表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら失われた「呪力」を持っていたようです  作者: けーしん
第一章 カートゥーン王国編
27/51

27.魔族2

前言撤回。

有言不実行。


前話の前書きで書いたことを1日目からすっぽかして本当にすみません。

さて、今回は少し時間を遡ってセイルの視点から行きます。


次回はきっとマーチェ視点になる……かも?

(↑絶対言わなかった方が良かった縛り↑)

 セイル視点

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スバルに見られた。


 ただそれだけのことなのにセイルは激しく狼狽えていた。


「はぁ……どうしよう……」


 ただ見られるだけだったらまだよかった。

 なぜなら、まだ裸ではなかったからだ。


 だが、スバルに向かって投げたものが良くなかった。


 恥ずかしい思いで近くにあるものを投げようとして、そのまま、着替え用の下着を投げてしまったのだ。


 そのあと、顔がイカついお兄さんたちにスバルは連れて行かれたが、その後数分はセイルは自分のベットでうずくまっていた。


 そうこうしていると、起きてきたマーチェに不安がられた。


「……?セイル大丈夫なの?」


「うん………大、丈夫……」


「どう考えても大丈夫じゃなさそうだけど?顔赤いし」


「?!」


 自分の顔が赤いと言われてセイルはさらに自分の顔を枕に沈めた。


「私、スバルとの約束があるから先行くよ。セイルはいつものところ?」


「……うん」


「わかった。お昼前には()()()()()()()その時は食堂で待ち合わせね」


「……うん」


「……全くスバルはどこ言ったのよ……ここで待ってるって言ったのに」


 うん、としか言わなくなったセイルにマーチェは呆れ顔でため息をつき、待ち合わせ場所にいなかったスバルに悪態をついてから探しに食堂へ向かって行った。


 マーチェが部屋を出て行って、一定の時間が経つと、あるところで強大な魔力が消えた。


 きっとマーチェとスバル君だろう、と予想を立てたセイルは着替えて日課をしに行った。


 セイルはこの街に来てから、街の治療院に通い、魔族ハンターや、冒険者で任務や依頼をしに行き、怪我をしてしまった人を治療するのを日課としていた。


 街の外れにある治療院につき、経営者のジェパードさんに一つだけ声をかける。


「こんにちはジェパードさん。今日もよろしくお願いします!」


 経営者であり、この治療院の院長でもあるジェパードは、治癒魔法を使いたいセイルの良き師匠としていた。


 実際、ジェパードよりかはスバルの方が治癒魔法ができるのだが、スバルは前世の知識を主として治癒魔法を行使しているのでこの世界の人間にとってそれは理解しがたい原理でできていた。

 それ故、スバルの意味がわからないチート治癒魔法よりかは、この世界の常識人であり、かつ治癒魔法が得意なジェパードに師事していたのだ。


 セイルは治療院について早速、入院患者の様子を見る。

 この治療院ではサンポート全体の負傷者を診ているので、病床数もそれなりに多い。

 しかし、それを診ようとする治癒術師はものすごく少ない。

 こんな状況で治療院が成り立っていけるのかと思うが、ジェパードによる手際のいい患者管理と、それに従う獣族の女の子の治癒魔法でしっかりと回っているのだ。


 300床ある中でセイルに割り当てられた100床分をセイルは素早くみて、手元の紙に書いていく。

 入院患者を診て回った後、休憩に入ろうとしていたセイルを受付近くに待機しているジェパードが大きな声で呼んだ。


「セイル!急患だよ!」


「はい!今すぐ行きます!」


 休憩用の椅子に座りかけた腰をあげ、セイルは呼ばれたところに飛んで行った。


 そこには、魔物化した熊と戦い、倒したものの肩に重傷を負った魔物ハンターの人がいた。


「なんて無残な……」


 いつの間にかセイルのそばに立っていたジェパード付きの獣族の女の子がそう呟いたのに対し、セイルは別方向で疑問を抱いていた。


(なんで熊なんかの魔物にこんな大勢で行って負傷者が出るのだろう?)


 よくスバルに連れ回されるセイルたちにとっては熊の魔物は図体がでかいだけの獲物でしかなく、その熊の魔物に対して、大勢で生きながら負傷者が出ることに疑問を持って行ったのだ。


 中型ぐらいの熊の魔物ならセイル単独でも狩ることはできる。

 マーチェなら大型の熊の魔物も単独で討伐できる。


 つまり()()()にとって熊の魔物とは()()()()()の価値でしかなかったのだ。


「すぐに治癒魔法をかけて!出ないとこのままじゃ死んでしまう!!」


 そう、負傷した魔物ハンターを運んできた女の人が叫ぶ。

 この様子から負傷した男の妻でありパートナーなのであろう。


 必死になって治癒魔法をかけてくれと言っているが、それが無理だった。


 なぜなら、彼に会った時点でセイルは()()()()()()()()()()()()()()()からだ。


 だが普通はすぐに治るはずの怪我はなかなか閉じず、その間に血はダラダラとたれていた。

 セイルが怪我が治らないことに焦り始めた頃、セイルの隣にいた獣族の女の子が口を開いた。


「これは……もしかして呪い?」


「え?」


 そう、空耳が聞こえたような気がしたセイルはもう一度聞き返した。


「だから、これは魔物による呪いかもしれないって思うんだ。」


「呪いって……?」


「魔物が秘めている魔力の一部が突然変異することで人を呪う力、呪力になって対象物に攻撃した時その呪力が反応して呪いになるってやつ。セイルもそのくらいは知っているでしょう?」


 そう聞かれてセイルは思いっきり首を振った。


「何それ。聞いたことがない。獣族の言い伝え?」


「うん。そうだよ」


「…………………」


「解くためにはどうすればいい?呪いがある以上治癒魔法は効かないんでしょ?」


「いやそうとも限らない。これがなんの呪いかによるね。まぁこの感じだったら『怪我が治らない呪い』とかかな」


「そんな!この人はどうなるんですか?!」


「うーーん……呪いが解ければ絶対に治ると思うけど……このまま呪いが続くんだったら多分死ぬ」


 そこまで言うと、付き添いの魔物ハンターの人は泣き叫んで崩れ落ちた。

 よほどこの人のことが大切だったんだろうと思わせるほどの大号泣だった。


 そこまで泣かれると……と思いながらセイルは考えた。


 どうすればこの人を助けることができるだろうか?

 呪いによる治癒魔法の遮断……


 そこまで思い至った時にセイルは一つのことを思い出した。


「……そうだ。スバル君に頼めば……」


「ん?セイルは何か心当たりがあるの?」


「うん。私の友達に呪力のことを調べている子がいてね、その子に聞けば何かわかるかもしれないって」


「なるほど………セイルはその子が好きなんだねぇ……」


「なっ?!そ、そんなことないよ!」


「はいはい。それじゃあその子を呼んできたら?」


「実はその子……今別の子と魔法の練習しに行ってきてるからどこにいるかわからないの……」


「どこにいるかわからないって……なんで?」


「なんでって……彼は転生まほ……っと。これは関係ないか……とりあえず結構遠いところで練習しているから今すぐには呼び出せないの」


「ふーん……いつ来るかわかる?」


「確か正午に私たちが泊まっている宿の食堂で待ち合わせをする予定だったから、その時間に行けばいると思う」


「わかった。じゃあセイルは呼んできてよ。私がこの人のことを診ているから」


「うん。ちょっと時間がかかるかもしれないけどちゃんと呼んでくるよ」


 そう言ってセイルは治療院を飛び出した。


 自分の出せる最速のスピードで街の外れから、街の中心近くにある宿まで走って行った。


 そして宿が目視できる距離まで来た時。

 宿の目の前で立ち止まっている人影が見えた。


 誰だろうと思ってさらに近づくとそれは話しかけたかったスバルだった。

 だがひとつおかしな点があった。


「スバル君?マーチェはどうしたの?」


 そう、マーチェがいなかったのだ。

 そしてそのことをセイルが問いかけるとスバルはゆっくりと振り返った。


 それは、落ち込んでいるどころの顔ではなかった。心配になって近寄って治癒魔法でもかけようかと思ったその矢先、スバルが口を開いた。


「セイル。少し話がある。詳しいことは中で話そう……」


 そう何か含んだ物言いでスバルは中に入って行った。

 きっとマーチェのことだろうと予想をつけてセイルはスバルについっていった。


 食堂に通されてスバルが言ったことにマーチェは実感を持てずにいた。


 マーチェは魔族であったこと。

 スバルとマーチェは謎の転移魔法陣でマーチェの魔族の里の近くに飛ばされたこと。

 マーチェは魔族の里の長の娘だったが、今は長が違うとのこと。

 マーチェが魔族の里に連れて行かれたこと。

 そしてマーチェはスバルに向かって悲しげな表情をしてSOSを出したこと。


 さらにそのSOSにスバルは気づいていないようだった。


 ……こんな感じだったか?


 そうセイルは疑問に思った。


 ……自分の想い人はこんな人だったか?


 ……こんなに、何もできずに俯くだけだったか?


 と、そう思った。

 そして話を聞きながら段々と苛立ちが高まり、だが、それでもスバルが何もしないことに対して、そして自分の気持ちに対して涙を流した。


「スバル君……どうして……」


「………………」


 そうずっと黙って俯いているだけのスバルに、セイルは覚悟を決めた。

 俯くスバルの頰を張ったのだ。


 パンッ、と乾いた音がした。


「スバル君!何をしているの!なんで、スバル君はマーチェを助けなかったの!」


 今にも泣きたかった。

 いつも何か困難があったらスバルがなんとかしてくれた。


 いつも助けてくれた人を今は助けなければならないーー

 そう思った。


 だが、これだけのセイルの行動にもスバルは何も動かなかった。


 悔しかった。

 スバルがこんな姿になったのが悔しかった。

 尊敬していたからこそ、それはセイルの胸に深々と突き刺さった。


 ーーそれでも行かなきゃ行けない。


 そう自分の頭に声が響いた。

 その声を聞いたセイルはスバルの腕を掴み、宿の外、街の外へ連れ出した。


 あの約束は今はどうでもいい。

 先にマーチェを助けに行かなくちゃ。

 そう思って森の中までいき、涙を拭って言った。


「スバル君。転移魔法でそのマーチェの里まで連れて行って。マーチェを取り戻すから」


「……ああ…………わかった……」


 そう言ってスバルは転移魔法を起動した。

少しでも興味を持ってくれた方は、下の評価ボタン(星型のやつ)を押してください。

モチベにつながります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ