41.セットポートで <中>
二日連続投稿!
「……え?で、伝説のって……Aランク冒険者ってすごいの?」
「ええ!?そんなことも知らずに冒険者やってんのぉ!?…………Aランク冒険者ってのはね、この王国内に百人といないんだよ。さらに言えばSランク冒険者は……この前新しく増えた冒険者も含めても十人もいない。大陸に行けば、もう少しはいるみたいだけど、Aランク冒険者ってことはこの国で百番目には強いんだよ!?」
……ふむ。
少し常識を知らなすぎたようだ。
っていうかそれにしてはサンポートの冒険者たちも結構常識知らずな気が……
それは置いといて。
なんといことでしょう。
いつの間にか、この国で十番以内に入る強さだったらしいです。
……もう、マーチェに魔法の訓練する必要なくね?
だってこの国で十番だよ?十分じゃない?
「っていうか君たちは何ランクなんだい?僕たちはCランクだから、教えてあげることもいくつかありそうだけど……」
「あはは…………実は、そのSランクなんだ。この前上がったばっかりでね。」
「「「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」
周りからどよめきが上がる。
「あ、でも、常識とかは教えて欲しいかも。あんまそういうことは知らないんだよね」
「じょ、常識が通じないってことか……」
そんな、自慢をしたのが行けなかった。
周りで、静観していたあるおっさんパーティーに決闘を申し込まれてしまった。
ここの常識では、格上は格下の相手をしなければならず、そのために、この冒険者ギルドには決闘場というのがあるらしい。
なんともひどい常識だ。
とはいえ、郷に入っては郷に従え。仕方なく、それを守ることにした。
それで、ギルドの受付嬢に、決闘の申し込みをしてしまい、それを正式に受付け……条件は特になしで、なんと多対一を申し込まれた。
ちなみにマーチェは暴走すると行けないので今は観客席に押し留めている。
決闘は模擬剣でやるらしい。
魔法はいくらでも使っていいみたいだ。
どうも、腕のいい治癒術師がいるらしく、怪我しても大丈夫だなんだとか。
まぁ、喧嘩売ってきたのは向こうだからいくらでも怪我さしても俺は別に何にも問われないしね。
決闘だし。
というわけで、いつの間にか決闘場に立たされていたわけだ。
どうやらおっさんパーティーは、Bランクパーティー。
おっさん五人で形成されている。
いやぁ……むさ苦しいなぁ……
なんて思っていると、リーダーさんから突っ込んできた。
多対一とは言え、最初は一対一でやってくれるらしい。
それは俺としても結構嬉しかったりする。
だって、無駄に広域に魔法を展開しなくていいじゃん!
ということで、この前魔人相手にやったように、魔法を使おうとした。
「雷魔法<雷撃>!」
と。
俺が、そういって魔法を放つと、リーダーさんはあっけなく伸びてしまった。
もちろん俺は唖然。
それよりも観客の人たちも唖然。
まさか、雷魔法一発で伸びてしまうとは思わなかった。
すると、今度は、四人で一斉に襲いかかってくる。
連携とかはなく、ただ単に突っ込んできているだけなのだが。
いわゆる、力で押して勝つ、という戦い方をしているのだろうか?
まぁそれでも勝てるならいいんだけど……
「……獄炎魔法<舞>」
一人、また一人と身動きを取れなくさせる。
全員の身動きが取れなくなった時点で俺は模擬戦用の剣で、それぞれの首にできる限り優しく、でも気絶する程度に当てた。
5分とかからなかったから、別になんの問題もない。
ただ、最後の人には強く首を打っちゃったので、少しだけ、診てあげた。
まぁ、元から頑強だったからか、全然なんともなかったのだが。
ギルド内の食堂のところに戻ると、最初に俺たちに話しかけてきた二人組の男の子が興奮気味に話しかけてきた。
「ねぇねえ!さっきのやつ、どうやったのか教えてよ!」
何度もせがまれるが、丁重にお断りさせていただいた。
流石に、後ろに控えている猛獣の突き刺すような視線に耐えられる俺ではない。
精神的なやつなんだけど。
その後、バルジさんの居場所をなんとか教えてもらい、合流できた。
すると、すぐにバルジさんからコソコソと言われる。
「やばいね、きみ。Bランク冒険者を瞬殺って、変態だと思うよ」
なんでそんな謂れを受けなくちゃいけないのか……と、困惑しながら、不名誉な称号をいただいてしまった。
「ところで、この町ではどんなことをするんですか?」
「ん……まぁ、オーク狩りかな」
「オーク?なんですか?それ」
「オークは、コブリンとオーガの中間種だよ。まぁ数十体のオーガを一瞬で倒せる君たちが相手すべきじゃない。」
「へぇ…………でも、数は増えてきているんでしょ?」
「う、ん……まぁ、一応な。でもスバルたちが行くほどではない」
「むむむ………」
「安心しろ。この街の外の森にもオーガはたくさんいるんだぞ。それにこの前は言っていなかったがオーガの肉はめっちゃうまいし」
「でも運ぶ手段が……」
「くくく……さっきの冒険者たちを使えばどうだ?あれだったら肉の一つや二つぐらい、普通に運べるだろ。」
……なんて腹黒い思考なんだ。
確かにそれは俺も一瞬頭の中にあったけれども。
「マーチェは……ってマーチェ!?どこいった?」
後ろを振り返ると、今までしっかりついてきていたはずのマーチェが見当たらない。
すると【魔法使い】パルムさんが教えてくれた。
「あそこ。依頼ボードのところにいるよ」
確かに、マーチェは依頼ボードのところにいた。
ある依頼が気になったようだ。
近づいて俺ものぞいてみると……
「はぁ!?ドラゴン討伐ぅ!?」
マーチェがのぞいていたのは、森の奥にある谷底にドラゴンが住んでいて、それを討伐にて欲しい、とのことだった。
「あの……正気ですか?」
ドラゴン討伐依頼はSSSランクだ。
軽くオーガの討伐難易度の百倍はいく。
「正気だけど?倒しに行こうよ、これ」
「いやいやいや!無理に決まってるでしょこんなの!SSSだよ!?俺たちマジで死ぬよ!?」
いくら常識がないって言われた俺でもこれぐらいはわかる。
流石にドラゴンーー龍とも呼ばれるーー個体は無理だ。
風の噂ではSランク冒険者二組とAランク冒険者五組で討伐しに行って全滅したとか。
流石に今の俺たちで討伐できる生物ではない。
「何?倒せないの?スバルって、そんなに弱かったっけ?」
「弱かねぇよ!!ドラゴンが、龍が強すぎるだけなんだよ!」
「ま、なんとかなるでしょ」
「あ、あのさ、ちなみに何龍なんだ?」
「黒竜だけど?」
「いやSSSSじゃねぇか!!」
ちなみに龍と言ってもランクは変わる。中でも最強種の虹竜は未知数Zランクだ。
金竜、黒竜はSSSSランク、それ以外はSSSランクだ。
ただでさえ、Sランク相手に百体も倒せないのにいきなりSSSSランクはやばい。
そんなの無理に決まっている。
「っていうか誰だよこんな依頼出したやつ!よく生きて黒竜だってわかったな!」
この討伐依頼が出ているということは誰かが、行って確認したということ。
黒竜相手に、生きて帰れる奴なんてほとんどいないのに、誰かが黒竜だと確認して依頼を出した。
「こんなの依頼主がやれ!黒竜だってわかったんならそれぐらいできるだろ!」
少々錯乱してしまった俺は、ギルド員に取り押さえられるまで、少しだけ暴れていた。
「この度は、誠に申し訳ありませんでした。お詫びとして、無償で黒竜を討伐してきます」
現在、ギルド長室にて土下座中。
俺が暴れたせいで……微々たるものだけど損害が出た。
割に合わないけど…………まぁ、誰かが救われるということと、街の不安分子を減らすために、無償で黒竜を討伐することになった。
「はぁ……だから言ったでしょうーに」
「……俺はSランク冒険者を土下座させていいのか?罰だからといって無償で黒竜討伐なんてさせていいのか?」
「大丈夫ですよ、スバルはこれくらいしないと罰にならないんで」
マーチェは庇うどころか俺をいじめてくる。
これは魔法練習の腹いせなのだろうか……?
……………………ま、やるか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、朝。
「あの……腕、引っ張らないでくれますか……?」
「だめ。そう言ってまた逃げるでしょ」
「ちゃんと教えますから。腕をつねるのだけはやめてください。意外と痛いんで」
「二人とも……」
最近、神の福音が聞こえなくなったと思っていたら、どうやら神は猛獣相手に仲裁することを諦めたらしい。
俺は、腕をつねられつつ、マーチェに街の外へ連れ出された。
…………印とか付けとくか。
ちなみに宿と冒険者ギルドは結構行き来するのですでに印を付けている。
「で、何が知りたいの?」
「スバルがいつも使ってるやつ。火魔法の進化版とか、氷の魔法とか。あーいうの、どうやって出しているのか知りたい。」
「はぁ…………獄炎魔法はそこまで難しい話じゃなくて、風魔法がちゃんと扱えればできるよ。風の向きとか速さとかを自在に調整できるようになれば、それを火魔法に当てて少しずつ操作するだけだから。俺は無意識にできるようになったけど」
無意識でやる魔法……その最たるものが獄炎魔法<舞>だ。
自分で風魔法を使って操作しているつもりはないが勝手に相手の体にまとわりついて活動不能にすることができる。
まぁでも、一応炎ということで、どこそこの暴漢を捕まえようとこれを使うと、火傷して最悪死ぬのでほとんど使わない。
「氷結魔法は……風魔法で、水魔法によって生成した水を急速……ここでは0秒で凍らすことでできる。こっちもそこまで難しい話じゃないし、マーチェの持ってる<魔力合成>ならより簡単にできると思うよ」
「ふーん……話がうますぎてどこか怪しい…………」
いやいや。これ説明してって言ったのあんただからね!?
自分で言っといて怪しい、はないでしょう!?
はぁ……また錯乱しそうだ…………
「セイルもやるか?」
「うーんそうだなぁ……私は、浮遊魔法とか、爆発魔法とかやってみたい!」
「うーん……そうだなぁ……浮遊魔法はそもそもの物理学的にこの世界の人は重力ってもんを知らないからなぁ……」
「?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。うーんと、じゃあまずは、たとえば、りんごは手から離すと地面に落ちるだろ?で、この世界って、球面だから、この世界の反対側から考えると、この世界の中心に向かって必ずりんごは落ちるんだ。」
「ふんふん」
「で、つまり、この世界の中心には何か物を惹きつける力があるんだ。それが重力。重力がなければ、俺たちはずっと浮いている状態になる。それに木とかも地面に根をはれない。そもそも、地面自体が重力によって固められた物だと考えていい。で、それをイメージする。そうすると自分か相手に重力がさらにかかって……体感的に重く感じる。それを逆にするようにイメージすれば浮く。つまり、浮遊魔法ができるっていうことだ。ちなみにちゃんと風魔法で制御しないとずっと上に行くことになるからそこは気をつけないといけない。とはいえ俺がいるから最悪重力魔法をかければそんなことは起きないんだけど」
「ふんふん?」
「ちょっと何言ってるかわからないわね……」
「まぁ、つまり頑張ってみろってことですね!」
そう言いながら、セイルは魔力を集め出す。
「ものを重くするイメージでいいよ」
そうアドバイスする。
そういうとセイルは木に重力魔法をかけたようだ。
木が地面を抉ってめり込んでいく。
「ヤベェな。なんちゅう才能だ」
実際に相当やばい。
こんな魔法は一度伝えただけで再現できるような代物じゃない。
しかも教え下手な俺が。
「じゃ、今度は逆のイメージをしてみてね。物を軽くする、でもいいけどそれじゃあ浮くことにはならないからそこはまぁ頑張ってなんとかして」
……やっぱりセイルは天才だ。
さっきまで地面にめり込んでいた木が、今は地面から出て行こうと必死に足掻いているように見える。
つまり、しっかりと反重力魔法ーー浮遊魔法が機能しているわけだ。
「それを自分にかけえてみな」
すると、浮かびかけていた木は地につき、代わりに数秒後にセイルが浮いた。まだ数十センチといったところだが、確かにちゃんと浮いている。
「…………俺はこれを習得するために結構かかったんだがなぁ……」
なんかこうも簡単に破られると……
まぁ確かに、セイルは結構、俺に浮遊魔法をかけられているから、どんな感じか容易に想像できたからなのかもしれないけど。
少し悔しいなぁ……
もう一方は。
なんか風魔法で木々を薙ぎ倒していた。
副題を『セットポート観光』に
しようと思ったけど全然観光してなかったからやめた。
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