24.方向
「ねぇスバル。私に魔法を教えてくれない?」
「なっ?!マーチェ?なんでここに?」
俺は突然の質問に返答を窮していた。
「もちろん抜け出してきたわよ。ずっとあんなところにいたら体が鈍ってどうしようもないわ」
「……そうだな…………そうか?」
「ええ。それにね、私はもっと自分の<魔力合成>の手数を増やしたいのよ!」
「うーん……それもそうだけど…せめて一日は寝といてほしい。流石にこのまますぐ体を動かすってのはちょっと酷だと思うから」
「……わかった。でも明日は必ずだからね!じゃないとあのクレーターのことバラしちゃうよ!」
…なんという脅しだろうか…
これが戦闘狂で脳筋の人の思考回路なのか?
とても理解できん。理解できる奴がいるなら連れてきてほしい。
いやマーチェを理解できるってことは相当そいつもヤバい奴だからな…
やっぱ連れてこなくていいです。
「…スバル。やっぱバラしちゃっていい?」
俺の思考を読んだであろうマーチェからさらに追い討ちの脅しが入った。
「だから!二人とも喧嘩はやめてって言ってるでしょ!何をバラすかはわかんないけどやめてよね!」
「……セイル。あんた本当になんもわかってないの?」
「?……何が?」
(ダメダこりゃ……スバルのことはもうすでに思考放棄しちゃってるよ…)
本能のままにスバルに添い続けようとするセイルにマーチェは二度目となる悪態をついていた。
「あ…あぶねっ…危うくバレるところだった…」
俺はマーチェに核魔法のことがバレなくてよかったと安堵していた。
そこに今度はセイルが来た。
「ス…スバル君…あの…もしよければ…わ…私に魔法を教えてくれませんか?」
すごい勢いで頼みこまれた。
これだけキラキラした目で頼まれると答えたくなるのが男の性って奴だな。
キラキラした目を向けられるのはマーチェを助けた時以来か…
あれからマーチェは生意気になったからな…
魔竜剣を持って襲い、よくわからんところで理不尽なことを言い、なぜか俺の心を読み、そして今のように謎の脅しをかけてくる。
相当な不良少女だと言っていいだろう。
好きの反対は無関心ともいうし、気にかけてもらってるだけまだマシな方だろう。
「ん?いいよ。」
「ほ…本当ですか?!」
「え…うんまぁ…ちょうど暇だしね」
頭の後ろの方を掻きながら答える。
流石にこれほどの美少女を前に頼み込みされたら断ることはもってのほか快く向かい入れるだろう。
「じゃあさっきの…クレーターのところまで行こうか」
「え?!あ、はい!」
「それじゃあ行くよ?」
ヒュンッ
「よし。着いたか。それじゃあちょっと教えるよ」
「はい!お願いします師匠!」
「あ、あははは…流石に師匠はやめてくれよ…今まで通りにスバルって呼んでくれたらいいよ」
「…うん。わかったよスバル君」
「それじゃあーー」
そうして俺はセイルに3時間魔法の練習に付き合った。
俺は呪力を魔力に変換しているのであまり意識したことはないが普通の人なら魔力を集める際に相当な労力を使う。
この世界には魔力切れという概念はない。
だが、精神的に魔力を集める際の労力によって魔法が使えなくなることがある。
これは魔力制御量が少ない人ほど労力は多くなり、魔力制御量が多い人はあまり労力を使わない。
そして魔力制御量は毎日魔法と触れることによって増えていく。
魔石を飲むことによって魔力制御量を増やすこともできるが副作用として一週間弱魔法が使えなくなる。
そのため、レベルが高い冒険者や魔物ハンターは依頼が受けられなくなるのであまり魔石は飲まない。
セイルの魔力制御量は常人より少し多いといった感じなのでそこまで魔石を使う必要は泣く、デメリットが大きい。
そのため、セイルは毎日森のいろんなところで訓練をしている。
とはいえセイルも二年前に森で助けてからは魔力制御量は爆発的に増えている。
……目測でも二倍ぐらいにはなったか?
常人は魔力制御量を自分の⒈5倍にするには成人の人では3年かかると言われている。
それに比べたら、セイルはものすごい勢いで魔力制御量が増えていっていると言えるだろう。
「……セイル。大丈夫か?」
「…っは…っは……うん。大丈夫だよ」
ぶっ続けで魔法を打ちまくっていた結果、セイルは精神的に結構なダメージを負ったらしく、
ものすごく辛そうな顔をしていた。
「本当に大丈夫か?そろそろ帰ったほうがいいしな…」
「……もうちょっとやりたいけど…」
「流石にこれくらい囲まれるとね…」
俺が帰るのを急かす理由は人の匂いを嗅ぎつけた魔物が俺たちのことを囲んでいたからだ。
俺は呪力を魔力に変換することで魔法を打っているから、精神的ダメージはほとんどない。
だが魔力を制御し、この3時間ずっと魔法を使い続けてきたセイルはもうすでに限界を超えている。
(流石にこの量はね…)
そう思い悩み、転移魔法で宿まで帰ろうとした時、一つだけ、やってみたいことができた。
昼間に放った核熱魔法の方向指定だ。
昼間に放った核熱魔法は俺を中心に約1kmが吹き飛んだが、実戦で1km以内にマーチェやセイルがいる可能性は極めて高い。
なので、できれば放つ魔法の方向指定をしてみたかった。
獄炎魔法<乱>ももともとは獄炎魔法を操作している魔法なのでできないことはないはずだ。
そう思い至った俺は万が一失敗した時用に、セイルに防御魔法を使った。
遺跡魔法でも使った、耐久力が高い<エリア>という防御魔法だ。
「……?…………何をするの?スバル君」
「いやちょっと実験をしてみたくなってね」
そういって俺は昼間試した、核熱魔法を使うため、ウランを集めていった。
ウランを濃縮し、小さな球を作る。
(…………そういえばあっちの世界では水素爆弾なんてあったっけ…)
急遽予定を変更し、小さな球体の周りに少しだけウランで覆ったあと、水素をたくさん纏わせた。
「スバル君…これって……」
「安心しろセイル。お前に危害が及ぶことはない」
そういってセイルを元気付けた後、俺は集中した。
(崩壊させると同時に爆弾の飛ぶ方向を……一点に集めるようにイメージして……)
(そして……………放つ!)
ドガアアアアァァァァァァアアアアン
青白い光とともに大きな音がした後、地面が揺れた。
砂煙が立ち込め、目の前は全く見えなくなっていた。
数分後。やっと目の前が見えるようになったと思って目を凝らすとそこには俺が向いている方向に一直線上に地面が根こそぎ抉られ、目の前にあった森が消えていた。
さらに奥の方には怯え切っている魔物がいた。
「………ス、スバル君?大丈夫なの?」
「ああ。別に何ともないぞ?」
「ヒェッ!い、今のはなんなの?」
「えーっとね…昼にやっていた………っとこれは関係ないか。爆発魔法の研究をしていたんだ。怖がらせてごめんね。」
「……うん………ありがと」
ん?最後の方はなかなか聞こえなかったが…
「とにかく帰ろうか…マーチェも気付いてるだろうし、セイルも大変だそうだしね…」
「…わかった」
俺はそういって転移魔法を起動した。
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