43.ミスリルとオリハルコン
「いらっしゃい」
俺たちが店の中に入るとそう声がかかった。
「へぇ……意外とレトロなんですね」
「ああ。普段こんなところには来ないが……まぁ、大概ここも悪くないな」
「大概って……」
実際、ものすごくレトロで雰囲気があった。
壁にはいくつかかっこいい剣が飾られてるし、盾や槍とかもある。
奥の方には、汗をたらしながら、刃を打っている職人さんがいた。
店長さんも職人さんに似た格好だ。
……店長さんも打つのだろうか?
「何が欲しいんだい?」
「うーんと……ミスリルの剣を一本とオリハルコンの剣を一本お願いします」
「ミスリルの方は女性用、オリハルコンは男性用な」
バルジさんが補足してくれる。
どうやら女性用と男性用で握る柄の部分や重心などが結構変わるらしい。
ちなみに、ミスリルは軽いという理由からセイルに、オリハルコンのは俺のだ。
マーチェは……あれがあるからいいか。
そう思って、俺とセイルの分だけにした。
「っく……スバル君からのプレゼント……初めてで嬉しいはずなのに……この複雑な気持ちは何?」
セイルは何やらぶつぶつ呟いている。
「特注にしとくかい?それとも既製品がいいかい?」
そう問われて俺はバルジさんの方を見る。
正直言ってこっちの分野で俺が出る幕はない。
「それじゃあ……スバル、お金はあるんだよな?…………じゃあ特注で」
特注だと何かいいことがあるのだろうか。
「なんで特注なんですか?」
「まぁ……特注にも色々あるんだが……やっぱり、その人に一番合っているからだろうな」
フィットするというかなんというか……
いわゆる前世のボウリングの自分のボール、みたいな感じか。
マイボール持ってた友達、確かにストライク連発していたし……
まぁ、そんなもんか。
所詮既製品は借り物に似たようなものなんだろうな。
「わかった。少し打つのに時間がかかるから……そうだな、十分くらい待っててもらえるか?」
「ああ、はい。わかりました」
そう言って店長さんも奥に引っ込んだ。
代わりに女の人が店舗の中に入ってきた。
「すいませんねぇ……職人はたくさんいるんだから任せればいいのにっていつも言ってるんですけど……なぜか自分で打ちたいっていつも言うもんですからね……」
「いえいえ、大丈夫です。それで、料金の方はどれくらいになるんですか?」
「料金ね……えっと…………金貨15枚くらいかしらね……」
「金貨15枚ですね。…………これでいいですか?」
そう言って俺は懐から袋から金貨を15枚ピッタリ渡す。
ちなみにいつも30枚くらいは金貨を常備している。
「はい……はい。ピッタリですね。しっかり受け取りました。少し店内を見て回ってはどうですか?打ち終わるまで少し時間がかかりますので」
そう言って店主の奥さん(?)は奥に引っ込んでしまった。
その後少し怒号が聞こえたが……まぁ、気のせいだろう。
「にしても……ミスリルとかオリハルコンって希少じゃないんですか?」
この世界でミスリルやオリハルコンはつまり鉄の上位互換。
前世にはそもそも剣を使うなんて文化がなかったから、鉄の上位互換が何かでさえわからない。
とはいえミスリルは軽いと言うから……アルミニウムみたいな物なのだろうか?
まぁ厳密に違っても変わらないんだけども。
オリハルコンは硬いし重い……思いつくのがダイヤモンドしかないのは、それだけ有名だからだろう。
一番硬いと言われると前世のものじゃダイヤモンドしか聞いたことがない。
と言うことはオリハルコンは希少だと言うことだ。
ミスリルは……前世でどれだけアルミニウムが高価だったのがわからないから確証は得られないが……まぁ高かったんじゃなかろうか?
つまり……ミスリルもオリハルコンもそう簡単に手に入るものではないはずだ。
それなのに金貨15枚。
日本円に直すと150万円の価値しかない。
それも剣を作れるほどの量でだ。
鉱石といえば、魔石も一応その類になるが……
魔石はどこでも手に入る……石みたいなものだ。
でもミスリルとかオリハルコンとかは、魔石に比べて意外と高い。
ということはそこまで市場に出回ってないということだ。
「んー?そこまででもないぞ?セットポートは一応貿易の拠点になっているから結構な量の鉱石とか穀物とかが入ってきていて、商人達もここで取引するからそこまで希少じゃないぞ、っとはいえ、王国の奥の方……王都よりも奥はここの十倍ぐらいの値段がするらしいが」
まぁ確かに、ここは王国の貿易拠点。
物がたくさん集まって、ここから王国各地に物が運ばれると考えると……確かに、ここでは希少ではないかもしれない。
「ちなみに……どこで取れるんですか?」
「そりゃお前、鉱山に決まってるだろうが。ミスリル鉱山とかオリハルコン鉱山とか、逆に鉱山以外でどこで取るんだ?」
「…………人工で作れたりしないんですか?」
「はぁ?人工?鉱山でしか取れないやつをどうやって人工で作るんだ?」
ふむ。
前世では人工ダイヤとかは普通にあったが……こっちにそういう技術はないのか。
ダイヤに似た感じのだったらなぁ……
っていうか俺そもそも人工ダイヤの作り方知らないから、別にオリハルコンが作れるとかそう言う話じゃないんだけど。
「ま、まぁ気にしないでください。…………ってなんですかこれ?」
そう言いながら指を指すのは大きな斧と槍がくっついたもの……ハルバードがある。
俺の身長の二倍くらいの。
「こんなでかいの……誰が使うんでしょうね?」
セイルも同意してくれる。
そう、馬鹿でかいのである。
多分重さも……どこかにいる巨人じゃないと扱えないんじゃないだろうか。
「ああ、これな。お前らは知らんだろうが……というかさっきちらほらいたが、獣族の奴がいるだろう?あの中には身長が高い種族があってな。ここはセットポート、つまり貿易拠点だから多くの獣族も集まるわけで……こういう武器屋にはこんな感じのハルバードがあるんだよ」
「…………」
獣族か。
確かに、あの時治療院で見た猫耳の獣族は……多分違うけど、猫耳がいるならキリンみたいな種族がいてもおかしくないか。
まぁでも、流石に首だけ長いとかじゃないと思うけど。
「よーしできたぞー」
その後も少し常識を教えてもらっていると、店長さんが打ち終わった剣を持ってきた。
片方は銀色、もう片方は……なんか微妙な色。
きっと銀色の方がミスリルなんだろう。
「ありがとうございます。じゃあセイル、これ。」
「あ、ありがとう、(でも最初のプレゼントがこれって……)」
苦々しい顔をしているセイルだが、軽く、剣を振っていると思いの外軽かったのか、すぐにブンブン振り回し始めた。
それを取り押さえてついでに買った鞘の中にしまうと、俺は自分に手渡されたオリハルコン(純度100%ではないと思う)を軽く振ってみる。
手渡された時にも感じたが、重い。
とはいえ、鉄と大差ないが。
「……でも鞘の中に入れて持ち歩くのって少し重いしな……」
「お前はもうすでに背中に剣を背負ってるだろ。それ以外の持ち方はないから、諦めろ」
俺は背中にタスライト、腰に今打ってもらったばかりのオリハルコンの剣を差している。
セイルも、腰にミスリルの剣を差している。
……後で魔法付与でもしてみよう。
…………できるかは知らんけど。
ちなみにマーチェはいつも背中に剣を背負っている。
そっちの方が抜きやすいとか。
普通に考えると腰に差していた方が抜きやすそうに感じるのだが……
そもそも、いつでも抜けるようにしているっていうところがもうすでに戦闘狂思考なのよ。
そう思っているとマーチェに睨まれる。
「君たち、ずいぶん呑気だけど本当に黒竜倒せるの?」
そう心配してくるのは【魔法使い】のパルムさんだ。
まぁ、そういう心配も有難いんだが…………
「最悪転移魔法で逃げるから大丈夫ですよ。万が一でも死ぬことは多分ありません」
「ね、ねぇスバル?それフラグっていうの、わかる?」
マーチェにそんなこと言われるが……
魔法を使えるファンタジーな世界に転生した俺に敵などいない!
逆にウェルカムフラグ、だ!!
「やばい……私、なんだか死ぬ未来が見えたわ……」
「マ、マーチェも?わ、私もなんだか寒気が………」
ものすごく不名誉かつ酷い言われようを受けているが……
そんなにタジタジになるほど黒竜が怖いのなら着いてこなくてよろしい!!
そう二人に伝えると、二人とも躍起になって、そんなことない!と言い出した。
武器屋の外に出ると、周りを歩いている冒険者や市民から訝しい目を向けられる。
……これだろうか?
俺をそう思って、自分の腰と背中を見る。
…………これか。
周りの人の目をよく見るとまぁ、大体が俺の腰と背中を見ている。
うん。こんな子供が剣を二振りも持っていたらおかしいものだ。
もっと見ると、俺たち全員が目を向けられている。
……そういや、Aランク冒険者のことを伝説と言うんだっけな。
そんな生ける伝説と子供が一緒にいるんだ。
…………実際はその子供もSランクという伝説を超越している存在なんだがな。
…………それで今度SSSSランクの黒竜を倒しに行くとかね……
うん。怪訝な目で見られるわそりゃ。
そんなこんなで、街をぶらぶらしていると声をかけられた。
向こうはこっちのことを知っているようで……まぁAランクだからね。
「ねぇ、君たち、なんでそんなセレブといるの?もしかして……ただの縁故?実力がない人が、実力のある人にくっついて威張るって俺たち好きじゃないんだよね」
「ま、まぁ縁故っちゃ縁故だけども……」
「実力ないって」
「言われたくはないですね……」
突然話しかけられてきたと思ったら縁故かどうか?実力がない?
一番ないのはお前の見る目だ!!
「なんだお前?あたしらの恩人に喧嘩売ってんのか?」
「恩人?この子供が?バルジ先輩、よしてくださいよ。いくら親戚の子が可愛くたってそんな言い訳はないでしょう?」
「……テメェ……殺すぞ」
「そんなにいうんだったら証明してみてくださいよ。この子供に価値があるんだったら別に文句はありませんけど、ただの縁故、運で強い人の近くに行けるのはずるい。俺だって強い人に師事したいんですよ」
「はぁ……」
価値がある?文句?上から目線で言ってんじゃねぇ!!
どう考えてもBランク以下の冒険者……いけているようでいけていない、かわいそうな人が俺たちに力を証明しろと言ってきた。
今まで俺たちのことを遠慮なくジロジロみてきた人たちは、野次を飛ばす人と、大ごとになりそうだから帰って行く人の二手に分かれた。
「…………何で証明すればいいんですか?」
「力を証明すればいいんだよ、できるだけこの街に危害が及ばないくらいでな」
バルジさんにそう言われる。
まぁ、喧嘩を売ってきたのはあっち。
少し痛い目を見てくれないとこちらとしては立つ瀬がない。
「…………後悔するなよ?」
「雑魚の足掻きか?それならよそでーー」
言葉が終わる前に俺は雷魔法<雷撃>を使った。
正直、結構力を抑えていたし、大通りのど真ん中、かつ取り巻きの人たちも結構離れてみていた。
ものすごい轟音が当たりを包む。
少し申し訳ないが……バルジさん達にも当たってもらうことにした。
どれくらい耐えられるか……っていうのを試してみたかったんだ。
それなんだけど……
「ス、スバル君!?きゅ、急になんでそんな魔法を!?」
セイルがしっかり防御魔法を使って、全員守っていた。
……一度、このデータを消してしまい一から書き直しました。
今、ものすごく疲れています。
モチベアップのため、慈悲のブクマ&評価お願いします……




