32.呪力の本質
短いっすけどもう一個!
「カイジュカ……?」
「うーんと……?解呪ってことになるのか?」
「ソウカ……ダガ……ケイヤクガサキダナ……」
そう言って精神を乗っ取られたマーチェはセイルの後ろに座り込んでしまっていた、太った魔族ーーきっとこの里の長であろう魔族に火魔法をぶっ放した。
「えっ……グギャアアァァァァァァアア!!」
座り込んで俺らの話を聞いていた太った魔族はそのまま火だるまになり、一瞬で炭と化した。
「お前……まさか契約って……」
そこまで俺がいうと、今までマーチェに取り憑いていた黒い何かが剥がれ落ちた。
そしてそのまま、マーチェが持っていた剣に乗り移る。
黒い何かが剥がれ落ちたマーチェはそのまま膝から崩れ落ちていった。
「セイル!」
そう俺が呼ぶと、セイルはすぐにマーチェのもとにかけ寄り、治癒魔法を展開した。
その間に俺はマーチェが落とした呪剣を拾う。
拾うと、頭の中にメッセージが入り込んできた。
ーーこっちの方が話しやすいからな……契約を優先した。
そう、先ほどまでマーチェを乗っ取っていた片言ではなく、しっかりとした発音で喋ってくる。
どうやら契約というのが枷になっていたようだ。
ーーその通り。契約は破れない掟。それをしっかりと完了するまで契約の枷を解くことはできない。
この呪剣は、まるで思念体のようで、こちらの思考を読み取っているようだった。
ーー俺に契約でもかける気か?
ーーまさか。この呪いを解呪してくれるんだったらそんなのは必要ない。
ーーとはいえ解呪の方法さえ俺は知らないんだが……
ーー何か当てがあるから俺にそれを持ちかけてきたんだろう?その場凌ぎのものだったらお前に強制的に契約の枷をかけるぞ
ーーいや……一応俺、呪力ってもんを持っているんだ。だがその使い方も知らなくてな……暴走ばっかさせてるし……
ーーな?!じゅ、呪力を持っているのか?!で、でも…お前には……
ーーなんだ?呪力を感じないとかそんな感じか?
ーーいや……そういうわけではないんだが……
ーーまぁここでは何もわかることはない。とりあえず、俺らに着いてこい。何かわかったら解呪してやるよ
ーー着いていく?お前らに?っていうかお前らまだ子供じゃないのか?
ーーああ。そうだけど?何か問題か?
ーーなんのための旅なんだ?
ーー俺の呪力の謎を解き明かすための旅だよ。なぜかあの二人もついてきてるがな……
そう呪剣に言いながら俺は指をさす。
ちょうど、セイルはマーチェに治癒魔法をかけ終わったところだった。
ーーお前それは違うだろ……
呪剣はため息をつきながらそう言った。
ーーとりあえずよろしくな!えっと……名前とか欲しい?
ーーいらん。っていうかもう既にある。
ーーへぇ。どんな名前だ?
ーータスライト。アイツがつけた名前だ。
ーーそうか……呪剣タスライト。うん。いい名前だな。
サイオンジにつけられた名前か……
といか、あの本にあるサイオンジとタスライトが言っていたサイオンジが同じならばあの本はいつ発行されたものなんだ?
と、考えに耽っているとセイルが近寄ってきた。
「スバル君?今大丈夫?」
「え?ああ、大丈夫だよ」
「マーチェなんだけど……なんか体に変な紋様があるの」
「紋様?体に?」
ーーすまない。それはこの剣を持った時にでる副作用だ。
セイルから質問があった後、タスライトから頭にメッセージが送られてきた。
どうやら、頭ごなしの会話だけでなく、一応外の音も拾えるみたいだ。
ーーふーん……ならなんで俺は何もないんだ?
ーーそもそも俺は呪力があるやつじゃないと抜けない。あの少女は少しだが呪力があった。で、俺を持つと紋様が出る。つまり、呪力があるやつだけ紋様が出るんだ。だが……
ーーああ。だからかさっき俺がお前を持った時に紋様が出なかったから俺に呪力がないと思ったのか。
ーーその通りだ。俺を持った時に紋様が出なかったのは今の所……お前とサイオンジだな
ーーサイオンジも出なかったのか?!ならあいつは呪力がなかったってことか?
ーーいや。あいつは膨大すぎる呪力を持っていた。あの少女の数千倍は呪力があった。
ーーすっ、数千倍……ちなみにその紋様に実害は?
ーー特にない。二日ぐらい経てば消えていく。
「セイルそれは大丈夫だと思うよ」
「えっ?なんで?」
「はは……まぁ色々ね……」
そう言って俺はタスライトを正面に持ってぶらぶらさせる。
だが、それを見たセイルは青い顔になっていった。
「スバル君……それって?」
「あ、言ってなかったか。これはさっきまでマーチェが持っていた剣だよ。意識を持っていて名前はタスライト。さっき、そのマーチェの紋様について聞いてたんだ。特に実害はないって」
「スバル君……それ、ものすごい邪気を感じる……」
「そうか?話してみた感じそこまで悪いやつじゃなさそうだったぞ?」
だが、セイルのことも信じきれないわけではない。
セイルは治癒魔法や受動探索魔法など、補助系の魔法が強力だ。
特に治癒魔法の扱いがとても得意で、四肢の欠損であれば元通りにすることができる。
その治癒魔法だが、これは二通りの方法がある。
まずは人体の形から、元の形をイメージして、治す方法。
これは俺が使う方法で、専門的なものでなければ大体は治せる。
だが、王国法により、人体の解剖は禁止されている。そのため、この方法で他者を治すことができるのは、この国内にはいない。
そしてセイルが使っている方法は誰かを癒したいとイメージする方法。
これはイメージが漠然としているため、治癒魔法と言っても、擦り傷などの怪我を治す程度のことしかできない。
ーーはずだった。でも、セイルは四肢欠損は治すことができる。
相当どころではない、癒す思いがある。
そのため、癒すことの逆ーーつまり、相手を害したりする思いにはとても敏感で、そのため、受動探索魔法なども高精度かつ広範囲にすることができる。
そのセイルが言うんだ。
無下に扱うことはできない。
だが。
「ああ。これは呪われているからな……そう思うことも仕方ないんだけど、俺はこいつの呪いを解呪する。そうすれば俺の呪力も何かわかるかもしれないし」
「…………わかった。マーチェはまだ寝てるんだけど……どうする?」
「ああ。そのまま転移魔法でサンポートまで戻るよ。それと俺はオーガ、倒してくるから。マーチェが起きたら言ってね。宿にいないなら俺は多分冒険者ギルドにいると思うから。」
そこまで言うと、セイルはマーチェを担いでやってきた。
「……ここでいい?」
「ん。そこでいい。」
そう言って俺は転送魔法を起動し、セイルとマーチェを宿の目の前に送った。
「それじゃあ俺たちもいくぞ」
タスライトにそう声をかけ、俺は自分で転移魔法を展開し、『迷える大森林』に飛んだ。
タスライトは絶句!?
何もスバルに返すことなく飛ばされていきましたね……
それにしてもパリエット…………
意外に瞬殺されてました。油断しているのは良くないですね!
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