37.襲撃 <続>
37話!節目の話ですねぇ〜(意味深)
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ーーどうする?このまま俺のことを振るえるのか?
「はは……流石にそれは無理そうだ……こんなにいるんだったら俺の今制御できる魔力量じゃ太刀打ちできない」
目の前には砂煙をもうもうと立てて走ってくるオーガがいる。
よくよく見ると、オーガが立てている砂煙は結構奥の方にもある。
つまり、今ここにいるオーガの二倍近くはいると言うことだ。
「マーチェたちを呼ぶか…………」
そう言って俺は少しだけ空気中から魔力を集めた。
マーチェたちを呼び出す召喚魔法はそこまで魔力を使わない。
俺が素の状態で集められる魔力の半分ぐらいだ。
俺は、魔力を集めた後に、目を閉じて頭の中で召喚魔法の魔法陣のイメージをした。
頭の中にあるイメージが出来上がるに連れて、俺の目の前の地面が光り、召喚魔法の魔法陣が描かれていく。
完全に召喚魔法の魔法陣のイメージが出来上がった時、目の前が光った。
目を開ければ、ポカンとしているマーチェとセイルがいた。
「呼び出せたっぽいな」
「ええ!?スバル?って言うかここどこ!?何あのオーガの大群?」
困惑しまくっているマーチェと反面、何か落ち着き払ったセイルは、俺に治癒魔法をかけた。
セイルの治癒魔法は「癒したい」という気持ちによって発動するので、単なる外傷以外にも、心の傷とか、精神上の傷とかも治すことができる。
一瞬で、俺が魔力を大量に使うことによって精神的ダメージを負っていると看破したセイルは俺に治癒魔法をかけてくれたのだ。
「ふ……ふぅ…ありがとう、セイル。と言うわけで、マーチェ、あのオーガの大群、半分には減らしといて」
「ふーん……半分ね……別に全部でもいいのだけれど、スバルがそう言うから半分にしてあげるわ!」
そう言って腰に下げていた魔竜剣を抜いて、オーガの大群に切り掛かっていった。
とはいえ、オーガは巨体な上、皮膚もそれなりに硬い。
何より、力が強い。
俺は、セイルに治癒魔法をかけてもらいながら、マーチェがオーガを倒していく姿を見ていた。
傍若無人に剣を振り回すマーチェは舞を踊っているようだった。
連携が取れていないオーガたちは我先にと、マーチェを掴もうとして切られている。
だが、絶命するまでには至っていない。
このままではジリ貧で、いつか先にマーチェの体力の方が切れてしまう。
ちなみに俺の呪力を魔力に変換するには、クールタイムがある。
……ま、15秒なんだけど。
で、俺はあと10秒ぐらいは呪力を魔力に変換することはできない。
オーガを一気に殲滅させることができる魔法……獄炎魔法<乱>でさえ、コブリン百体しか倒せないので、難しい。
それぞれの魔法にこめる魔力量を増やせば、放つ魔法も威力が格段に上がる……が。
魔力量を増やせば増やすほど俺にかかる、精神ダメージは大きくなる。
さらに魔力量100を一度に使い果たすと、半日は寝込むことになる。
と言う理由から、俺はいつも使用している魔力量をセーブしているのだが。
今、この状況じゃ出し惜しみするなんてことはできない。
核熱魔法……纏わせるウランや水素の量によって威力と使用する魔力量が変動する。
最低のものでも二十の魔力を使う、燃費が悪い魔法だ。
まぁその代わり見返りとして強大な威力が発揮されることになるんだけれども。
方向指定とか、圧縮の密度とか、細かい設定をすればするほど、使用する魔力量は増えていく。
だからと言って大雑把なやつじゃあオーガたちを倒すことはできない。
魔竜剣を持って駆け回っているマーチェを眺めて俺は一つあることを思いついた。
「魔法……付与か」
数年前に、剣に重力魔法を付与したことがあった。
あの時はやり方もよくわからんままやったからできた副産物だ。
あれから一回も魔法付与をしたことがないが……
…………ま、なんとかなるか
「セイル。なんか武器、持ってない?」
「えっ?武器?…………武器かぁ……ああ!そういえば私、剣があるの知ってるよ!転移魔法で行って間に合うかなぁ…?」
「わかった。どこにあるんだ?」
「うん。ジェパードさんの治療院にね、冒険者さんがいっぱいきていて、治療費を払えない人とかが剣を対価として置いていってるんだよ。だからジェパードさんに事情をいえば多分くれると思う。なんだったら私もついていこうか?」
「そうか。わかったありがとう。セイルはここにいてくれ。マーちぇに万が一があった時、セイルがいた方がいいから」
というと、セイルは少しむくれた顔をして承諾した。
「それじゃあ頼んだよ」
そう言って俺は呪力を魔力に変換して、転移魔法を起動した。
俺は、基本的に行ったことがある施設には基本的に全部目印をつけて置いている。
一応、例の治療院のところにも印はつけてある。
…………二階に。
急に現れたらびっくりするだろうな……
なんてことを考えながら俺は転移魔法を使った。
周りの景色がついこの間行ったばかりのところへと変わる。
目の前には口を顎が外れるくらい開けているあの時の女医さん…ジェパードさんがいる。
「あ、どうもこの間はお世話になりました」
「えええっ!!い、今、な、何もないところから……も、もしかして……ゆ、ゆゆゆ幽霊!?」
しどろもどろになってなかなか呂律が回らないジェパードさんを微笑ましく見ている……時間はなく、あたふたしているのを無視して用件だけ伝えた。
「えっ!?セイルが?じゃあ君はこの前のーー」
「はい。そうです。なので、少しの間だけ剣を貸してくませんか?」
「ええ。そう言うことならわかったわ。一階の受付の奥のところに置いてあるから勝手に取っていって構わないわ。今、こっちは手が離せないの。案内してあげられなくてごめんね」
「いえ。ありがとうございます。それでは」
そう言って俺は階段を駆け降りた。
受付の机を飛び越えて奥の方へ進む。
途中で獣族の女の子とぶつかった気がするが……今は緊急事態なのでそんなのは気にしてられない。
マーチェがあの量のオーガに耐えていられるのも時間の問題だ。
早くしなければ……と思って走ると、奥の方の傘立てに似たところに十本近くの剣が入っていた。
ーーあれだ。左から三本目の持ち手が黒がかった青の剣だ。
そうタスライトに言われ、俺はそれを抜いた。
そして、同時に頭の中で転移魔法の魔法陣をイメージし、魔力を込めた。
景色がフラッシュバックして、戦いの場が見えてきた。
……あそこで付与すればよかった……
壮絶な戦いを前に俺はそう思う。
俺がここを離れている隙に他の冒険者たちや騎士たちが集まってきていたようだ。
その大半は剣を使った肉薄で近接戦闘をしているので、死体が折り重なって地面に倒れている。
血生臭い匂いもするし、周りの木々に誰がやったとは言わないが火が燃え広がっている。
マーチェは先ほどよりかは速さが遅くなっているものの、まだ舞っていた。
俺は少し離れたところで、剣に魔法を付与した。
先ほどの魔法連発による精神的ダメージはもう安らいできた。
俺は飛び出していった。
周りに群がってくる、オーガを薙ぎ倒していく。
マーチェの方を見る。
マーチェ自体が舞っているように見えるが、どちらかというと剣についている炎がそれを誇張しているとわかる。
……あれ、真似できそうじゃね?
そう思った俺は、獄炎魔法<乱>に少しだけ改良を加えた。
「よし、これでもくらえぇぇぇ!!獄炎魔法<舞>!!」
マーチェの動きとほぼ同じ動きをした炎がオーガに向かっていく。
だが、位置が悪かったのかオーガとオーガの間を縫って炎が通る。
……当たらないんかい!
しかし、俺はあることに気づく。
獄炎魔法<乱>だと、放った炎は一瞬で消えるが、獄炎魔法<舞>は炎が消えなかったのだ。
だんだんと網状に張り巡らせられる炎。
それに対して焦って逃げ惑って、自分から炎の中に突っ込んでいく奴もいた。
だが、動かなければ当たらないとわかったのかみんな動きを止める。
そこにマーチェが突っ込んでいった。
俺も先ほど付与した剣を使って突っ込む。
走っている途中でタスライトも抜いた。
二刀流は初めての試みだけど……ま、気合いでなんとかなるさ
俺は、今さっき付与したばっかの剣をタスライトに切りつけた。
ーーおわっ!?何をする!?
「ああ……ごめんちょっとだけ我慢して」
何回も何回も剣と剣を打ちつけていく。
タスライトを左手に、さっき作ったばっかの剣を右手にもち、右手に魔力を流した。
途端に、風の刃が飛ぶ。
それは、オーガたちの首を正確に捉えて、きっていった。
だが、オーガともあればただの傷はすぐ再生してしまう。
ところが、その再生効果は発揮されなかった。
なぜなら、飛ばした風の斬撃にタスライトの再生阻害の能力が上乗せされているからだ。
剣を打ちつけたのはそのため。
タスライトは触れたもの全てを再生阻害の対象にする。
つまり、魔法陣をちょっといじれば、再生阻害をそのまま別の剣に移し替えることも可能だ。
タスライトにも能力はそのまま残っている。
つまり、一時的に能力を借りただけだ。
だが、それによって、オーガはどんどん数を減らしていった。
しかし、さらに奥からどんどんオーガやコブリンが出てくる。
(……埒が開かない。こうなったらもう)
俺は呪力を魔力に変えた。
出力90。核熱魔法。
周りにある、水素、ウラン、酸素をありったけ集めていく。
全部ごちゃ混ぜにして圧縮。
内側から崩壊させるのと同時に方向を指定。
核熱魔法を起動、魔法陣を展開。
目の前が真っ白になるのと同時に、俺の意識は暗転した。




