44.絡まれ体質のスバル
名称変更のお知らせがあります。
詳しくは活動報告をご覧ください。
「……っち」
俺のバルジさんたちの力判定がいとも簡単にセイルに弾かれる。
まぁ、俺も結構抑えていたしな。
セイルでもまぁ、押し返せるかもしれない。
「はぁ…はぁ……きゅ、急にはずるくないかい?」
「いや、今ので力は示せただろ、何か問題か?」
「い、いや!これは誰かが代わりにやったんだ!そ、そう!パルム先輩!あなたがやったんでしょう!」
「はぁ?じゃあなんでスバル君のところには防御魔法がないのに普通の顔でいられると思う?君だって息切れはしているよね?」
「ぜ、絶対に何か仕掛けがあるはずだ!」
「さっきからうるさいなぁ……そんなに俺に力を示して欲しいわけ?」
「ああ、そうだ。君みたいなやつはバルジ先輩の隣に似つかわしくない!」
「いや……あたしの方がスバルの隣は似つかわしくないと思うんだが……」
「そ、そうだね……」
バルジさんに続き、パルムさんも同意の声をあげる。
「は、はぁ?先輩達が似つかわしくない?き、君、何者なんだ?」
「いや、今更それはないでしょ」
「あはは……流石に実力がないって言われて喧嘩を売った挙句その後に正体を聞くってのは……」
「流石にないわね……」
俺に続きセイルとマーチェも追い討ちをかける。
……そろそろ正体を明かしてもいいんだがな……
「獄炎魔法<乱>」
せっかくなので実力の片鱗を見せてやろうと思う。
「セイル、マーチェ、さっきやったやつ、できる?」
「うん!スバル君のためならいつでもできるよ!」
「……少し自信ないかも」
珍しくマーチェは自信なさげだ。
「マーチェは……風魔法が使えるなら剣と一緒に<魔力合成>すれば?」
「……それもありね」
そういうと、二人とも魔力を集めだす。
俺は……何にもすることがないんだけど……
あ、そうだ!
あれに少し改良を加えて……
と、考えていると、体が浮かび上がる。
とはいえ、俺がいつも使っている浮遊魔法ではなく、少し辿々しいものだが。
セイルがやっているのだ。
一度教えただけでここまで進めるのは……まぁ、すごいことだ。
マーチェは、剣を取り出して風魔法で操っている。
俺は……先ほど出した獄炎魔法<乱>を自分の後ろに集めてあるものを形作った。
いわゆる炎の不死鳥、フェニックスもどきだ。
結構、緻密な魔力制御が必要で……
まぁ、死ぬほどじいちゃんに鍛えられたから別に苦ではないんだけども。
ちなみに俺たちに喧嘩をふっかけてきたやつは腰を抜かして、立てていない。
まぁ、フェニックスいるし、相手は浮いているし、自分の周りには炎が爛々とあるし。
あれで腰抜かさないBランク以下の冒険者がいたら知りたい。
いや、俺からしても恐怖だわ、これ。
とまぁ、周りの観衆も唖然としている様子を見るに力は示せたのだろう。
「はぁ……お前、だから言っただろう?こいつらはあたしらよりも上、Sランク冒険者なんだよ。潔く負けを認めな」
「…………っ」
走り去っていってしまった。
普通は謝るとかあるだろうに…………
「すげえな坊主達!Sランク冒険者なのか!子供なのに、すごいなぁ…!」
まぁ一応、すごいという自覚はあったりなかったり……まだまだじいちゃんやばあちゃんの足元にも及んでいないのでSランクといえども……って感じなんだが……
じいちゃんやばあちゃんに冒険者だったかと聞いたことはない。
というかそもそも冒険者ギルドがあること以前に身分証があるかどうかでさえ知らなかった。
あの時から……チートはないと思っていたのだがな……
とはいえ、今のままでもチートとはいえないのだが……
流石に能力を使うのが非効率的すぎる。
魔法とは別の能力……いやまぁ、一応、魔法なんだけれども。
使える量は年単位で見れば結構行くのだが、制限がなぁ……
一度に百、半分以上取り出すと精神的ダメージ。
チートなのかなぁ……?
「で、帰る?」
「んー、まぁ今日はもういいかな。明日、この街の資料室みたいなところ行って、その後訓練して、少し簡単な依頼受けて……それを三日ぐらい続けたら黒竜討伐かなぁ……」
「やった!それじゃあセイル!一緒にクレープ食べに行こう!!」
そう言ってマーチェはセイルの手を引っ張って、走り出してしまった。
セイルは苦笑しているが、別に嫌がってはいない。
マーチェの甘いもの好きも俺たちにとっては周知の事実だ。
というか、この前あったパルムさん。
あの人も確かマーチェに連れ回されたとか言ってた気がする。
それに誘うのが女子ってことは女子会みたいなものを開いているんだろう。
それに無理に関与するような野暮な奴じゃない…………と思ってる。
まぁ、今日は大人しく宿に帰って新しい魔法を開発するとするか。
………とはいえ、ただ単に前世の知識を使って魔法で復元するだけなんだけど。
…………それよりも、とある二人の行動が気になるんだけど……
…………あのさ?パルムさん?えっと……名前忘れたけど……【剣士】のかた?
手ぇ繋いでイチャつかないでもらえる?
ここ外だよ?
今すぐナニカいけないことをしようとしていそうな気がする。
というか、普段からそういう仲なのか?
だったら【剣士】の人はロ○コンってことなのか?
それでいいのか?パルムさん。
いや、別にパルムさんはロリってわけではないんだけれども。
普通に20歳超えてる成人女性なんだけれども。
身長が低すぎて、もうアレにしか見えんのよ。
…………バルジさん含め他の人が何も動じないということは平常運転なのだろうか……
…………いや。結構青い顔しているわ。
ってことは毎日、その……営みをしているわけか……
…………ご、ご愁傷様です……
普通にあれぐらいの年頃の人間がすぐそばで営みをしていて、発情しないわけがない。
いや、普通に迷惑。
俺でも、流石にあれは拒否だな。
どこかで円満な家庭を作ってもらってパーティーから追い出すまでするわ、俺なら。
…………なんとか耐えてください。
明日のバルジさん達の顔が見ものだな。
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「はぁ……」
俺は宿に備え付けられたベッドで仰向けになって考え事をしている。
核熱魔法…なんだが……もう少し扱いやすいようにしたい。
基本的に俺の戦術としては……獄炎魔法しか使わない。
爆発魔法は……そもそもが核熱魔法の下位互換だし、氷結魔法も獄炎魔法に比べると少し扱い勝手が悪い。
風魔法も……そういえば、水魔法と土魔法はほとんど使ったことがなかったな。
二つを同時発動させて氷結魔法にすることはあっても……個々で使ったことは多分ほとんどない。
というか……水魔法のいいところが浮かび上がらない。
それと……異空間収納を作ってみたい。
結構前にも似たようなことを考えたのだけれども……実はよくわからない。
そもそも異空間をどうやって作ればいいのかがわからない。別空間をイメージしても魔法は発動しないし……
ああああああ!!
むしゃくしゃする!
考えても考えても答えが出てこない!
「こんなことするぐらいだったら俺もクレープ食べに行けばよかった…………なんか食い物ねえかなぁ……」
そう言って辺りを見回すが、食べられそうなものは何もない。
「はぁ、下に降りるか……」
この宿も例の如く、2階に食堂がある。
高級宿なのもあってか、結構品揃えはよかった気がするが……この際、それはどうでもいい。
正直、考えすぎてものすごく腹が減っているのだ。
食って腹が満たせればOKです。
というわけで、階下に降りてきた。
席に着くと、どんどん食べ物が出てくる。
高級宿なのもあってか、俺に絡んでくるやつは…………残念ながらいた。
まぁさすが高級宿。
そこらへんの小競り合いはすぐに警備員が駆けつけてくれたことによって一時は収まった。
いやー、満腹満腹。
俺はほっこりした顔で部屋に戻った。
するとタスライトから久しぶりに声がかかった。
いや、久しぶりでもないんだけど。
ーーで、魔法研究の方はどうなんだ?何か新しい魔法でもできたか?
「それがなぁ……できたらいいんだけども…」
ーーその様子じゃ結構行き詰まってるようだな……
「いやさ、作りたい魔法はあるけど、それをどうやって再現するかがねぇ……なかなか上手くいかないんだよな……」
ーー…………俺は魔法なんてあんま詳しくないからな……何も助言することはできないんだよな……
「そうだよなぁ……ああ……ピザ食べたくなってきた…………って、ピザ!?」
俺は自分が前世で食べていたものを思い浮かべると同時にあることに気づく。
「あれって膨らんでるよな……元は小さな生地が空気が入ることによって膨らむ……これをイメージすれば……」
俺は空間に穴を開けるようにイメージした。
本当はこれだけじゃ本来何も起きないんだけども、そこからさらに穴を開けた場所を押し広げていく。
イメージでずっと閉じていた目を開けると……そこには空間の裂け目があった。
「これで……成功かな?」
空間を開けるだけじゃ意味がない。
異空間収納だからこそ、ちゃんと入れられて、取ることができないといけない。
俺は近くにあったペンを放り込んだ。
一度、裂け目を閉じる。
もう一度、同じような裂け目をイメージした。
今度は意外と簡単に裂け目が出てくる。
俺はその中に手を突っ込んだ。
手を閉じるモーションをして、異空間収納の裂け目から手を出すと、異空間では感じなかった感覚が戻ってきて、しっかりとペンを握っていた。
「よっし…!!成功だ!!」
俺は異空間収納の中に色々なものを突っ込んだいく。
先ほど作ってもらったオリハルコンの剣も入れた。
何個も何個も入れていくうちに気づいたことは、取り出す時は、自分の念じたものが取り出せるようになっているらしい。
つまり、俺が剣を持っていなかったとしても裂け目に手を伸ばせば…………あら不思議。
剣が出てきました。
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