ちくらみもする。
段々と今まで視界にあったものがぼやけてくる。
遠くから誰か叫んでいる声も聞こえる。
(ああ……前にも似たようなことがあったな……)
そう思った時、暗転しかけた視界が真っ白に光った。
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