34.昇格
結構空いちゃいました。
文字数は増やした(つもりな)ので、
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「さて…と……とりあえず、宿に置いといた魔石にでも取りに行くか」
俺は転移魔法でサンムーンの街の門のところまで飛んだあと、冒険者ギルドにて、Sランクに昇格するため、宿に置いといた魔石を回収しに行こうとした。
ーーサンムーンにいたのか?
「ん?そうだけど」
ーーあそこまで遠いだろうに……よくこれたな…………って転移魔法があったか
「いや。マーチェの魔族の里に行けたのはたまたまなんだ。転移魔法の罠に引っかかって。っていうかよくここがサンムーンだってわかったな」
ーーああ。俺は……世界一周していたからな。大体の国の主要都市は覚えているつもりだ。
「ふーん。そうなんだ。それじゃあここから国外に出る方法も?」
ーー国外……か。そうだな……セットポートまで行けばいいが、ここからじゃな……
「やっぱり。知らないんだ高速船のこと」
ーー高速船?なんだそれは?
「ああ。いつできたかはわからないんだけど、サンポートとセットポートを結ぶやつだよ。徒歩で行くよりもそっちの方が早いからこっちまで回ってきたんだ」
ーーへぇ。意外にもしっかりと考えてるんだな。
「意外にってなんだ、意外にって……」
そう言いながらどんどん宿に近づいていく。
「そういえばさ……お前、鞘とかないの?このまま持ち運ぶの大変だし悪目立ちするんだけど」
ーー鞘、か……そういえばなんかあったような気がするが……?
「まぁなんだ、そこら辺の武器を売っている店にでも言って特注で作ってもらうか。お前でかいし」
ーーでかいとはなんだ、でかいとは……俺はそこまでデカくねぇぞ
「っと。やっとついた。」
俺たちが話している間に、宿に着いた。
俺は部屋に置いておいた魔石を取るために階段を上がっていく。
部屋の机の上にある魔石が入った袋を手に取った。
「うーん……」
ーーなんだ?どうかしたのか?
「いやさ、この魔石あるじゃん?これ意外とデカくて嵩張るし重いんだよね」
ーー…………それは仕方ないんじゃないか?
「まあそうなんだけど……できれば楽したいなぁって」
そう言いながら俺は思考を巡らす。
前世ではこういう異世界ものには「異空間収納」がつきものだった。
でもこの世にはどうやらそう言う発想はないらしい。
そもそも「異空間収納」のイメージがよく思い浮かばない。
異空間のイメージってなんなんだ?
別世界……ここでいう前世のイメージでもして繋げば…………
いやだめか。
前世に繋いでいるって言うことは誰かに取られてしまう可能性もある。
自分だけが使えて収納できたりする感じがいいからなぁ…………
ーーそれはそうとお前あの里の結界どうすんだ?壊したまんまだろ?
「ああ。そういえば………ああ!結界!」
ーーなんだ?なんかしたのか?
「いやさ、俺の転送魔法を使って、そのまま結界を転送した先に送ればいいじゃん!そのあと召喚魔法で取り出せば……」
ーーお前結界魔法が使えるのか?そしたら魔王級だぞ?いやもはや魔王と言っても過言ではないし……
「……そういえば結界魔法、使えなかったわ」
ーー……アホらし。
「うーん……」
ーーほらとっとと冒険者ギルドに行くぞ。あの二人も待ってるだろうし
「……はぁ、また今度考えるか……」
そう言って俺は宿を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
冒険者ギルドの中に入ると色々と騒がしかった。
騒ぎの中心にいるのは筋骨隆々のハゲのおっさん。
それと持ってる人の身長と同じくらいの杖を持っているメガネをかけた人。
まるで一触即発の状態だ。
それを止めようとしているギルドの受付の女の人。
野次を飛ばす人もいれば、何かと話し合っている人、完全に無視している人や、オロオロしている新人のギルド受付員の女の人。
まるで混沌を表しているような感じだった。
「何があったんだろうなー……」
ーー色々と騒がしいな……
俺は鞘にさしていない剣を片手で持っている。
さらにその剣は刃の部分が漆黒だし、意識さえ持っている。
普通に考えればこのギルドに入った時点で騒ぎになるところだが。
そうはさせない状況があった。
(これじゃあSランクに昇格することどころか、魔石を鑑定してもらうことさえできなさそうだな……)
そう思い、どこか席に着こうと辺りを見回すと、窓際にマーチェとセイルが座っているのが見えた。
周りにある喧騒などどこ吹く風と外の風景を眺めていた。
近づいて声をかける。
「ここにいたのかセイル、マーチェ。気づかなかったよ」
そう俺が声をかけると、今俺が近づくまでまるで気づかなかったと言わんばかりに首を思いっきりこちらに向け、そして驚愕の表情をした。
「……もう、終わったの?」
セイルに問われる。
「ああ。思ったよりもこいつが有能でな」
そう言って俺は持っている剣を見せびらかすように掲げる。
ーーこいつってなんだ…
そうため息が聞こえる。
それはセイルにもマーチェにも聞こえたようで、二人とも辺りを見回す。
それを見た俺は少し笑ってしまった。
「な…何よ……」
そうマーチェがいう。
「いや、二人の反応が面白くてね。そういえばマーチェ。もう体は大丈夫なのか?」
「う…うん大丈夫。………ありがと」
最後の方はよく聞こえなかったがまぁマーチェが大丈夫だってことはわかった。
その時、俺たちの背後で大きな音がした。
振り向くと、そこにはさっき騒ぎを起こしていた、筋骨隆々の人がもう一人の魔術師みたいな人を殴ったみたいだ。
少し取っ組み合いが続く。
普通に考えれば、筋骨隆々の人が勝つ以外の選択肢はないのだが。
魔術師と思われる人は身体強化魔法を駆使して、対抗している。
取っ組み合いが始まったせいで、今まで止めようとしていたギルドの受付員の人はますますオロオロし始めた。
(……流石にやばいか)
そう思った俺は、タスライトを、机に立てかけ、筋骨隆々の人の背後へ向かった。
完全に筋骨隆々の人のペースだ。
だんだん、魔術師の方は息切れを起こし始めてきた。
「……あのーうるさいのでやめてもらっていいですか?」
「あぁ゛?うるさいだぁ?このちびっこが」
そこまで筋骨隆々の人が言うと、周りから声が飛ぶ。
「マーシュクラインさん!その坊主、一応Aランクらしいぞ!」
「んぁ゛?このチビがAランクだぁ゛?」
はぁ……と俺は内心で大きなため息をつく。
どこの世界に言ってもこういう輩は減らないみたいだ。
少しかまをかけ……なくてもいいか。
とりあえず威圧できそうなの……特大の風魔法で少し、周りのものを巻き込むかもしれないけど……
…………ま、いっか。
そう思った俺は呪力を魔力に変換させた。
それなりの量で、普通の風魔法<渦風>の十倍くらいはある。
そのまま、風魔法<渦風>を展開した。
周りの椅子や机が吹っ飛ぶ。
だが、周りの人にあたらないように少しづつ操作して、だ。
筋骨隆々の人もすごく立ちづらそうにしている。
まぁだが、他の人の迷惑にならないように筋骨隆々の人だけに風を当てている。
「うるさいので静かにしてもらえますか?」
そう少し威圧的に言う。
俺は<渦風>を終わらせた。
「ちっ!覚えてろよ!」
そう筋骨隆々の人は吐き捨てて、ギルドから出ていった。
「ふぅ………」
俺がため息をつくと、周りから歓声が上がる。
「坊主!すげぇな!今の<渦風>なのか?」
「かっこよかったなぁ!」
「せいせいしたぜ!ありがとな坊主!」
口々に褒めたてられる。
ここに来たばっかの時とは大違いだ。
「ありがとうございます!こんな時にいてくれて助かりました!」
そう、受付員の人にも感謝の辞をもらった。
こう考えると、俺の身長が周りと比べてものすごく小さいことがわかる。
まるで周りが巨人みたいだ。
そんなことを思いながらマーチェとセイルのところに戻る。
「すごいですね!スバル君、あの魔法どうやったんですか?」
「ん?あれは普通の風魔法<渦風>だけど?」
「ええ?!<渦風>ってあんなに威力高かったんでしたっけ?」
「ん……さぁ?結構魔力使ったけど、あんましって感じだな」
「へぇ……やっぱりスバル君はすごいね!」
「ああ、そうそう身分証、貸して」
「身分証?なんで?」
そうセイルが聞いてくるがマーチェは普通に渡してくる。
「あれ、終わらせたって言ってたよね。じゃあ、はい。」
そうマーチェが言うと納得したようにセイルも自分の身分証を出してきた。
「昇格かぁ。もうSランクなんだねぇ……」
俺らがAランクになったのはまだ数ヶ月前だ。半年も経ってない。
普通のパーティがFからSになるまでは軽く十年近くかかる。
まだ、俺らは始めて二年とちょっとだ。
ものすごく早いだろう。
「ああ。ありがとう」
二人の身分証を受け取った俺は落ち着いてきたギルドの受付に近づく。
「あのー………昇格依頼の鑑定してほしんだけど…………」
「えっ?ああ、昇格ね。わかったわ」
そう言いながら俺が渡した袋の中を一度見る。
目を逸らし、もう一度袋の中を見る。
目を擦ってもう一度見る。
「あの?これって…………オーガの魔石に見えるのは私だけですか?」
そう、隣の受付員に聞く。
それが滑稽すぎて俺は少し笑ってしまった。
「あら?あなたは確か…………ああ!Sランクの昇格の依頼ですね!」
「え、Sランクの昇格ぅ?!」
俺たちの話を聞いていた他の受付員たちが騒ぎ始めた。
だが、周りの冒険者たちはあまり驚いている人はいない。
きっとほとんどが俺たちが数日前に来た時に居合わせた人かそれを人づてに聞いた人たちだろう。
「ちょっと待っててください!か、鑑定してきますので!」
そう言って受付の人は奥に引っ込んでいった。
大体の魔石は魔物で特徴があるため、わかりやすい。
だが、形だけで判断すると偽造品が出た時にわからなくなってしまうため、魔石にある魔力の波長を調べに行った。
魔力の波長を調べる機械は大体のギルドには備え付けられている。
数分後。
驚愕の表情をした受付員の人が帰ってきた。
それを見て、また少し笑ってしまう。
まぁこんな子供がオーガの魔石を……それもたくさん持ってきたら相当困惑するだろう。
子供にとってオーガは狩るものじゃなくてかられる側になる。
それほど、オーガは危険で強い。
それなのに、だ。
狩ってきたと思われる子供は無傷で、息を切らしてさえいない。
それなのに、オーガをたくさん狩ってきている。
どう考えても、やばいやつだ。
そう思わせるほどだ。
「は、はい。依頼、達成ですね!これでSランクです!」
そう受付員が宣言した時、周りから再び歓声が上がった。
「すげぇ!きっと最年少じゃないのか?!」
「体は小さいけど強いのね!!」
「やるじゃねえか小僧!!」
そう称賛される中で俺は返された身分証とともにマーチェ、セイルの元へ帰っていった。
「はいマーチェ、セイルこれ。」
そう言ってい俺は二人に身分証を返す。
「やっと次の街に行けるよ」
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